日本代表・海外組 海外日本人選手

ベルギー1部リーグで通用しなかった日本人選手5選

写真:Getty Images

近年、日本人選手にとって欧州移籍の登竜門となっているベルギー1部リーグ(ベルギー・プロ・リーグ)。Jリーグからの直接移籍が増え、若手のステップアップ先としても注目されている。その象徴的な存在であるクラブが日本企業がオーナーを務めるシント=トロイデンVV(STVV)で、同クラブには多くの日本人選手が所属してきた。

ベルギーリーグでの成功を足がかりに、欧州のトップリーグへと羽ばたいた選手もいる。例えば、日本代表DF冨安健洋は、STVV(2018-2019)での活躍を経てセリエAのボローニャ(2019-2021)を経由し、プレミアリーグのアーセナルへ2021年8月に移籍。日本代表MF鎌田大地は、STVVでの経験を糧にブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルト(2017-2023)で活躍後、2024年7月からプレミアリーグのクリスタル・パレスに所属している 。

また、日本代表キャプテンMF遠藤航も、STVV(2018-2019)で欧州のキャリアをスタート。ブンデスリーガのシュツットガルト時代(2019-2023)にはキャプテン務めるなど多大な貢献をして、2023年の8月からはプレミアリーグの名門リバプールでプレーしている。

しかし、すべての選手が順風満帆なキャリアを築けるわけではない。適応の難しさやプレースタイルの違い、戦術的な役割の相違などに直面し、現地で十分なインパクトを残せなかった例も存在する。期待されながらも定着できず、出場機会が限られた末に移籍や退団を選んだ選手も少なくない。

ここでは、ベルギーでの挑戦が順調に進まなかった日本人選手たちに焦点を当て、その成績と背景を探ってみたい。


小野裕二 写真:Getty Images

小野裕二(アルビレックス新潟)

  • 2013-2015:スタンダール・リエージュ
  • 2015-2016:STVV

FW小野裕二のベルギー時代は怪我との戦いだったのかもしれない。2013年1月、小野はJ1横浜F・マリノスからベルギー1部のスタンダール・リエージュへ完全移籍を果たした。当時はJ1のクラブから直接ベルギーの名門クラブへ加入する形は稀であったため、高い注目を浴びていた。

しかし、2012/13シーズン途中の移籍ということもあり、加入後は即戦力とはいかず途中交代やベンチ外が続いた。そして夏のオフを挟み満を持して臨んだ翌2013/14シーズンだったが、2013年7月のシーズン開幕前に左膝前十字靭帯断裂の大怪我を負い、約1年間の戦線離脱を強いられた。

復帰後もベルギーでのプレー経験が浅かったこともあり、チーム内での序列を上げることはできずに2015年7月にSTVVへの移籍が発表された。名門リエージュ在籍時の2シーズン半では、怪我の影響もあり全コンペティションで39試合の出場にとどまり、2ゴール2アシストと寂しい数字となった。

STVVへ移籍後は、トップ下のポジションで起用される機会が増えた小野。リエージュではサイドでプレーすることが多かったが、STVVでは中央でのプレーが求められることが多くなった。

加入初年度の2015/16シーズンは期待を背負い開幕から第19節までは連続して先発出場。しかしゴールやアシストといった目に見えた結果を残すことができずに徐々に序列が低下し、2016/17シーズンもその兆候は変わらず。顎骨折も重なりほとんど試合に出場できないまま、最終的に2017年1月、STVVとの契約を解除。1シーズン半を過ごしたSTVVでは、通算33試合に出場したがゴールやアシストは残せず苦い経験となった。

小野のベルギー時代は怪我との戦いとなってしまったが、攻撃選手として72試合に出場しながら、2ゴール2アシストという数字で現れた結果は失敗といわざるを得ないだろう。


本間至恩 写真:Getty Images

​本間至恩(浦和レッズ)

  • 2022-2024:クラブ・ブルッヘ

MF本間至恩は、2022年7月に当時J2のアルビレックス新潟からベルギー1部の名門クラブ・ブルッヘに完全移籍し海外挑戦を開始した。 ​移籍初年度にあたる2022/23シーズンは、主にセカンドチーム(クリュプNXT)でプレーし、2部リーグで24試合に出場3ゴール5アシストを記録したが、ブルッヘではリーグ戦での出場機会はなかった。

しかし、シーズン後半の2023年6月4日、1部リーグのプレーオフ最終節であるロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ戦(3-1)に途中出場し、1ゴール1アシストの活躍でチームの逆転勝利に貢献。​この勝利は、相手チームのリーグ優勝を阻止する結果となり、大きな注目を集めたと同時に翌シーズンの本間のトップチーム定着への布石となると思われた。 ​

そして迎えた2023/24シーズン、8月17日にUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(UECL)予選3回戦第2戦のアークレイラル戦(5-1)で前半20分から途中出場し、クラブ加入後最長となる70分間プレーした本間。 ​しかし、その後のブルッヘでの出場機会は限定的で、通算5試合88分の出場にとどまり、NXTでのプレーが中心となっていた。

契約最終年だった翌2024/25シーズンからは一層の活躍が期待されていたが、2024年7月にJ1の浦和レッズへ完全移籍。ブルッヘでもう1年辛抱強く出場機会を求めていれば、欧州でのキャリアはまた違ったものになっていたのかもしれないが、結果として欧州でのキャリアを築くことはできなかった。浦和での再出発が今後の再挑戦への足がかりとなるのか、注目したい。

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名前:Mount

趣味:お酒、電子音楽、サッカー観賞
好きなチーム:日本代表、ドイツ代表
欧州某国在住、ライター、編集者

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