横浜F・マリノス AFCチャンピオンズリーグ

この横浜に優るあらめや。F・マリノス、30分だけ完遂の攻撃サッカーでACL決勝へ

横浜F・マリノス 写真:Getty Images

4月24日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24の準決勝第2戦。横浜F・マリノスは本拠地(横浜国際総合競技場)に蔚山現代(韓国)を迎えた。3-2とホームチームが1点リードで後半終了のホイッスルが鳴り響いたものの、第1戦との合計スコアが3-3となったため、15分ハーフの延長戦へと突入。ここでも両チーム無得点に終わり、準決勝の決着はPK戦に委ねられた。

PK戦では後攻の横浜FM4人目キッカー、MF天野純まで両チームとも全員成功。キックを成功させた天野の咆哮により、横浜サポーターのボルテージも最高潮に達した。

大声援を受けたGKポープ・ウィリアムが、蔚山(先攻)の5人目キッカーMFキム・ミヌのシュートをストップ。横浜FMの5人目、DFエドゥアルドのシュートがゴールネットに突き刺さった瞬間、激闘に終止符が打たれている(PK戦スコア:5-4)。

第1戦を0-1で落としながら、横浜FMはいかに勝機を見出し、クラブ史上初のACL決勝進出を果たしたのか。ここでは準決勝第2戦を振り返るとともに、この点について検証・論評する。現地取材で得たハリー・キューウェル監督(横浜FM)の試合後コメントも、併せて紹介したい。


横浜F・マリノスvs蔚山現代、先発メンバー

蔚山のパス回しを封殺

お馴染みの基本布陣[4-1-2-3]でこの試合に臨んだ横浜FMは、キックオフ直後からFWアンデルソン・ロペスを起点とするハイプレスで試合を掌握する。同選手が蔚山(基本布陣[4-4-2])の2センターバック間のパスコースを塞ぎながらプレスをかけ、アウェイチームのパス回しを片方のサイドへ追い込むと、これに横浜FMのウイングFWやサイドバックも呼応。チーム全体としての連動性が感じられる守備で、蔚山のGKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)を封じた。

試合序盤は蔚山の攻撃配置に工夫が見られず、2ボランチの一角が2センターバック間に降りることも、サイドバックが内側へ絞って外と中央両方のパスコースを確保することもなし。ビルドアップ時にサイドバックが自陣後方タッチライン際に立ったため、そこへパスを送っては横浜FMによるハイプレスに晒されていた。

横浜FMがハイプレスを仕掛けることは予想可能だったはずで、蔚山を率いるホン・ミョンボ監督の自軍のビルドアップ配置に関する準備が不足していた感が否めない。蔚山陣営が放ったハイプレス回避のためのロングパスも、前半途中までは横浜FMが回収している。キックオフ直後から前半30分くらいまでの約30分間で蔚山は窮地に陥り、逆に横浜FMにとっては持ち前のアタッキングフットボール(攻撃的サッカー)を披露できる時間帯となった。


アンデルソン・ロペス 写真:Getty Images

前半30分までに3得点

第1戦を1-0で物にした蔚山が[4-4-2]の布陣での撤退守備を選んだため、横浜FMの2センターバック(畠中槙之輔と上島拓巳の両DF)にプレスはかからず。ゆえにホームチームは2センターバックを起点に悠々と攻撃を組み立てた。

迎えた前半13分、横浜FMの右ウイングFWヤン・マテウスから小気味良いパスワークが始まり、ボールが蔚山の最終ライン背後にこぼれる。蔚山陣営がこのボールの処理にもたついている隙をホームチームFW植中朝日が突き、先制ゴールを挙げた。

遅攻のみならず、快足の左ウイングFWエウベルへシンプルにロングパスを送るなど、横浜FMは多彩な攻めを披露。前半21分にはエウベルにボールを預ける速攻が一度不発に終わるも、すかさず2次攻撃へ移る。エウベルやマテウスがパスワークに絡み、ロペスがペナルティアーク付近から左足でシュートを放つと、これがゴール右隅に突き刺さった。

2戦合計スコア2-1で形勢逆転のこのゴール直後、横浜市歌をモチーフとしたホームチームのチャント『この横浜に優るあらめや』(※)がスタジアムに響き渡り、横浜FMがさらに勢いづく。迎えた前半29分、ロペスが相手DFファン・ソッコ(センターバック)に寄せて苦し紛れの縦パスを蹴らせ、これをDF畠中がカット。ここから横浜FMの速攻が始まると、植中がペナルティアーク後方からミドルシュートを放ち、リードを広げるゴールを挙げた(得点は前半30分)。

(※)この横浜より優れた港があるだろうか、いや無いだろうの意。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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