Jリーグ アルビレックス新潟

J2アルビレックス新潟が失速?そのポジショナルプレー完成度を科学する!

アルビレックス新潟

全42節で争われる明治安田生命J2リーグでは、先週末(7月3、4日)で前半戦の最後となる第21節を終了。全チームとの一巡目の対戦が終わり、リーグ戦を折り返した。

今季2021シーズン序盤から首位に立ったのはアルビレックス新潟。開幕5連勝を含め、第13節まで10勝3分の無敗で首位を快走した。しかし第14節、新潟は敵地での町田ゼルビア戦に敗れて初黒星を喫して以降、8戦2勝2分4敗と急失速。順位も首位のジュビロ磐田から勝点6を離されての4位へと大きく後退した。

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、昨年に続いて今季もJ2では3位から6位に出場権が与えられる「J1参入プレーオフ」が実施されない。つまり、来季2022シーズンのJ1昇格枠は上位2チームの自動昇格のみという厳しいレギュレーションである。

ただ、ご存知の通り新潟は2004年から2017年まではJ1に在籍し、年間の平均観客動員が4万人を超えた時期もあったほどの人気クラブ。現在も鹿島アントラーズで活躍するMFレオ・シルバや、日本の他クラブでも活躍したMFマルシオ・リシャルデス、FWエジミウソンなど、常駐のスカウトを置くブラジルで発掘した自慢の外国籍助っ人の活躍が際立っていたが、ブラジルの移籍市場が高騰して有力選手の獲得が困難となった新潟はJ2へ降格となった。

J2降格以降の3シーズンは2018年が16位、2019年が10位、2020年が11位。J1参入プレーオフの出場権すら獲得できず、未だ最終順位が一桁台にも達していないのが現実だ。2019年のオフにはJ2得点王に輝いたFWレオナルドをJ1の浦和レッズへ引き抜かれるなど、主力選手を維持できなくなる傾向は年々強くなる。直近で公開された昨年の人件費はリーグ全体で8位。主力は個で打開できるタレントもいるが、選手層が薄い、というのが第一印象だろう。

このままではJ1から離れる時間が長くなるに連れて戦力的に先細りになっていく。ジリ貧状態は避けたい新潟が舵を切ったのは、アルベルト・プッチ・オルトネダというスペイン人指導者の招聘だった。


アルビレックス新潟MF高木善朗(当時東京ヴェルディ)写真提供:Gettyimages

ポジショナルプレーで輝く本間至恩と高木善朗

アルベルト監督はこれまでプロカテゴリーのトップチーム監督としての経験は皆無だったが、10年以上に渡ってスペインの強豪バルセロナでスカウトや育成年代の指導者として活躍。近年低迷するバルセロナの下部組織ではあるが、現状トップチームで活躍できる最後のタレント、久保建英やアンス・ファティを発掘した慧眼の持ち主である。

そんなアルベルト監督が導入したのが「ポジショナルプレー」だった。ポジショナルプレーとは戦術や戦略ではなく、数的優位やポジション的優位、局面での個の優位など、自分たちの優位性をどう活かすのか?というスペインやオランダで用いられる普遍的な概念である。

攻守に渡ってパターンを作るのではなく、引き出しを多く作って状況に即したものをピッチ上で選手たちが選んでいくことを目指す。そのために他チームと比べてどこにチームとしての優位性を見出すのか?新潟の場合は、高い技術を備える2列目のボールプレイヤーを活かすことだった。

今季新潟は、現在の新潟と似たサッカーを志向するレノファ山口で主力を担ったMF高宇洋を獲得し、彼をボランチに据えたことでオランダでのプレー経験もあるMF高木善朗をトップ下として固定することが可能となった。昨季1ゴール3アシストに終わった高木も、今季は半シーズンで7ゴール11アシストと大暴れ。効果は絶大である。

また、20歳のMF本間至恩も半期で5ゴール5アシスト。昨季の7ゴール7アシストを越えるだろう。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの本間が左ウイングの位置からカットインする場面が急増したのは、ポジショナルプレーの浸透が要因として挙げられる。彼が前を向いて良い状態でドリブルを仕掛ける姿は、J1も含めて現在のJリーグで最も観衆を沸かせる場面の1つとなっている。この状況を頻繁に作れるように、ゲームの展開やリズムを構築していく術をチームが見出したのである。

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