プレミアリーグ 移籍

イギリスのEU離脱「ブレグジット」がプレミアリーグに与える大きな影響

写真提供: Gettyimages

2019年に大きな混乱をもたらしたイギリスの欧州連合(EU)離脱、通称ブレグジット問題だが、いよいよ2020年1月末に実行される可能性が高まっている。

ブレグジット推進派でEU離脱に向け積極的に活動してきたボリス・ジョンソン氏は、昨年7月に保守党党首に選出され、イギリスの首相となった。しかし、10月末に目指していた「合意なき離脱」を成功させられなかったジョンソン首相は、12月に総選挙をするという賭けに出た。そして最大野党である労働党のジェレミー・コービン党首に圧勝した。

イギリスがEUから離脱することになれば、当然ながら外国人に関する法律も変わり、プレミアリーグにも大きな影響が出てくることが十分に考えられる。現時点ではまだイングランドサッカー協会は何のコメントも出していませんが、様々な問題が出てくる可能性が高い。

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イギリスがEU加盟前の外国人選手に対する規則

イギリスがEUに加盟した1973年以前、つまりEU市民が自由にイギリスに出入りできるようになる前には、当然ながらEU圏の外国人選手にもEU外と同じ外国人労働許可証が必要だった。当時のサッカー選手がプレミアリーグ移籍を目指して外国人労働許可証をもらうためには、まず自分の国の代表チームで実績を積む必要があったそうです(移籍前の1年に70%の代表試合出場が条件だった)。

もし現在もそのシステムが続いていたとしたら、現在プレミアで輝いている多くのEU圏選手がプレーできていなかっただろう。例えば、クラウディオ・ラニエリ監督時代のレスター・シティで大活躍したエンゴロ・カンテ(現在チェルシー所属、フランス代表)は、当時であればイングランドに移籍できなかった。カンテはレスターに移る前には、フランスのリーグ・アンとリーグ・ドゥ(2部)を行き来し続けてきたクラブ、カーンに所属していて、代表経験は全くなかったからです。

セスク・ファブレガス(スペイン出身)、ロビン・ファン・ペルシ(オランダ出身)など、これまでイングランドサッカー界でスーパースターになったEU圏の外国人選手がたくさんいる。イギリスがEUから離脱することで、そういった選手の移籍が今まで通りにはスムーズにいかなくなり、プレミアに良い影響を与える外国人が少なくなるだろう。

おそらく、現在イングランドでプレーしている選手には何の影響も出ないと思われる。変化が起きるのは、これからイングランドに移籍する選手です。

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イギリス人選手が優先される仕組みが誕生する可能性が高い

現在プレミアリーグのクラブには、17人の外国人選手が所属可能となっている。残りの選手はホームグロウン選手でなければならない。ホームグロウン選手というのは、21歳の誕生日を迎えるシーズンが終了するまでに少なくとも3年間をイングランド(ウェールズ含む)のクラブで過ごしている国内選手(あるいはイギリス育ちの外国人)となる。

2018年にブレグジットの話が出た時、イングランド(ウェールズ含む)出身者を優先するため、17人の外国人選手枠を12人に下げるという意見が出てきたそうです。これからそうなった場合、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リバプールなど、外国人選手が多いビッグクラブはメンバーを大きく入れ替える必要が出てくる。

しかし、ポジティブな面を捉えると、この数年イングランドの若手選手は良い結果を出している。特に2017年はイングランド代表にとって素晴らしい年でした。U-20とU-17がワールドカップ優勝。そして、U-19もUEFA欧州選手権(ユーロ)のトロフィーを掲げた。

これまで若い選手にあまり目を向けてこなかったプレミアリーグのクラブは、外国人に対する規則が厳しくなることで、イングランドの若手をもっと試合に出場させることになり、国内スターが次々に誕生することも十分あり得る。

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国際大会時に海外選手のイギリス入国が厳しくなる

ブレグジットが実現することでもう一つ大きなハードルになりそうなのは、イギリスの厳しい入国ルールです。入国管理の専門家である弁護士がイギリスのスポーツ専門サイト『The Athletic』で、これからのイギリス国内で行われる国際試合について語った。そして、たくさんの外国人選手がこれからイギリスのビザを取得することに苦労すると予言している。

イングランドの入国は非常に厳しいと言われている。自国で何らかの問題で裁判になり有罪になった場合は、イングランドの入国自体がさらに厳しくなる。例えば、大きな税金問題を抱えていたリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドのようなトップ選手。おそらくは何とかなるだろうが、特別な手続きなどで申請が困難になりそうです。これまでその厳しさが目立たなかったのは、EU市民が自由にイギリスに出入りできていたからだという。

しかしあくまでも、これはブレグジットの後に発生しそうなサッカー界の3つの問題に過ぎない。本当にイギリスがEUを離脱すれば変わることがたくさんある。プレミアリーグだけではなく、国全体が大きな混乱に包まれることになるだろう…。

名前Uccheddu Davide(ウッケッドゥ・ダビデ)
国籍:イタリア
趣味:サッカー、アニメ、ボウリング、囲碁
好きなチーム:ACミラン、北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡

14年前に来日したイタリア人です。フットボール・トライブ設立メンバーの1人。6歳の時に初めてミランの練習に連れて行ってもらい、マルディーニ、バレージ、コスタクルタに会ってからミランのサポーターに。アビスパ福岡でファビオ・ペッキア監督の通訳も務めた経験があります。

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