日本代表・海外組 海外日本人選手

W杯よりCL実績が市場を動かす。代表落選の守田プレミアリーグ移籍が示す現実

守田英正 写真:アフロスポーツ

なぜCLがW杯より評価されるのか

この差は、スカウティングの評価基準の違いを示している。CLや国内リーグで継続的に出場実績を積んだ選手は、計算できる存在として重視される一方、W杯の短期決戦での活躍は評価の上乗せ程度にとどまる。守田の場合、スポルティングでの長年の主軸としての実績とCLでの経験が、プレミアリーグ移籍に繋がった。ヴォジーニャの活躍はセンセーションを巻き起こしたが、これまでのキャリアを完全に覆すまでには至らなかった。クラブ側から見れば、ヴォジーニャはW杯での”一発屋”に過ぎず、日常的に高いレベルで戦える選手という保証にはならないという評価だ。

所属クラブでの実績がなければ、たとえW杯で脚光を浴びても欧州への道は限られる。守田のようにCLでの実績を積んだ選手は、年齢が30代前半であってもプレミアリーグで即戦力として求められるのだ。

現代の欧州トップクラブはデータ分析に基づいた長期的な若手投資を行うため、ヴォジーニャのような大ベテランに大金を投じるリスクを避ける傾向にある。残酷なようだが、欧州ではポルトガル2部(ジル・ヴィセンテ/2016-2017、GDシャヴェス/2024-2026)、モルドバ1部(ジンブル・キシナウ/2015-2016)、キプロス1部(AELリマソール/2017-2022)、スロバキア1部(ASトレンチーン/2022-2024)での経験しかない40歳の選手を獲得する余裕などない。彼の場合、運よく南米の名門へ移籍できたが、知名度によるマーケティング的価値を求められた結果に過ぎない。


ディエゴ・フォルラン 写真:アフロスポーツ

過去の類似例が示す構造

歴史的にも似た例がある。2010年W杯南アフリカ大会でMVPを獲得した元ウルグアイ代表FWディエゴ・フォルラン(当時31歳)は、大会翌年の2011年、インテルへ移籍したが欧州でのピークは過ぎており、その後はセレッソ大阪やウルグアイ、インドのリーグを渡り歩き、各地でスターとしてファン層の拡大に貢献した。W杯での活躍が欧州での長期的な成功に直結しなかった事例の一つと言える。

2018年W杯ロシア大会に出場した元エジプト代表GKエサム・エル=ハダリの場合は、45歳5か月という当時史上最年長で出場し、PKストップなどで世界を驚かせたが、欧州クラブからのオファーはなく、その後はサウジアラビアのクラブに移籍してプレーを続け、2020年11月に現役引退を発表。現在は指導者としてのキャリアを歩んでいる。これらは年齢と実績のバランスが、移籍先の選択を大きく左右した例だ。

守田のハル・シティ移籍とヴォジーニャのコロコロ移籍は、こうした市場の力関係を象徴する対照的な事例となった。フォルランやエルハダリのケースも含め、選手個人のキャリア選択と欧州クラブの優先順位の交錯点が、ここに明確に表れている。

ページ 2 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧