
イングランドのプレミアリーグや、スペインのラ・リーガなどの欧州のビッククラブにおいて、日本代表選手達がプレーすることは今や当たり前となった。そんな昨今、サッカー留学という形で異国の地に足を踏み入れるアマチュア選手達も増加しており、良質なサービスを提供する留学会社も多くある一方で詐欺まがいの業者も多く存在しているようだ。関係者へのヒアリングでその実態が明らかとなった。
複数のサッカー留学関係者によると、サッカー留学をする選手の数は年間で1,500人から2,000人を超えており、その数は増加傾向にあるという。プロ契約を目的としたトライアウトで渡航するケースや、現地のクラブへの練習や練習試合のみへの参加など、目的は様々だ。
そうした中、スペインを始めとするサッカー留学事業などを行うステイドリームグループ株式会社代表の宮川類氏が、自身のXで下記のように投稿している。宮川氏はアトレティコ・マドリード(スペイン1部)の下部組織でプレー経験があり、2019年4月からサッカー留学事業を開始。これまで複数のプロサッカー選手を輩出している。
「某サッカー系インフルエンサーが新しく始めたスペイン留学会社で、ビザが取れず1,2シーズンを棒に振ってる選手から次々と問い合わせが来てる。他社のことをどうこう言うつもりはないけど、本当に選手の短いサッカー人生をなんだと思ってるのか問いたい。一方で代表はSNSで御涙頂戴のような熱い文章を書いてる。その投稿に感化されてサッカー留学する犠牲者がまた増えるのだろう。これだから『サッカー留学、ひどい』なんていうキーワードが上位検索されるんだし、業界全体が詐欺のような悪いイメージがついてしまう」
同氏は「表向きは無料でスペインに留学させる的なイベントをPRしてますが、知る人の知る裏ではとんでもない状況」とも述べており、被害報告が後を絶たないとのこと。宮川氏以外にも「サッカー留学会社は詐欺まがいも多く、良質な業者のほうが少ないくらい」と話す業界関係者は多くいる。
なお、FIFA(国際サッカー連盟)が定めるルールによって18歳未満の選手については国際移籍が禁止されており、海外クラブで公式戦に出場することは原則不可能とされている。しかし、当該ルールに接触しないよう、一部書類を書き換えるなどして無理やり出場可能にするケースもあるという。
また、FIFAは2023年10月にフットボールエージェント制度を導入。国内外を問わずエージェント活動を行えるのはFIFAのライセンス保有者のみと定められたが、この資格を持たないまま選手を海外へ渡航させ仲介人や代理人として活動する者も少なくない。
特にスペインへのサッカー留学ブームは2010年頃から起きている。2010年のスペイン代表のFIFAワールドカップ南アフリカ大会優勝や、2009年夏に日本代表FW久保建英(レアル・ソシエダ所属)がバルセロナキャンプでMVPを獲得し、2011年に同クラブの下部組織(ラ・マシア)へ入団した影響が大きいだろう。
一度は落ち着いたかに見えたが、2024年にスペイン代表がUEFA欧州選手権(ユーロ2024)で優勝。同年、10歳の西山芯太君が神奈川県のFCPORTAからラ・マシアに入団するなど、スペイン留学ブームは今後数年は続くと見られている。
海外でプロを目指す選手や子どもを送り込む保護者は、会社の実態や代表についてよく調べ、FIFAのエージェントライセンスの有無等も確認するとよいだろう。こうした悪質な会社やエージェントの被害にあう選手が1人でも少なくなることを願うばかりだ。
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