ワールドカップ

GSで5ヶ国全滅。後退するアフリカサッカーの足を引っ張る協会運営

著者:マリオ・カワタ

 ペレが「2000年までにアフリカの国がワールドカップで優勝する」という有名な予言を残したのは、1977年のことだったと言われている。1990年にカメルーンがアフリカ勢として初の準々決勝進出を果たした時には順調に近づいているように見えた栄光はしかし、2018年の今も遠いままだ。カメルーンの後にベスト8を達成した2002年のセネガルと2010年のガーナも、準々決勝には手が届かなかった。そしてロシアの地で日本がセネガルを抑えてベスト16進出を決めると、それは同時に36年ぶりに決勝トーナメントにアフリカ勢が不在になることを意味していた。成功が約束されたはずの大陸は、足踏みどころか後退しているようにさえ見える。

 今大会のアフリカ勢に運が味方しなかったのは事実だ。モハメド・サラーのコンディション不良に象徴されるように怪我が多く、ご存知の通りセネガルはイエローカードの数によってグループリーグ突破を逃した。ナイジェリアも第3戦の86分にアルゼンチンのマルコス・ロホに決勝点を決められるまでは、グループ2位の座に手を掛けていた。それでも、5ヶ国全てが大会前半戦で敗退に追い込まれたのは単なる不運で片づけるべきではないだろう。

 かつてナイジェリア代表でプレーしたピーター・オデムウィンギーは今大会のアフリカ勢の不振を予言するかのように、開幕の前の時点でアフリカサッカーが「間違いなく衰退している」と語っていた。そして全チーム敗退という結果を受けて元コートジボワール代表のディディエ・ドログバも、今大会がアフリカにとって「大きな後退」だったと表現している。代表チームの現状を知る2人はの言葉は、アフリカサッカー界の置かれた状況の厳しさを象徴するものだ。

「我々(アフリカ諸国)はいつか成功を収めるだろうが、こうした大きな大会にどうやって臨むのかを考えなおさないといけない」と言うドログバはについて、英『BBC』はスベン・ゴラン・エリクソンの証言を基に興味深い逸話を紹介している。

「私がコートジボワール代表の監督になった時、ディディエ・ドログバに言ったんだ。『素晴らしい選手たちがいるし、ワールドカップで上位に行けるぞ』ってね。そうしたら彼は『それは無理だ』と答えた」

「理由?ひと言、(ピッチ外の)組織だよ。私が監督に就任した時はカオスだった」

 その具体的な例としては、親善試合でキックオフ直前までロッカールームにユニフォームが届かなかったこと、さらに担当者が選手のシューズを忘れたためその選手が試合に出場できなかったことなどを語っている。とても世界のトップレベルの選手たちに用意された環境とは思えない。

「ドログバに言われたよ、『スベン、これがアフリカだ。こんなもんだよ』とね」

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