セリエA ナポリ

モウリーニョ戦術は今回も通用せず。首位ナポリが見せた円熟のパスワーク【試合分析】

ナポリ 写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第20節が1月30日(日本時間)に行われ、ナポリとローマが対戦した。

前半17分、ナポリの長身FWビクター・オシムヘンがクビチャ・クワラツヘリアの左サイドからのクロスを収め、右足でのシュートで先制ゴールを挙げる。後半はローマの猛攻を浴び、同30分に途中出場のFWステファン・エル・シャーラウィにニコラ・ザレフスキのクロスを押し込まれたものの、この直後に投入されたナポリのFWジョバンニ・シメオネが同41分に大仕事。ピオトル・ジエリンスキのショートパスを受けた後にペナルティエリア内で左足を振り抜き、勝ち越しゴールを挙げた。最終スコア2-1で、首位のナポリが勝ち点3を積み上げている。

ローマのジョゼ・モウリーニョ監督がいかにしてナポリのパスワークを封じにかかり、首位チームはこれをどう凌駕したのか。この2点について解説する。


ナポリvsローマ、両軍の先発メンバー

ロボツカを封じられても何のその

この日のローマの守備隊形は[3-4-1-2]。基本布陣[4-1-2-3]のナポリの中盤の底スタニスラフ・ロボツカを、ローマのトップ下ロレンツォ・ペッレグリーニが捕捉したほか、パウロ・ディバラとタミー・アブラハムの2トップがナポリの2センターバックに睨みをきかせた。

ローマの2ボランチ、ブライアン・クリスタンテとネマニャ・マティッチはナポリの左右のインサイドハーフ(ジエリンスキとアンドレ・フランク・ザンボ・アンギサ)の追跡よりも、自陣中央のスペースを埋めることに注力。2トップと3人のインサイドハーフで中央へのパスルートを封じ、ナポリのパスワークをサイドに追いやろうとする意図が窺えた。

配球役のロボツカを封じられたナポリは、ジョバンニ・ディ・ロレンツォとマリオ・ルイの両サイドバックがハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、左右の内側のレーン)にポジションを移し、自軍のビルドアップを下支え。これは昨年10月の前回対戦(セリエA第11節)でも見られた配置で、ナポリの両サイドバックがまたしてもローマの守備陣を混乱に陥れた。

ナポリ DFジョバンニ・ディ・ロレンツォ 写真:Getty Images

ローマにとって悔やまれるのは、ハーフスペースでボールを受けようとするディ・ロレンツォとマリオ・ルイに、誰がアプローチするのかを明確にできなかったことだろう。2トップのどちらかがここへの守備を行うのか、それとも2ボランチの一角やウイングバックが飛び出して対応するのか。試合全体を通じ、この点が曖昧だった。

ナポリの先制ゴールも、左サイドバックのマリオ・ルイがハーフスペースでパスを捌いたことで生まれている。敵陣に攻め上がったマリオ・ルイから左サイドのクワラツヘリアにパスが渡る直前、クリスタンテは最終ラインに吸収されており、慌てて帰陣したディバラの守備も遅れていた。

欧州屈指の名将モウリーニョの守備戦術を、1-0で勝利した昨年10月と今節の2度に渡り打ち破ってみせたナポリ。ロボツカを封じられた際のビルドアップのパターンが周到に用意されており、今節も両サイドバックが巧みなポジショニングで味方からのパスを引き出し、攻撃の起点を担った。ディ・ロレンツォとマリオ・ルイの高い戦術理解力も然ることながら、ルチアーノ・スパレッティ監督の指導の賜物と言えるだろう。第20節終了時点で、2位インテルとの勝ち点差は“13”。33年ぶりのスクデットが現実味を帯びてきた。

名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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