
去る7月29日、ニューヨークでリバプール(プレミアリーグ)対レクサム(EFLチャンピオンシップ)が対戦するプレシーズンマッチが開催され、リバプールが1-0で勝利を収めた。
この試合は、リバプールのアメリカツアー(全3戦)の1つとして行われたが、試合会場はMLB(メジャーリーグベースボール)の雄、ニューヨーク・ヤンキースの本拠地ヤンキースタジアム。マウンドや二塁ベース付近の土の部分にはロール状の天然芝を敷設した上で行われた。敷設に3日、撤去に3日を要したという。試合はDAZNで配信されたが、途中まで野球場で試合していることに気付かなかったほど、違和感はなかった。
MLS(メジャーリーグサッカー)のニューヨーク・シティは、このヤンキースタジアムを本拠地とし、日程が合わなかった際は、ニューヨーク・メッツ(MLB)の本拠地シティ・フィールドを使用している。
同じくニューヨーク(正確には近郊都市のニュージャージー州ハリソン)を本拠地とするMLSのニューヨーク・レッドブルズは、自前のサッカー専用スタジアム、レッドブル・アリーナをホームスタジアムとしているが、収容人数は約2万5,000人。50,287人収容のヤンキースタジアムと、45,000人収容のシティ・フィールドと比較すると、収容力と利便性で劣る。
ここでは、海外での野球場を使ったサッカー開催事例や日本におけるこれまでの挑戦の歴史、そして今後の実現可能性について解説する。

日本にもあった「野球場サッカー」の歴史
日本でもかつて、野球場でサッカーの試合が開催されたことがある。古くは1989年、明治神宮野球場でマンチェスター・ユナイテッド対日本代表戦が行われた。
1990年代のJリーグ創設期には、数試合のプレシーズンマッチが東京ドームで行われた。初の試みは1993年7月19日、プレシーズンマッチ「コカ・コーラカップ’93」と銘打ち、ヴェルディ川崎対アストン・ビラ(プレミアリーグ)が行われ、V川崎は1-2でビラに敗れた。
しかし、話題の中心は試合そのものではなく、5,700万円かけたという638枚の敷設用天然芝「ビッグエッグターフ」が使用されたこと。前日のプロ野球(巨人対ヤクルトのデーゲーム)終了後に250人以上のスタッフが、人海戦術で約10時間掛け設営したという。その苦労は並大抵のことではないが、結果は芝生の根付きが悪く、至る所で禿げ上がったり、さらには肥料が原因と思われる悪臭がドーム内を漂い、鼻をつまみながらプレーするカズことFW三浦知良(現福島ユナイテッド)の写真がスポーツ新聞で大きく報じられた。カズはそんな状況でも1得点を決めたが、一面の大見出しは「ドームサッカー大失敗」というものだった。
その後、1994年から1996年にかけて、全9試合が東京ドームで開催されたが、1996年7月22日のV川崎対ラシン・クルブ(アルゼンチン/4-1でV川崎勝利)を最後に、東京ドームでサッカーの試合は行われていない。
筆者も1995年6月11日、元イタリア代表FWダニエレ・マッサーロ(1996年引退・現ミランブランドアンバサダー)の移籍記念試合として行われた清水エスパルス対ミラン(1-0でミラン勝利)を観戦した。臭いこそ気にならなかったが、野球場でサッカーを見るという違和感(野球ではバックネット裏なのに、サッカーの時はゴール裏席となる)が拭えないまま試合が終わった記憶がある。その後、野球場兼サッカー場という日本人にしか思いつかないであろう唯一無二のスタジアム、札幌ドーム(現大和ハウスプレミストドーム/2001年開場)が完成するはるか前の出来事だ。
こんな出来事から30年以上が経ち、巻き取り式天然芝も大きく進化したことで、MLSでは実用化されるまでになった。DAZNで見たヤンキースタジアムでのサッカーの試合と、自身のはるか昔の観戦体験から導き出された考えは、「これは日本でも可能なのではないか」ということだ。
国内ドーム球場でサッカーは開催できるか
東京ドームを優先的に使用できるのは、もちろんプロ野球の読売ジャイアンツだ。その他のコンサートなどのイベントも加えると、年間稼働率は限りなく100%に近く、他イベントで使用する際、約1~2年前の予約が必要と言われている。深夜帯に草野球で利用でき、平日なら5時間半・90万円で借りることも可能だが、その予約枠ですら数か月先までほぼ埋まっている。
他のドーム球場はどうだろうか。名古屋グランパス(豊田スタジアム)、ガンバ大阪(パナソニックスタジアム吹田)、セレッソ大阪(YANMAR HANASAKA STADIUM)、ヴィッセル神戸(ノエビアスタジアム神戸)はいずれも屋根付きのサッカー専用スタジアムを本拠地としているため、京セラドーム大阪、バンテリンドームナゴヤ(いずれも1997年開場)がサッカーで使用されることはないだろう(バンテリンドームナゴヤに関しては、サッカー利用時のレイアウトが用意されている)。
ただ、福岡ソフトバンクホークスの本拠地である、みずほPayPayドーム福岡では、たった1試合ではあるが、サッカーの試合が行われた実績がある。1993年開場(当時「福岡ドーム」)の翌年、1994年7月19日に開催された国際親善試合「コカ・コーラカップ’94」の浦和レッズ対オリンピア(パラグアイ)がその一戦で、オリンピアが1-0で勝利した。現在は同様の開催実績はない。
アビスパ福岡のホームスタジアム、ベスト電器スタジアムはメインスタンドとバックスタンドに屋根があり、J1スタジアム基準を満たしている。そもそも現在の収容人員約2万1,500人で間に合っていることから、わざわざドームを使う必要性は少ない。
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