Jリーグ

“猛進しなかった”湘南が価値あるドロー。浦和の反省材料は【J1試合分析】

湘南ベルマーレ FW瀬川祐輔 写真:Getty Images

湘南はカメレオンサッカーでJ1残留を果たせるか

直近のリーグ戦3試合連続で勝利を逃している湘南だが、今節も山口智監督のもとでの積み上げが感じられる試合内容だった。

浦和相手の勝ち点1奪取の要因は、ハイプレスと撤退守備を状況に応じて使い分けたこと。浦和が4バックのままビルドアップを行った場面では、瀬川とウェリントンの2トップが相手の2センターバック(岩波拓也とアレクサンダー・ショルツ)を捕捉し、ハイプレスを敢行。浦和の両サイドバック、酒井宏樹と馬渡和彰(後半から大畑歩夢)には湘南の両ウイングバックもしくは2インサイドハーフが対応した。

浦和の2ボランチの片割れが2センターバック間に入り、変則3バックを形成した際には[5-3-2]の陣形による撤退守備を選択。3バックの相手に対し、2トップのままハイプレスをかけるという猪突猛進な守備を控え、チーム全体で的確に状況判断を行えていた。


湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

隊形変化が激しいチームに対抗するには

洋の東西を問わず、近年は相手の基本布陣やプレスのかけ方に応じて自分たちの陣形を変え、マークのずれを作りながらビルドアップを行うチームが増えている。

隊形変化が激しいチームに対抗するには、相手の布陣に自分たちの守備隊形を適合させたうえでハイプレスをかけるか、ハイプレス自体を諦めて自陣後方へ下がり、最終ラインの背後やバイタルエリアを埋めるのが得策。

8月7日のJ1リーグ第24節、北海道コンサドーレ札幌戦ではどちらの戦法を採るのかをチーム全体で意思統一できず、湘南は1-5の大敗を喫したが、5月25日と9月3日のリーグ戦では川崎フロンターレを相手にメリハリのある守備を行い、“シーズンダブル”(同一シーズン内で同じ相手に2勝)を達成している。

チョウ・キジェ元監督(現京都サンガ)時代(2012-2019)は[3-4-2-1]の布陣を基調とするハイプレスがクラブのカラーとして根付いていたが、今では相手によって色を変えるカメレオンサッカーが板についた。

湘南は今年のJ1リーグで無失点試合数が“10”に達しており、これは同リーグ全18チームのなかで、3番目に良い成績。シーズン最終盤を迎えるにあたり守備が熟れてきたことは、J1残留争いに巻き込まれている今の湘南にとって、追い風となるだろう。対戦相手の出方に即した守備を継続しつつ、浦和戦でも浮き彫りとなった決定力不足を解消できるかに注目だ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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