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カンボジア人史上初のJリーガー・ワタナカ「東南アジアの選手がトップで活躍できることを証明したい」

 藤枝MYFCに所属するカンボジア代表FWチャン・ワタナカが6月30日、NHKワールドのインタビューに応じた。同選手は今年2月に母国ボンケット・アンコールFCからJリーグ参入3年目の藤枝MYFCへ12月末までの期限付き移籍。カンボジア人史上初のJリーガーとなっている。

 ワタナカは昨季カンボジアリーグで2年連続の得点王とMVPを獲得。国内では抜群の人気を誇る国民的スターだ。しかし、他国と比較すればカンボジアリーグのレベルは決して高いとはいえない。同選手は「日本はワールドカップ出場権を獲得してるけど、カンボジアはまだそのレベルに達していない。僕は日本でサッカーのスキルだけではなく、チームワークと人間関係も学びたいんだ」と述べた。

 近年では東南アジアのプレーヤーがJリーグへ移籍するケースも増えている。J2水戸ホーリーホックはベトナム代表FWグエン・コン・フオンを獲得。ベトナム人サポーターの増加をJリーグにもたらした。今回、藤枝MYFCはワタナカ獲得によって同様の結果が生まれることを期待している。

 しかし、クラブの思惑通りには進んでいない。来日からすでに4か月が経っているが未だチームにフィットせず、先発出場はゼロ。適応にはまだまだ時間がかかりそうだ。藤枝MYFCの監督を務める大石篤人氏は「ワタナカには攻守両面で、もっとスピードが欲しい。彼には日本人の選手よりも力をつけるための時間が必要だ」と語った。守備力とスタミナの欠如が出場機会の少なさに繋がっているようだ。

 一方、カンボジアの多くのサポーターは出場時間の少なさに苛立ちを見せている。5月にはレンタル元ボンケット・アンコールのGMが訪日。「もしワタナカが試合に出場できる見込みがないと感じているなら、正直に伝えて欲しい。我々は彼をカンボジアに連れて帰りたい」と藤枝MYFCに出場機会増加を求めた。同クラブ小山淳社長は「彼は今、日本への適応に苦労している状況ですが、日々努力しています。彼には少し時間を与えてあげて欲しいです」と返答。両クラブは同選手の今後の活躍に期待して、互いに協力し支援し続けていくことで合意した。

 現在、ワタナカはチームに適応しようと奮闘しておりチームもそれを全面的にサポートしている。フィジカルコーチはスタミナ不足の改善を目的としたトレーニングメニューを作成。チームメイトはピッチ外でもコミュニケーションをとるため、チャットを使ってやりとりしているようだ。

 ワタナカは最後にカンボジアで応援してくれるサポーターたちにメッセージを述べた。

「僕はカンボジア人史上初のJリーガーだ。東南アジアの選手たちがトップレベルで出来るということを証明したい。もちろんカンボジアのサポーターたちは、僕がプレーする姿を見たいだろうね。だから、カンボジアに帰ってきてほしいと思っているはずさ。でも僕は日本で最後まで頑張って成長したい。今後の目標はこのチームで先発してレギュラーになることさ」