
高野剛(現シント=トロイデンVV U-21監督兼マネージメントディレクター)
指導歴:シアトル・サウンダーズFCリザーブ(1999)、FCアライアンス(2000)、ワシントン州U-14選抜(2001)、ギラヴァンツ北九州U-18(2016)など
名前を聞いて「誰?」と思うのも無理からぬことだ。高野剛氏は、福岡県の強豪、東海大五高校(現東海大福岡高校)を卒業したものの、米国の大学に語学留学。高校で引退したつもりで草サッカーに興じていたところ、留学先のセントラル・ワシントン大学のサッカー部監督から声が掛かり、そこで大学リーグとセミプロのヤキマ・レッズFCでプレーし、再びプロを目指すことになる。
1999年に、メジャーリーグサッカー(MLS)の下部リーグとしての位置付けにある独立リーグのユナイテッドサッカーリーグ(USL)所属のシアトル・サウンダーズでプレー。選手引退後にはスタッフに。2005年に帰国し、サンフレッチェ広島に育成部門のコーチとして入団。2009年にはトップ昇格、スカウティング担当となる。トップチームでの選手経験のない人物の大抜擢はクラブ初のケースだった。
2010年にはイギリスに渡り、当時EFLリーグ1(3部)のハダースフィールド・タウンの育成部門のコーチとして入団。日本人2人目となるイングランドサッカー協会公認・欧州サッカー協会公認A級指導者ライセンスを取得する。
2012年1月には、当時EFLチャンピオンシップ(2部)のサウサンプトンに移籍したFW李忠成(2023年引退)の通訳として入団。プレミアリーグ昇格に貢献し、翌シーズンから李の通訳と並行してテクニカルアシスタントコーチに昇格。日本人として初めてプレミアリーグ所属クラブのコーチとなった。
2018年には、日本人初かつアジア人初となるイングランドサッカー協会(FA)と、UEFA Proライセンスを取得。時を同じくしてJリーグから声が掛かり、フットボール本部育成部に配属されると、育成改革プロジェクト「Project DNA」の立ち上げに関わる。2021年、日本の大手IT企業DMM.comが買収したベルギーのシント=トロイデンVVのコーチングスタッフに加わった。
プロ選手および監督としてトップリーグでの経験はないが、日本人初のUEFA Proライセンスを取得した人物だ。現在、シント=トロイデンは2部降格の危機に瀕している。ワウター・ヴランケン氏を新監督に迎えたばかりだが、日本人選手7人を擁しているとあって、まさかの降格となれば次期監督として高野氏の名前が挙がる可能性もあるだろう。

モラス雅輝(現SKNザンクト・ペルテンテクニカルディレクター)
指導歴:インスブルッカーAC(オーストリア)女子セカンドチーム・U-12・U-13・U-15監督(1999-2004)、ヴァッカー・インスブルック(オーストリア)セカンドチーム監督(2021-2022)、同トップチーム監督(2021-2022)など
Jリーグファン、特に浦和レッズのサポーターにとっては、2008シーズンにゲルト・エンゲルス監督の下でコーチ兼通訳としてベンチ入りし、そのサーファーのような見た目のインパクトでモラス雅輝氏を記憶している人も多いだろう。
ちなみに2019シーズン、ヴィッセル神戸の新監督に就任したトルステン・フィンクが監督のアシスタントコーチとして、再び“J上陸”を果たしている。
生まれも育ちも東京で生粋の日本人だが、中学卒業後に単身海を渡り、同じくプロ選手経験がないままブンデスリーガの名将となったクリストフ・ダウム氏(2024年死去)との出会いがきっかけで、1997年に18歳で選手を引退し指導者に転身したモラス氏。
オーストリア女子1部、ドイツ女子3部、オーストリア男子2部のクラブで監督やコーチを務め、6度のリーグ優勝、5度のリーグ昇格経験を持ち、オーストリアサッカー協会コーチングライセンスを所持している。
難関と言われているオーストリアブンデスリーガ・スポーツマネジメント・アカデミーの卒業生でもあり、レッドブル・ザルツブルクでは、元日本代表DF宮本恒靖と元日本代表MF三都主アレサンドロの通訳とスカウティングスタッフを兼務。育成や裏方、フロントの仕事も経験したことで、指導者としてのみならず、戦術分析やコミュニケーション能力に一日の長があり、オーストリアのクラブであればすぐにでも監督就任が可能だろう。

中村俊輔(現横浜FCコーチ)
指導歴:横浜FCコーチ(2023-)
今年2月、加藤知弘静岡産業大ヘッドコーチと、元東京大学ア式蹴球部監督(2021-2023)で人気解説者の林陵平氏とともに、満を持してJFA Proライセンスを取得した元日本代表のレジェンド、中村俊輔氏。
現状コーチとしての経験しかなく、欧州で監督を務める認定基準に達していないが、現役時代に所属したスコティッシュ・プレミアリーグのセルティック(2005-2009)では今でも彼はアイドルだ。スコットランド代表監督(2013-2017)も率いたスコットランドサッカー界の大物、ゴードン・ストラカン氏と師弟関係にあったことで、“特例措置”としてセルティック・パークに監督として戻ってくる可能性もゼロではないだろう。
今2024/25シーズン、現在リーグ戦首位を独走し、4連覇が濃厚となっているセルティック。昨2023/24シーズンから2度目の指揮を執るブレンダン・ロジャーズ監督は前回も成績不振によって辞任したわけではない(プレミアリーグのレスター・シティからの引き抜き)。何事もなければ長期政権を築き上げそうだが、いつまたイングランドのクラブから引き抜きに遭うかも分からないところが、スコットランドのクラブの宿命だ。
そんな時のためにセルティックは“次期監督リスト”を常に備えているはずだ。条件さえ整えば、そのリストに「シュンスケ・ナカムラ」の名が記される未来もそう遠くないだろう。
現時点で、JFAとUEFAのライセンス互換が実現したとしても、欧州クラブは実績や語学力、ネットワークを重視するため、実際に就任するには時間が掛かるだろう。
元日本代表FW岡崎慎司氏(現ドイツ6部バサラ・マインツ監督)のように、欧州で活躍した元選手がそのまま帰国せずに、UEFA Proライセンス取得を目指すケースもある。欧州で監督を務めたいならば、その方が近道だからだ。
JFAとUEFAのライセンス互換は、日本人指導者の欧州挑戦を大きく後押しする大きな第一歩となり、指導者育成の面で日本サッカーのグローバル化が加速する可能性を秘めるものだ。ただし、成功するには言語や文化の壁を乗り越える努力と、欧州での戦術の進化をいち早く吸収していく向上心が不可欠だ。この改革が、Jリーグ、および日本代表の競争力向上にどう繋がるかが注目される。
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