女子サッカー

なでしこジャパンの超一流の対戦相手たち!世界最優秀選手、W杯得点王、世界最高GK

イングランド代表DFルーシー・ブロンズ 写真提供:Gettyimages

FIFA最優秀選手とW杯得点女王擁するイギリス

初戦と同じく札幌ドームで迎える7月24日の第2節で対戦するのが、イギリス女子代表だ。FIFA(国際サッカー連盟)管轄の大会ではない五輪には、英国4協会(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の統一チームとして出場することになる。今回のチームはイングランドから15人、スコットランドから2人、ウェールズから1人で構成される18選手がエントリー。同時に4人のイングランド人のバックアップメンバーも発表されている。ちなみに、イギリスではなくイングランドは、FIFAランク6位に位置している。

日本の脅威となるのは、2年前の女子W杯フランス大会でイングランド女子代表として6ゴールを挙げて大会得点女王に輝いたFWエレン・ホワイト。グループステージの第3戦では、なでしこジャパンからも2ゴールを挙げ、最終的に母国をベスト4に導いたエースである。現在32歳のホワイトは9年前のロンドン五輪でもプレーしており、経験も豊富。女子サッカー界のエースFWは突破力やスピードに秀でているタイプが多いが、彼女はいわゆる“個”の能力では少し劣る。スピードは凡庸だが、組織の一員として献身的にチームプレーを遵守する選手であり、最後にゴール前で勝負した際の決定力に優れる。“違い”を示さなくてもシンプルにプレーすることで周囲がチャンスを作ってくれる環境があるためでもある。

そして、右サイドバックを担うルーシー・ブロンズこそが、このチームの最重要プレーヤーである。近年の男子サッカー界では「サイドバックは最重要ポジション」と評価され始めているが、女子サッカーでもその傾向が強い。現在29歳のブロンズは昨年のFIFA女子最優秀選手であり、女子サッカー界における同ポジションの第一人者である。

2017年からの3シーズン、女子サッカー界の絶対女王オリンピック・リヨンでプレーしていたブロンズは、1対1の守備に強く、逆サイドからのクロスに中央へ絞って対応できる戦術眼の高さやDFとしての強さがある。攻撃面でも高い位置をとり続けるようなタイプではないが、サイドバックの位置からゲームをコントロールできる。リヨンでもチームメイトだったFWニキータ・パリスと右サイドでハーフスペース(中央とサイドの中間)とワイドを相互補完する絶妙のポジショニングと連携を見せ、中央に入って来て得点に直結するシュートやラストパスも繰り出す司令塔的なプレーも得意としている。プレーに“デザイン”がある彼女は、イングランド代表通算81試合で9ゴールを記録。どんなポジションでもこなせるオールラウンドな選手である。

そして、このイギリス女子代表を率いるへゲ・リーセ監督は、現役時代にノルウェー代表の司令塔として活躍。1995年の女子W杯スウェーデン大会と、2000年のシドニー五輪の両大会で優勝し、95年W杯ではMVPに輝いている。直後に日本の日興證券女子サッカー部ドリームレディースに移籍し、現在なでしこジャパンで主に守備面の指導を担う大部由美コーチとはチームメイトだった。

2011年になでしこジャパンが女子W杯ドイツ大会で優勝した際は、決勝の対戦相手であったアメリカ女子代表のアシスタントコーチを務めていたリーセ監督。今回のイギリス代表監督に就任したのは今年3月だ。元マンチェスター・ユナイテッドやエバートンでプレーしたレジェンドであるフィル・ネビル前監督が1月に退任したイングランド女子代表の暫定監督にも就任したが、9月からは現オランダ女子代表のサリーナ・ヴィーフマン監督が指揮を執ることが決まっている。

さすがにコロナ禍でのコンディション作りやチーム作りは進んでいないだろうが、ブロンズやホワイトの他にもベテランMFジル・スコットや、近年盛り上がりを見せるイングランドWSL(女子スーパーリーグ)で台頭した実力派の若手選手も多く招集されており、アスリート能力の高い個のチカラは脅威である。


チリ代表GKクリスティアナ・エンドラー 写真提供:Gettyimages

女子サッカー界最高の守護神がいるチリ

そして日本女子代表は、宮城県の宮城スタジアムで迎える7月27日のグループステージ最終節で、ブラジルに次ぐ南米予選を2位で突破しカメルーンとの大陸間プレーオフを制して五輪初出場を勝ち取ったチリ女子代表と対戦する。

女子の競技力向上が欧州ほどは進んでいないとはいえ、サッカー大国が揃う南米から僅か1.5枠である五輪への出場切符を掴みとるのは至難の業である。2年前のフランスW杯で主要国際大会初出場を飾り、タイ相手に歴史的初勝利を挙げていたチリは、女子サッカー界の新興勢力でもある。

FIFAランキング37位のチリを支える堅守において大きな壁になるのが、リヨンのフランスリーグ14連覇を止めたパリ・サンジェルマン(PSG)で2017年からプレーしているGKクリスティアナ・エンドラーである。今夏からそのリヨンに移籍するが、イングランドのチェルシーやスペインのバレンシアでのプレー経験もある彼女は、東京五輪開幕日の7月23日に30歳の誕生日を迎える。

公称187cmの長身を活かしたハイボール処理は男子レベルで、それ以上にプレーの読みが鋭い。16歳まではU-17代表にフィールドプレーヤーとして選出されていたこともあるが、相手がシュートを撃つ直前、あるいはトラップしてからシュートを撃つまでのコンマ数秒の僅かな時間で前方へ出てアタックする。相手と少しでも距離を詰めてゴールが小さく見えるように、そしてボールに触れられる可能性を少しでも上げて決定的なシュートをブロックするようにセーブする。その実力はどれだけ謙遜しても女子サッカー界最高の守護神であり、2019年の女子W杯フランス大会では0-3で敗れたアメリカ戦でMVPを受賞したほどである。

エンドラーのピッチ上での立ち居振る舞いは、女子だけでなく男子にもGK人気を促せるほどにエレガントである。FIFAランキング10位の日本としては、チリから勝点3を確保するのは当然だ。未来のなでじこジャパンのGK誕生のためにも、彼女の好セーブを何本も引き出すほど攻め倒したい。

冒頭で述べたように今大会は参加12カ国中の8カ国が準々決勝に進出できる。コロナ禍でコンディションが定まらない中では、5人交代枠も含めたルールを存分に駆使してグループステージの3試合を戦うチームが多くなると予想される。そのため、グループ首位通過でチカラの劣る国との準々決勝での対戦を狙うことは、あまり意味がないかもしれない。大会前最後の強化試合、FIFAランキング9位の豪州戦ではコンディション面で有利なパフォーマンスを披露して1-0と勝ち切った、なでしこジャパン。まずは一戦一戦を大切に戦うことが求められる。


なでしこジャパン、東京五輪対戦日程(グループE)

  • 7月21日(水)16:30 :イギリス vs チリ:札幌ドーム
  • 7月21日(水)19:30 :日本 vs カナダ:札幌ドーム
  • 7月24日(土)16:30 :チリ vs カナダ:札幌ドーム
  • 7月24日(土)19:30 :日本 vs イギリス:札幌ドーム
  • 7月27日(火)20:00 :チリ vs 日本:宮城スタジアム
  • 7月27日(火)20:00 :カナダ vs イギリス:茨城カシマスタジアム

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