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ルール改正の度に強まるゴールキーパー受難の歴史。今度はピッチクロック?

サッカーボール 写真:Getty Images

GK泣かせのボール進化も

また、GKを苦しめたのはルール変更だけではない。サッカーボールも進化していく中で、GK泣かせのボールが生まれた。

特に、2010FIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の公式球として採用されたアディダス社製の「ジャブラニ」は、いわゆる「無回転シュート」が生まれやすいボールだった。

実際、日本代表FW本田圭佑(当時CSKAモスクワ)は、グループリーグ第3戦のデンマーク代表戦(3-1)の前半17分、右サイドゴール前約30メートルから無回転ブレ球FKをゴール右サイドネットに突き刺し、当時プレミアリーグのストーク・シティの正GKだったトーマス・セーレンセン(現メルボルン・シティ)の壁を破った。本田は、日本の決勝トーナメント進出に貢献しただけではなく、この試合のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

しかし、このボールにクレームを入れたのが、当時アルビレックス新潟に所属し、2014シーズンからはジュニアユース時代に所属していたガンバ大阪で活躍するとともに、2011年から2019年にかけて日本代表GKに選出され続けた東口順昭だ。『やべっちFC』(テレビ朝日系)でMCのナインティナイン・矢部浩之氏にこのボールの印象を問われると、「キーパーのミス誘ってるだけやん!」とややキレ気味でコメントしている。

虚しいことに、この東口の思いは届かず、2014年のカタールW杯では、「ジャブラニ」からさらに無回転シュートが生まれやすく進化したアディダス製公式球「アル・リフラ」が使用された。

来2026年に開催される北中米W杯(アメリカ・メキシコ・カナダ)での公式球はまだ発表されていないが、さらなる進化を遂げ、無回転シュートがバンバン決まることになるのだろうか。


大迫敬介 写真:Getty Images

「8秒ルール」の厳格化で起こる変化は

2025/26シーズンから始まる「8秒ルール」の厳格化。CKの数が増え、得点(GKにとっては失点)が増えることで、サッカーは変化していくのだろうか。同ルール違反でCKを与え、失点に繋がり勝敗に直結したとなれば、GKは“戦犯”として扱われることにもなってしまうだろう。

現在、日本代表GKに選出されている鈴木彩艶(パルマ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(町田ゼルビア)は、いずれも足元の技術に長けた選手ばかりだが、W杯本大会では厳格に適用されるであろう8秒ルールにも、すぐにでも対応する必要に迫られるだろう。

これはGK個人の問題ではなく、GKがボールを手に取った瞬間からDFがサポートに向かうなど、チーム全体の協力が必要となる。よって、試合のスピード感が上がる可能性は高い。

GKの受難ばかり示してしまったが、GKは手を使うことが許されるたった1つのポジションだ。時としてチームの勝利を手繰り寄せる花形でもある。GKにとっては度重なるルール“改悪”に苦しめられているのが現状だが、それらの壁を跳ね除け、さらなる技術向上に繋げていって欲しいものだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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