アジア Jリーグ

J勢のアジアでの現在地。川崎Fの底力見せるも、浦和&鹿島は不甲斐なさ目立つ

 鹿島の今シーズンは厳しさを増しており、2017年の大きな目標が指先からすり抜け落ちそうだ。広東ではチームに勢いがないことを露呈し、韓国人GKクォン・スンテの巧みなセービングがなければ、1-0ではすまない大敗を喫していた可能性もある。ここから逆転し、過去4回のACL出場で彼らが果たせなかった準々決勝に到達するためには、茨城にて最善を尽くさなければならない。鹿島は今年、過去6度のホーム試合で4試合を落としている。また増え続ける負傷者リストは説明するまでもない。DF西大伍、DF植田直通、MFレオ・シルバ、MF遠藤康ら主力は怪我からの回復中で、広州恒大戦には出場できなかった。センターバックのバックアップであるDF町田浩樹も治療中であり、FW金森健志は同試合で足首を捻挫した。

 現在のJリーグチャンピオンでありクラブワールドカップ準優勝の鹿島は、J1とACLタイトルの両方を競うことができるチームを作るため、昨季の賞金7億5000万円の一部を補強に費やした。しかし、シーズンのほぼ中間に来て、チームはまだ理想的なペースを掴んでいない。国内リーグで躓き、ACLのグループステージをなんとか通過した程度だ。新戦力ではレオ・シルバ、クォン・スンテが、新キャプテンの昌子源とともにチームを牽引する活躍をみせているが、FWペドロ・ジュニオール、FWレアンドロ・モウラといった大物たちは能力を発揮できていない。アジアのビッグである広州恒大を打ち負かし、クラブ史上初となるアジア制覇の希望を持ち続けるために、石井正忠監督には昨季終盤に鹿島を生き返らせた「王者の精神」を復活させることが求められる。

 Jリーグの本命2クラブが不甲斐ない戦いをみせるなか、対照的に素晴らしい活躍をみせているのが川崎Fだ。序盤から特に注目を集めていなかった同クラブだが、今季のACLで多くの危機を克服してきた。グループステージの序盤2戦で、ホーム・水原三星ブルーウィングス戦ならびにアウェイ・東方足球隊戦でのドローで早期敗退に近づいた。さらに主力全選手が治療を受けていた時期もあり、それでも広州恒大戦で2戦ドローに持ち込み、韓国にて水原との激戦で勝利した。グループステージでの驚くべき1位通過によって、決勝トーナメント1回戦では戦いやすい相手にも恵まれることとなった。ムアントンとのアウェイ・タイの熱戦では先制ゴールを奪われる苦戦を強いられるも、後半に追い上げ、3-1の逆転勝利を収めている。同1回戦に参加する全16チームのなかでも、これほどのアドバンテージを得たチームは他にない。

 川崎Fはほぼ全てのレギュラー選手が完全に回復し、チームはここ数週間右肩上がり、現在公式戦5連勝を記録している。FW小林悠は今季より主将の腕章をつけ主役となり、現在国内でも最高のパフォーマンスを誇っている。MF中村憲剛は未だ決定的な存在で、タイ王者に対する3ゴール全てに関わった。FW家長昭博の復帰は朗報という言葉には収まらない。決勝トーナメント1回戦突破が濃厚となった川崎Fは2007年と2009年の自身ACL史上最高成績への到達が目前となっている。

 鹿島と川崎Fは5月30日(火)、浦和は5月31日(水)に今季ACLにおける運命が決定づけられる。Jリーグは今週末に試合の延期を決めたため選手らは十分に休めるだろう。2008年以来となる、日本勢3クラブのACL準々決勝進出は厳しい状況だが、今こそ日本のビッグクラブたちが積み上げてきたものを示す時だ。

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