プレミアリーグ Jリーグ

プレミアリーグとJリーグ、ほぼ“同期”にしてなぜここまで収益格差が生まれたか

UEFAチャンピオンズリーグ 写真:アフロスポーツ

クラブの歴史とUEFA/ACL大会規模の差

プレミアリーグ

プレミアリーグの創設は、フーリガンが跋扈し、老朽化したスタジアム、観客動員数の減少が課題だった旧フットボールリーグからトップクラスの22クラブが、FA(イングランドサッカー協会)に反旗を翻す形で脱退し、商業化を推し進めるための組織改編だった。

クラブ自体の歴史は1800年代後半にまで遡り、フットボールの母国として、長い伝統とファンベースを背景に持つ。欧州CLなどの世界最高峰の大会に直結するため、投資に対するリターンも大きい。イングランドのクラブが欧州大会で上位に進出するほど、リーグ全体の商業価値がさらに高まる好循環が生まれる仕組みが、外資を呼び込む強力な動機となっている。

Jリーグ

Jリーグは1993年に企業の実業団チームを母体にプロ化を実現した。所属するアジアサッカー連盟(AFC)の大会であるACL(AFCチャンピオンズリーグ)の市場規模や賞金は、欧州に比べて大幅に劣る。アジアを制してもプレミアリーグ並みの世界的資金を得るにはつながりにくい。国内ではホームタウン制を守りつつ地域貢献を重視してきたが、それが海外からの投資対象としての魅力を制限する要因でもある。アジア市場全体の成長が欧州に比べて遅れている点も、格差を固定化する一因となっている。


Jリーグ 写真:アフロスポーツ

チケット価格に見る格差

プレミアリーグ

ここで、現在のプレミアリーグのチケット価格の現状と高騰についても触れたい。プレミアリーグでは、公式の入場券(マッチデーチケット)の最安値がクラブによって大きく異なるが、2026/27シーズンの目安は以下の通り。

 ・最安値帯:昇格組などで30ポンド~55ポンド(約5,700~10,500円/全て1ポンド=216円で計算)程度。(例:サンダーランド約46ポンド、ボーンマス30ポンド台前半)。
 ・平均価格:多くのクラブで50ポンド~80ポンド前後(アーセナルやフラムなどは平均80ポンド超、最高で88~100ポンド近くになるケースもある)
 ・シーズンチケット:最安でも400~700ポンド台が多く、最高額はフラムの約3,192ポンド(約60~70万円)に達する。人気クラブやロンドンのクラブでは1,000ポンド超えも珍しくない。

短期間で大幅な価格上昇が見られたプレミアリーグ。1990年頃の最安チケットが3~7ポンド程度だったものが、現在は30~100ポンド超へと上昇。インフレ率(約77%程度)を大きく上回る値上げが続き、一部クラブでは20年以上で10倍近くになった例もあるという。アウェーチケットは「上限30ポンド」の制限があり、2027/28シーズンまで価格改定が延長されているが、ホームチケットは多くのクラブが値上げを続けている。

高騰の背景には、放映権収入の拡大に伴う商業化、スタジアム改修・プレミアム席の増加、需要の高まり(満員が常態化)、そして選手の年俸や移籍金の高騰といった要因もあるだろう。二次流通(街中のチケットショップなど)では人気試合で数百ポンドを超えるケースも多く、一般のファンでは手が届かなくなってしまい、”セレブ化”が止まる気配がない。

Jリーグ

一方、Jリーグの一般入場券は、J1クラブを中心にダイナミックプライシングの導入が進んでいるが、プレミアリーグに比べ、かなり低めで、プロ野球などの他スポーツ、音楽のアリーナライブ、大型テーマパークなどと比較しても、お手軽価格の娯楽と言える。

  • 一般席の目安:大人3,000~6,000円前後が中心。上位席でも7,000~1万円程度、ゴール裏サポーター席で2,000~4,000円台が主流。
  • 客単価(入場料収入÷入場者数):2025年度のデータではJ1上位クラブで3,000~4,500円程度。具体的な例として、サンフレッチェ広島は約4,456円、ヴィッセル神戸は約3,595円、川崎フロンターレは約3,506円、浦和レッズは約3,120円など。全体平均はさらに低く、2,000円台のクラブも少なくない。
  • シーズンチケット:クラブによるが、数万円~10万円台が中心で、プレミアリーグの最高額クラスと比較するとかなり低く抑えられている。

Jリーグの入場者数は増加傾向にあり、2025年のJ1平均は約2万1,246人、リーグ全体でも過去最多を更新し、コロナ前の水準をも超えている。入場料収入もJ1合計で200億円超と成長しているが、客単価で見ると、プレミアリーグのおよそ10分の1程度にとどまるという。


30年で生まれた格差、今後の行方

プレミアリーグは「エンターテインメント商品」としての価格設定が進み、価格高騰が顕著だ。一方、Jリーグは地域密着を重視し、比較的手頃な価格を維持しながら入場者数を伸ばしている。

プレミアリーグではライト層のファンがアクセスしにくい現状が議論になる一方、Jリーグは価格面でのハードルが低く、家族連れやライト層を取り込みやすい。実際、筆者もイギリスに観戦旅行に行く際、チケットを旅行代理店経由で事前購入しようと試みたが、どの代理店もプレミアリーグのチケットは取り扱いすらしていなかった(ただ、欧州CLなどのカップ戦はシーズンチケットの対象外としているクラブが多いため、運が良ければ試合直前のチケット購入が可能だ)。

プレミアリーグは世界を相手にしたエンターテインメントビジネスとして突き進み、Jリーグは国内の地域社会に根ざしたスポーツ文化を重視した。結果として、放映権のグローバル化と外資系受け入れの自由度の差が、創設から30年余りで収益規模の大きな格差を生んだ。放映権収入だけでも数十倍の開きがあり、クラブの資金力や選手補強の規模にも直結している。

Jリーグは近年、親会社規制の見直しやDAZNとの長期契約見直し、クラブライセンス制度の是非、株式上場解禁などを進め、成長戦略の転換を図っている。これらの取り組みが今後どの程度格差を縮小させるかが注目される。国内市場の活性化と国際展開の両立が、今後の課題と言えるだろう。

ページ 2 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧