
1月28日、Jリーグからあるリリースがなされた。「審判領域の質向上に向けた取り組みについて」と題し、2025シーズンに向けてプロフェッショナルレフェリー(PR)を2024シーズンの19人から24人に増員すること、加えてJ1担当審判員の手当の調整や、J2・J3担当審判員の手当底上げに触れたものだ。
また、選手OBが審判に転身する際の早期養成プログラムとして、4級審判員の資格取得からJ1担当まで約10年を要していたものを、最短で約5年に短縮する飛び級制度を導入することも記されている。
これは、選手OB審判員のパイオニアである御厨貴文氏(ヴァンフォーレ甲府/2007-2009、ザスパ草津/2010-2012、カターレ富山/2013-2014)がセカンドキャリアとして審判員の道を進み、2024シーズンのJリーグアウォーズで、最優秀主審賞を受賞したことも追い風となったと思われる。
ここでは、Jリーグにおけるレフェリングの質の向上を、審判員の待遇の観点から検証したい。

明かされたトップ審判員の給与体系
J通算682試合(副審含む)で審判員を務め、昨季限りでトップリーグ担当審判員を勇退し、JFA審判マネジャーに就任した元プロフェッショナルレフェリーの西村雄一氏が、1月31日にスカパー!の『Jリーグラボ』にゲスト出演。MCを務めるJリーグチェアマン野々村芳和氏の質問に答える形で、自身のキャリアや審判員を取り巻く環境の変化、今後の審判員制度のあり方、加えて、自身のエピソードも失敗談を絡めながら語った。
西村氏は野々村氏と同い年の52歳。主審となればフル出場した選手とほぼ同じの約10キロ以上にも及ぶ走行距離が求められる。引退の理由として、体力面の衰えではなく、自身の経験を後継者の育成に生かしたいと語った。この年齢まで現役を続けてきた陰では、どれだけのハードなトレーニングを積み、節制してきたのかを想像するだけでも尊敬に値する。
野々村氏から話を振られる形で審判員の収入について問われた西村氏は「一般企業の管理職くらい」と語ったが、これを受け野々村氏は「1,000万円ちょっと」と付け加えた。ベースとなる基本給に加え、担当試合数が上積みされる給与体系だという。Jリーグトップからの発言だ。その言葉に嘘はないだろう。
担当試合数によるインセンティブは、主審に限れば、今季からJ1で15万円(昨季12万円)、J2で7万円(昨季6万円)、J3で5万円(昨季3万円)だ。受け止め方は人それぞれだろうが、少なくとも筆者は「安過ぎる」と感じた。
審判員には選手同様の運動量は当然のこと、完璧な仕事を求められ、一方のチームに不利益なジャッジをすれば、スタジアムで罵声を浴びるだけではなく、今ではSNSなどで誹謗中傷に晒される時代だ。それらの対価としては、あまりにも見合わないと思えるのだ。
さらに言えば、西村氏は日本を代表するトップ審判員だ。国際主審として、2010年のFIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会では、日本人審判史上最多となる4試合の主審を務めた。同年、FIFAクラブW杯2010決勝(インテル対マゼンベ)の主審も務め、2014年ブラジルW杯の開幕戦(ブラジル代表対クロアチア代表)の主審を務めるなど、世界的に活躍した。そんな西村氏の年収が約1,000万円ちょっとでは、あまりにも夢がなさすぎるとはいえないだろうか。
コメントランキング