Jリーグ

「野球場サッカー」は再現できるか、ヤンキースタジアムの実例と日本の可能性

Jリーグ 写真:アフロスポーツ

“遊休野球場”をJリーグに転用できるか

ドーム球場以外に目を向けてみると、日本全国には7,000を超える野球場があり、その多くは高校野球の都道府県予選や少年野球くらいでしか使用されていない現実がある。この記事の意図でもあるのだが、これらの“遊休野球場”をサッカーの試合に転用できないだろうかという問いだ。

先に触れたヤンキースタジアムの例では、外野の芝生部分を横切るようにピッチが設計され、二塁ベース付近の土の部分に芝を敷設することによって、サッカーの試合を開催している。これを参考にし、芝生の種類をサッカーに耐え得るものにすれば他の球場でも可能なようにも思える。

しかしながらここで壁になるのは、Jリーグが求める「屋根の設置」の問題だ。ただこればかりはJリーグだけのせいではなく、AFC(アジアサッカー連盟)が2026年に改定した厳しすぎる規定が裏にある。AFCは全ての座席をカバーする屋根の設置を求め、これをクリアしたスタジアムを「カテゴリーA」とし、この基準を満たさないスタジアムではACLE(AFCチャンピオンズリーグエリート)やアジアカップ本戦の試合は行えない。ACL2(AFCチャンピオンズリーグ2)でもメインスタンドとバックスタンドに屋根を設置した「カテゴリーB」が求められる。

雨季の長い東南アジアや、酷暑の中東地域を意識した基準と思われるが、四角四面に日本にも同じ基準を求めるのはいささか強引な印象だ。FIFA(国際サッカー連盟)でさえ、全ての座席に屋根の設置を義務化しているのは、W杯(FIFAワールドカップ)の開幕戦や決勝戦の会場に限っており、その地域に即した柔軟な運用がなされている。


FIFAワールドカップトロフィー 写真:アフロスポーツ

2030年W杯決勝の舞台、スペインのスタジアム事情

2030年のW杯は、スペイン・ポルトガル・モロッコの3か国共催(加えてウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイで1試合ずつ開催)だが、スペインに限れば、FIFAの規定を満たす最高基準のスタジアム(収容人数8万人以上)は、2023年に大改修を終えたレアル・マドリードの本拠地サンティアゴ・ベルナベウ、未だ改修中で2027年に工事が完了するバルセロナの本拠地カンプ・ノウくらいで、決勝戦はこの2つのいずれかで行われるだろうと予想されている。

一方で、トップクラブから一歩離れれば、スタジアム事情はまったく違う顔を見せる。スタジアム基準を各クラブに求めているJリーグのお偉いさん、特に新スタジアム建設計画が頓挫しているJ2ブラウブリッツ秋田に対し、「志が小さい」と言い放った人物は一度、ラ・リーガ1部を戦う小クラブのホームスタジアムを自腹で視察に行ったらどうだろうか。おそらくは、その“オンボロ”な現状に仰天するはずだ。同時に「全面屋根付き」「サッカー専用」「Jリーグの独占的使用」「建設費と維持費は自治体負担」が、いかに現実離れした戯言なのかを思い知ることだろう。

話が逸れたが、Jリーグの野球場使用は「シーズンオフの有効利用」の意味でも自治体にとってメリットが大きい。せっかくJリーグが秋春制を導入したのだから、スポーツ版“二毛作”を本気で考えても良いのではないだろうか。

ページ 2 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧