マンチェスター・シティ史上初となる4連覇で幕を閉じた2023/24シーズンのプレミアリーグ(イングランド1部)。シティ、アーセナル、リバプールの3チームによる三つ巴は多くのサッカーファンを熱狂させた。その裏で、クラブ史上最悪と言えるほど苦しいシーズンを過ごしたのがマンチェスター・ユナイテッドだ。ユナイテッドは今シーズンを8位という過去最低順位でフィニッシュ。ホーム最終戦となった第34節のニューカッスル・ユナイテッド戦では3-2で勝利するも、試合後に行われたエリック・テン・ハフ監督のスピーチにはサポーターからブーイングが飛んだ。
テン・ハフ監督の解任も噂されるなか、ユナイテッドにとっては是が非でも勝ち取りたいタイトルがFAカップである。FAカップでのタイトル獲得は、テン・ハフ監督のクビを阻止するためだけでなく来季のUEFAヨーロッパリーグ出場権に繋がる重要なもの。しかし対戦相手は今季プレミア王者のシティであり、簡単に勝たせてくれないことは百も承知であろう。この記事では、昨シーズンと同じカードで行われるFAカップ決勝マンチェスター・シティ対マンチェスター・ユナイテッドの見どころを紹介する。
一切の隙がないシティ
シティが磐石の態勢でFAカップ決勝に臨んでくることは明確である。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のセミファイナルではレアル・マドリード(スペイン1部)と対戦し、PK戦の末に惜しくも敗れ多くのシティサポーターが落胆した。しかし、この敗北はFAカップを勝ち取るという観点だけでいえば決してマイナスではない。
CL決勝は日本時間6月2日の午前4時キックオフ。一方のFAカップ決勝は5月25日23時にキックオフとなっている。プレミアリーグを戦ってきたシティにとって特別タイトなスケジュールではないものの、もしもシティがCLを勝ち上がっていれば、FAカップの決勝で約1週間後に行われるCLファイナルを意識した戦い方が必要とされていただろう。また、これだけのビッグマッチをたて続けに行うことは、心身ともに選手たちへ相当の負荷がかかる。そういう意味で、シティがFAカップに100パーセント集中して臨む条件は整っているといえる。
そんなシティにとって唯一の不安材料があるとすれば、守護神GKエデルソン・モラエスの欠場だろう。エデルソンは第34節のトッテナム・ホットスパー戦で、相手DFクリスティアン・ロメロと衝突し右眼窩を骨折。今季絶望となったエデルソンに代わり、リーグ最終節のウエストハム・ユナイテッド戦(3-1)では、GKシュテファン・オルテガがゴールマウスを守っていた。
しかし、その不安もシティにとっては実に微々たるものだ。オルテガがトッテナム戦でFWソン・フンミンとの1対1をストップするなどその実力を証明しているほか、MFフィル・フォーデンやプレミア得点王のFWアーリング・ハーランドを擁する攻撃陣もリーグ戦では直近6試合すべて複数得点で勝利する活躍を見せている。シティが最後にイングランド国内チームに敗戦したのは、2023年12月6日に行われた第15節アストン・ビラ戦(0-1)であるなど、まさに難攻不落のチームだ。
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