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欧州で監督を務める可能性のある日本人指導者5選。第1号は誰?

長谷部誠コーチ(左)森保一監督(中)中村俊輔コーチ(右)写真:Getty Images

日本サッカー協会(JFA)の影山雅永技術委員長が4月7日、アジアサッカー連盟(AFC)と欧州サッカー連盟(UEFA)の指導者プロライセンスの互換化が進んでいることを明かした。UEFAとのライセンス互換が認められる国はAFC内の一部加盟国に限られるが、「日本はその中に入っている」とのこと。早ければ6月にも調印に至るという。

これまで日本人指導者が欧州で監督を務めるには、現地で研修を積み、UEFA Proライセンス取得を目指すしかなかった。しかし今回の互換化が実現すれば、日本でJFA Proライセンスを取得した日本人指導者が欧州で監督を務める可能性が広がる。

その一方、UEFAからはプロライセンスの保持に加え、トップリーグや代表での監督経験が求められているといい、「ライセンスを持っているだけでは十分ではない」ようだ。今後、UEFAとAFCの間で認定基準が話し合われるという。影山委員長はライセンスの互換化について「我々にとっての悲願」と力説。「欧州で指導する日本人指導者の道を作るという取り組みが進んでいるのは非常に好ましい」と前向きに語った。

このニュースは、日本人指導者の欧州挑戦を加速させる画期的な前進だ。この互換により、日本人監督が欧州トップリーグやクラブで指導することが可能となるのだ。以下では、この状況を踏まえ、欧州で監督を務める可能性のある日本人指導者の候補を、経歴、実績、適性に基づいて考察してみたい。


森保一監督 写真:Getty Images

森保一(現日本代表監督)

指導歴:日本代表(2018-)、U-24日本代表(2017-2021)、サンフレッチェ広島(2012-2017)

森保一監督は、おそらくは現時点で最も有名な日本人監督だろう。2022年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会では、グループリーグでドイツ代表とスペイン代表を破り1位突破。仮にこれが外国人監督によるものだったら、欧州クラブや強豪国の代表チーム監督就任オファーが殺到していただろう。

就任当初は自身のスタイルが確立できずにサポーターからの批判に晒されていたが、自らの型に選手を当てはめる手法を捨て、欧州クラブで活躍する選手の個人能力を生かす方向にシフト。かつ、強固な守備を築いたことで結果を出した。加えて、サンフレッチェ広島でJ1リーグ3度の優勝(2012、2013、2015)の実績も見逃せない。

2026年のW杯北中米大会までの契約を全うし、同大会でも決勝トーナメント進出を果たせば、アジアはもちろん、欧州からオファーが届く可能性もある。

広島監督時代の看板戦術だった3バックをあっさり手放す柔軟性も持ち、ピッチ外でもコミュニケーションを欠かさないモチベーターの側面もある。代表戦の際に流れる「君が代」に涙したかと思えば、試合が始まると冷静沈着にメモを取る姿には、つかみどころのなさも感じる。相手からしてみれば不気味この上ないのではないだろうか。

問題があるとすれば、約2億円と言われている高額年俸と語学力だが、ビッグクラブともなれば10億円を超える年俸を受け取っている監督もザラにいる中、この数字は“格安”といえよう。となれば、残された問題は語学力のみ。森保監督の語学力がどの程度なのかは不明だが、実際に采配を振るうとなれば、サッカーを理解した通訳の雇用は必須となるだろう。


長谷部誠コーチ 写真:Getty Images

長谷部誠(現アイントラハト・フランクフルトU-15コーチ兼日本代表コーチングスタッフ)

指導歴:アイントラハト・フランクフルトU-15コーチ(2023-)、日本代表コーチングスタッフ(2023-)

選手として活躍したドイツ、ブンデスリーガのアイントラハト・フランクフルト(2014-2024)で引退後、UEFA Bライセンスを取得し、フランクフルトのジュニアユースチームを指揮すると同時にUEFA Proライセンス取得を目指している長谷部誠氏。

日本代表MFとして長く主将を務めた上、浦和レッズ時代にJ1優勝(2006)、ACL優勝(2007)のみならず、渡独後にはヴォルフスブルクでブンデスリーガ優勝(2008/09)、フランクフルトでもDFBポカール優勝(2017/18)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)優勝(2021/22)という輝かしい戦績を誇っている。

JFA Proライセンスよりも先にUEFA Proライセンスを取得する可能性が高い長谷部氏。当然、フランクフルトのフロントも、将来的に監督を務めてもらいたいという思いでクラブに残留させたことは明らかで、ライセンス取得のタイミングとチーム状態次第では、意外と早期に欧州での監督デビューを果たすのではないだろうか。

浦和時代はトップ下として攻撃陣を引っ張り、ドイツ移籍後にはボランチにコンバート。そしてフランクフルトでは3バック中央のリベロのポジションを任される(交代枠を使い切った後にGKが退場し、“即席GK”も経験した)など、様々な役割とキャプテンシーを併せ持った人格者とあって、名監督となる資質を感じさせる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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