Jリーグ 横浜F・マリノス

Dr.TRIBE【試合診断書】 J1リーグ第24節 ヴィッセル神戸対横浜F・マリノス

大会:J1リーグ
カード:ヴィッセル神戸対横浜F・マリノス
スコア:0-2
担当医:高橋羽紋
【分析内容】
・マン・オブ・ザ・マッチ(MOTM)
・ザ・ハード・ワーカー(THW)
・モースト・ディサポティング・プレーヤー(MDP)
・両チームの攻撃vs守備
・両チーム監督
・主審


マン・オブ・ザ・マッチ(MOTM):久保建英

17歳が暫定15位と低迷するマリノスの救世主となった。後半56分にペナルティエリア手前から見事なボレーシュートで決勝点を奪取。守備面でも前線からのプレッシングを敢行し、与えられたタスクを完遂した。

ザ・ハード・ワーカー(THW):喜田拓也、扇原貴宏、天野純

喜田とイニエスタのマッチアップは見応えある試合へと昇華させた。天野は両チーム最多となる走行距離11.588kmを記録するなど、攻撃面だけでなく守備でも奮闘。扇原は2人よりも低い位置でカバーリング。的確にパスコースをきり、中央の最も危険なエリアを引き締めた。3人の豊富な運動量がチームを支えている。

モースト・ディサポティング・プレーヤー(MDP):ルーカス・ポドルスキ

脅威を感じさせるのは壁パスからのミドルシュートのみ。それでも距離は遠かった。サイドから連動して崩す場面は見られず、90分間沈黙。守備で最低限のタスクはこなした点は評価できるが、迫力不足は否めない。


ヴィッセルの攻撃vsF・マリノスの守備

ヴィッセル:基本陣形はオーソドックスな4-3-3の布陣。前半はマリノスのプレッシングを交わすことに苦労した印象だ。

マリノスはFW伊藤とFW久保でCB大崎、CBヤセルへ激しいプレッシングを敢行。橋本、三原の両SB(主に橋本)へコースを限定してきた。素早いスライドで中盤3枚に数的同数でプレスをかけられたため、ヴィッセルは効果的にボールを前進、プレスを回避することが出来なかった。

ミドルゾーンに侵入してからはイニエスタがさすがのプレーを披露。LSB橋本がオーバーラップしたスペースや、マリノスMF喜田の外側でボールを受けることで、サイドに数的優位を創出。サイド深くまでボールを侵入させることに成功している。

試合終盤には高いポジションを保つマリノスDFラインの背後へ積極的にスルーパスを供給。しかし、ウェリントン、長沢が決定機を逸してしまった。

多くのチャンスは創り出した。GKとの1対1など決めるべき場面を決めていれば、違う結果が得られただろう。

F・マリノス:前半は前線からの激しいプレッシングを敢行。自陣右サイドに追い込む守備が機能していた。

GKキム・スンギュからのパスでプレッシングがスタート。CB大崎とCBヤセルに対して、FW伊藤とFW久保が2対2の数的同数で積極的に距離を詰めてコースを限定。後方の選手もこれに呼応し、サイドバックにボールが供給された時点でWB松原、WB山中の両名が素早く距離を詰めた。

サイドへの追い込みが成功すると、後ろの栗原、マルチンスが素早くWGポドルスキとWB郷家をカバー。藤田、イニエスタ、三田の3CMFに対しては、天野、喜田、扇原が上下左右にうまくマークを受け渡し、逆サイドへの展開を許さなかった。

後半はやや押し込まれ、守備ブロックを作って待ち構える時間帯も長かった。守備ブロックの基本形は5-3-2。WBが最終ラインに吸収され、5バック状態となった。(ただ、これは監督が望んだ陣形ではなかったはずだ。)両WBが不必要なエリアを守ったことで中盤で数的優位を作られ、ピッチ中央でイニエスタに自由を許したことで、決定的なチャンスを作られた。

WB松原とWB山中は守備面で課題が露呈。前者は外側に寄りすぎて背後へのスルーパスを許し、後者はマルチンスとの距離が離れたことで、絞りが遅れる場面が目立った。改善すべきポイントだろう。


F・マリノスの攻撃vsヴィッセルの守備

F・マリノス:基本形は3-4-2-1だが、ビルドアップでは布陣を変形させた。

LCBの栗原がヴィッセルの4-4-2のDFとMFの2ライン間に侵入。FW伊藤とFW久保が2CBを牽制し、MF喜田がサポートすることで右サイドに数的優位を作る狙いがみられた。

フィニッシュに繋がったのは高いポジションをとった両WBからのアーリークロス。守備面で不安を露呈した両WBだったが、攻撃面では松原が1アシスト、山中は高精度のクロスを数本提供し、存在感を発揮している。

注目の久保建英は試合から消える時間はあったが、的確にスペースを認知し、DFとMFの2ライン間でボールを引き出す効果的なプレーを披露。先制点を奪取しチームを勝利に導いている。

ヴィッセル:守備ブロックの基本形は4-4-2。マリノスの攻撃精度がそれほど高くなかったこともあり、大きく陣形を崩される場面は少なかった。藤田と三田はうまくバランスを取りながら、危険なエリアを封鎖。LSB山中への対応も三原がそつなくこなしていた。

2失点はいずれも選手の技術的ミス。試合の明暗を分ける痛恨の失点となった。


ヴィッセル神戸監督:吉田孝行

シュート数は18対7、枠内シュートは5対3、支配率64%とスタッツでは圧倒したが、結果は0-2の敗戦。決定機を逃し続け、悔しい試合となった。大きく改善すべき点は少ないが、ポドルスキの活かし方は再考すべきか。三田、三原と連動した右サイドの攻撃強度は高めたいところだろう。SBからのビルドアップに関しても前線の流動性を高めて精度を高めたい。


横浜F・マリノス監督:アンジェ・ポステコグルー

降格圏間近の15位。とにかく結果が求められる状況で勝ち点3を得られたことは素直に評価すべきだろう。前線からのプレッシングが機能し、新戦力が着実にフィットしているのは好材料だ。もちろん、反省材料も多い。ハイラインの脆弱性は変わらず、決定的なチャンスを幾度も作られた。ポジションで優位に立っても、細かいコントロールミスでチャンスを優位をふいにする場面が依然目立つ。辛抱強く、継続的な取り組みを続けていくしかないだろう。


主審:山本雄大

激しいボディコンタクトが頻発したが、悪質なタックルはなし。試合は荒れず、好ゲームとなった。後半71分に長澤が倒れた場面などペナルティエリア内で際どいプレーもあったが、目立った誤審はなく冷静に裁いている。