【Zama~Miro!】プレーの強度とは? 世界王者と名門クラブの一歩目・その1(スペイン1節サンタ・コロマ対エルポソ戦レポート)

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今シーズンからエルポソを率いるディエゴ・グストシィ

スペイン在住の座間健司による不定期コラム「ザマーミロ」。某フットサル専門誌での連載を勝手に復活させちゃいます。Miroはスペイン語で「私は見る」という意味。国内外のトップレベルの選手たちも、フットサルを見る確かな目を評価する座間氏は2018/2019シーズンの開幕戦のサンタ・コロマvsエルポソをどう見たのか。前編と後編の2回に分けてお届けします。

前半のエルポソと静観のディエゴ

2016年にコロンビアで目にした世界王者アルビセレステと、目の前の真紅のユニフォームの名門クラブの姿が重なることはなかった。

前半は。

スコアボードが示すように、白いホームチームが優勢にゲームを進めていた。相手に長い時間ボールを持たれていても関係ない。そんなの力を考えれば、当然だ。問題は強豪に対して、自分たちのプランを遂行できているか。攻撃も、ディフェンスもほぼ意図どおりだった。サンタ・コロマは20歳のアルバレスがキャプテンを務めている。彼が新チームを端的に象徴していた。ゴールマウスに立ったのは、昨季はバルセロナBにいた21歳のミケル・フェイシャだ。彼の前では同じくバルセロナBからやって来たフィクソのウーリ・サントスが動き回っていた。元ブラジル代表アリなどベテランが去り、夏に多くの若手を加えたサンタ・コロマは、活力にあふれていた。攻守に誰もが走り、身体を張る。そんな躍動するライバルを尻目に、名のあるスターが揃うエルポソは思うように試合を進められずにいた。

エルポソはベンチの景色が変わった。2001年の夏以来だ。16シーズンに渡って監督を務めたブラジル人ドゥダが昨シーズン限りで、退団した。今シーズンからは、ディエゴ・グストシィが指揮する。2016年ワールドカップで母国にタイトルをもたらしたエルポソのアルゼンチン人だ。規律あるディフェンスとシンプルなショートカウンターをベースに、選手の能力を最大限に引き出し、世界王者に導いた。スペインではインテル、バルセロナ、エルポソが現在強豪クラブとして認知されているが、どのチームのメンバーにもアルゼンチン人はいない。2016年もそうだった。アルゼンチンは世界的なスターはいないが、ディエゴは各選手のポンテシャルを最大限に引き出し、ポルトガル、ロシアと次々に破り、ワールドカップを手中におさめた。アルゼンチンが大きなタレントがなくとも優勝できたのは、見劣る個をチーム全員で補ったからだ。その代名詞が規律あるディフェンスであり、強固な守備を成り立たせる支柱のひとつが、各選手の強度の高さだった。アルゼンチンは14名全員が労を惜しまず、1秒も怠るこなく、ピヴォであろうが、フィクソであろうが高い強度を保っていた。そして強度の原動力のひとつが、指揮官の激励だった。ディエゴはベンチで大声で選手に指示を出す。戦略と共に、パッションも伝える。熱を伝播させる。一見すると興奮しているようだが、内は冷静なのだろう。なぜならジャッジに関しては、大きなジェスチャーで抗議をすることがなかったからだ。彼は選手に熱のあるメッセージを届けるために、あえてそういう伝え方をしているのだろう。現役時代の名残りなのか。もしくは指導者として特筆すべきタレントか。分からないが、ディエゴのメッセージには活力が込められていた。

前半、エルポソはサンタ・コロマに走り負けていた。各々のクオリティは明らかに上回っているが、ゲームを上手く展開できない。選手はボールとプレーしているだけ。目の前にいる相手をなぎ倒そうという意思が見えない。開始早々に失点した時、ディエゴは口元を堅く結び、黙っていた。

プレーの強度も低ければ、熱を伝播する指揮官もいなかった。
<その2に続く>

今回の記事で座間氏がつづっている試合のハイライト動画がこちらです。
その2は、明日20日に公開いたします! お楽しみに!