
通常、下位カテゴリーへの降格が決まると、多くのクラブは観客動員数の減少や営業収益の減少、主力選手の流出やスポンサー企業の撤退など厳しい現実が待っている。そんな中で異例の動きを見せているのが2024シーズンの明治安田J1リーグで19位となり、9年ぶり5度目のJ2降格となった北海道コンサドーレ札幌だ。
前回J1へ昇格した2017シーズンは、当時札幌を率いていた四方田修平監督(現・横浜FC監督)の下で2001シーズン以来2度目のJ1残留を達成。2018シーズンからはサンフレッチェ広島や浦和レッズを率いたミハイロ・ペトロヴィッチ氏が監督に就任し守備的な戦術を敷いていたチームに攻撃メソッドを植え付け、就任初年度はクラブ最高順位(4位)でシーズンを終えた。さらに翌シーズンはYBCルヴァンカップで準優勝など、J1とJ2を行き来する“エレベータークラブ”だった札幌をJ1仕様のチームに成長させた。しかし、2020シーズン以降は中位を彷徨うなど次第に低迷。主力の放出なども相次ぎ、ついにJ2降格となってしまった。
しかし今冬、札幌は主力選手の放出を最小限に抑えることに成功している。さらに、数多くのスポンサー企業が契約を継続。驚くことに新規スポンサー企業も増え続けている。ここでは、J2降格にもかかわらずスポンサー企業が増加している理由や主力選手残留の要因について考察する。

スポンサー企業を愛する札幌サポーター
札幌のサポーターには、他クラブのサポーターに比べ突出していると感じる要素がある。それはスポンサー企業を想う顧客ロイヤリティ(※)の高さだ。SNSでは日々、札幌のスポンサー企業である『サッポロビール株式会社』の看板商品CLASSICで乾杯する姿や、冠婚葬祭事業を展開する『株式会社あいプラン』でウェディングフォトを撮影する様子、遠征時に『日本航空(JAL)』を利用する姿などが多く発信されている。
2013シーズン、当時J2だった札幌のホーム最終戦後には「空港まではJR」「乾杯はCLASSIC」「日本の翼、札幌の翼JAL」「遠征はJALで行こう」などスポンサー企業名を取り入れた横断幕が掲示された。サポーターが掲げる横断幕やボードは、成績が悪いチームやフロントに向けてのメッセージが大一番での試合前に掲げられるのが一般的だが、スポンサー企業を意識した掲示は筆者が知る限り札幌のサポーターが「初」ではないだろうか。このような顧客ロイヤリティの高さが、降格してもなお新規スポンサーを獲得できている要因であると考える。
※企業や商品、サービスに対する信頼や愛着。

ここ一番での団結力
スポンサー企業増加の背景には、さらにもうひとつの大きな要因がある。それは、Jリーグの中でも群を抜く「サポーターの団結力」だ。
2020シーズンのJリーグは、2月下旬に開幕を迎えるも新型コロナウイルスの影響もあり7月上旬までの試合中止が発表された。世界中に影響を与えた未曽有の事態のなか、札幌はパートナー企業を支援するためのクラウドファンディング『#全道一丸で乗り越えよう!コンサドーレパートナー企業応援プロジェクト!』を立ち上げた。300万円の目標金額に対し総額約5,600万円の支援が集まり、支援者数や社会的影響力(話題性)などで総合的に評価される『CAMPFIREクラウドファンディングアワード2020』で総合賞3位に輝いている。スポンサー企業に向けてのクラウドファンディングはこれまで5回実施され、うち4回は目標額以上の資金が集まっており、札幌サポーターが見せるここ一番での団結力は道内外の企業から評価されている。

札幌サポーターの熱意が動かしたもの
2024シーズンは最終戦を残した第37節(サンフレッチェ広島戦1-5)でJ2降格が決まった札幌。翌週行われた第38節の柏レイソル戦(1-0)は勝っても降格という事実は変えられない試合だったが、本拠地である大和ハウスプレミストドーム(札幌市)には21,721人もの観客が詰めかけた。
これまで、どんなに厳しい状況が訪れようとも熱狂的に応援し続けたサポーターたち。そんな姿を見て、撤退せず支援し続けることを決めた企業や他クラブから好条件オファーを受けながらも残留を決意した選手が多いのではないだろうか。
1年でのJ1復帰を目指す札幌。2025シーズンは2月16日14時開始の大分トリニータ戦で幕を開ける。アウェイ(クラサスドーム大分)にも多くの札幌サポーターが駆け付けることだろう。
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