Jリーグ 横浜F・マリノス

横浜FMにも一縷の望み?監督2度交代を経てJ1残留に成功したクラブ

吉田孝行監督(左)ズデンコ・ベルデニック監督(右)写真:Getty Images

2025シーズンのJ1リーグで現在最下位に低迷する横浜F・マリノスが揺れている。4月18日にスティーブ・ホーランド元監督を解任し、ヘッドコーチだったパトリック・キスノーボ前監督を昇格させたものの、6月11日の天皇杯2回戦でJFLのラインメール青森に敗れ(0-2)、続く6月15日の“裏天王山”の19位アルビレックス新潟(0-1)にも完封負け。同クラブ史上初、シーズン2度目の監督交代に踏み切った。

最有力候補と報じられた元サガン鳥栖の川井健太監督とは条件面で折り合いが付かず、6月21日のファジアーノ岡山戦(日産スタジアム)では急遽、大島秀夫ヘッドコーチが代行監督を務める。

監督交代の効果については、過去のデータ(2009-2018)によると、シーズン途中の監督交代93回のうち68.8%(64回)で後任監督が前任者より1試合あたりの勝点を上回ったとされているが、平均勝点の上昇率は約0.2(1.11から1.31)であり、劇的な改善策とは言えない場合も多い。

横浜FMのサポーターは眠れない夜を過ごしているだろうし、他クラブのサポーターは「降格クラブの1つは決まったようなもの」と感じているかも知れない。当然、横浜FMの挑戦は極めて困難な道だ。監督交代はいわゆる“解任ブースト”とも呼ばれる起死回生の策として期待される一方で、チームの混乱を招くリスクも伴う。

しかしながら、同一シーズン内に2度の監督交代を行い、なおかつ降格を回避して残留を果たした前例がないわけではない。過去にはこの大胆な決断を成功させ、J1の舞台に踏みとどまったケースが複数回存在する。ここでは、ヴィッセル神戸(2019、2022)と大宮アルディージャ(2012)の前例を挙げながら、横浜FMのJ1残留の可能性を探る。


吉田孝行監督 写真:Getty Images

2019シーズンのヴィッセル神戸

この挑戦に成功したクラブの一つは2019シーズンのヴィッセル神戸。この年は元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ、元スペイン代表FWダビド・ビジャ、元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキといった世界的スター選手を擁する豪華な陣容だったが、序盤から結果が出ず、監督交代の連鎖に突入する。

フアン・マヌエル・リージョ監督でスタートしたが、攻撃偏重の戦術が守備の不安定さを招き、4月早々に退任。2度目の代行となる吉田孝行監督を挟み、6月にトルステン・フィンク監督が就任する。フィンク監督は守備の強化を図り、攻撃面ではイニエスタを中心とした攻撃をシンプルに整理した。就任時の13位から8位まで順位を浮上させ、天皇杯ではチームを優勝に導き、クラブ初のタイトルをもたらした。

このケースの成功要因は、フィンク監督の柔軟な戦術と、スター選手たちの責任感だった。特にイニエスタは、混乱の中でもリーダーシップを発揮してチームを牽引。チーム状態を劇的に向上させた。2019シーズンの神戸はそもそも降格するようなメンバーではなかったという意見もあろうが、監督交代を機に再生した好例でもある。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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