Jリーグ ファジアーノ岡山

ピッチサイドリポーター加戸英佳さん【特別インタビュー】後編「岡山とJ2の楽しみ方」

徳島ヴォルティスを率いていたリカルド・ロドリゲス監督 写真提供:Gettyimages

「独断ファジ強化策」から考えるJ2の楽しみ方

ベスト11の選出について伺っただけでも、岡山からJ1へ多くの有力な選手が引き抜かれているのは一目瞭然となった。そこで加戸さんと考えたいのが、J2の楽しみ方だ。岡山の話になると主観的になるので別のクラブを例に出し、「独断ファジ強化策」を論じながら、J2の楽しみ方を探った。

例として挙げたのは、今年からJ1の舞台で戦っている徳島ヴォルティス。彼等もここ3年ほどでDF大崎玲央(現・ヴィッセル神戸)、広瀬陸斗(現・鹿島アントラーズ)、馬渡和彰(現・大宮アルディージャ)、MF杉本竜士(現・横浜FC)、FW渡大生(現・アビスパ福岡)、山崎凌吾(現・名古屋グランパス)と多くの選手がJ1へ“個人昇格”していった。昨季終了後にはリカルド・ロドリゲス監督まで浦和レッズに引き抜かれてしまったほどだ。それでも彼等は昨年のJ2で優勝し、今季はJ1でも堂々としたサッカーを披露している。

―岡山と同じく徳島もここ数年で多くの選手がJ1へ個人昇格しています。遂には監督まで引き抜かれてしまいました。でも、彼等は今季昇格したJ1でも堂々としたサッカーをしています。岡山との違いには何があるのでしょうか?

「引き抜かれるという意味では良い選手がそれだけ所属しているチームだと思うんですね。こうしてベスト11に挙げた選手だけでもこんなにいるわけですから。プロなので、『選手を育てる』っていう表現は適切ではないのかもしれませんが、個人昇格のオファーが来ても、『ファジでJ1へ昇格したい』と思ってもらえるチームにならないといけない。そのためには強くならないといけない。やっぱり、徳島さんは1度J1に昇格しているのが大きいと思いますね」

―ただ、2013年にJ2・4位で『J1昇格プレーオフ』を制した年の徳島は、“昇格請負人”小林伸二監督(現・ギラヴァンツ北九州)、DF千代反田充、アレックス、MF柴崎晃誠(現・サンフレッチェ広島)といった経験豊富な指揮官や選手を補強したチームでした。

「それで言ったらファジも2016年に6位に入って初めてプレーオフを戦った時、加地さんと岩政さんの元日本代表コンビや、MF矢島慎也選手(現・G大阪)やFW豊川選手のような五輪代表クラスの選手が活躍していました。あのプレーオフの決勝でセレッソに勝っていたら(0-1の敗戦)と今でも思いますね。

ただ、現在のファジは新卒やJ2、J3から獲得した若手選手が多いチーム編成になっていて、尚且つユースチームの強化にも着手して選手を育てていく方針に舵を切り始めています。だからといって完全に育成に特化したクラブにしていくわけではなく、J1昇格という目標を維持していくためのアカデミー強化だとクラブも発表しています。

時間はかかるかもしれませんが、お隣のサンフレッチェ広島さんが良い例で、アカデミー出身の選手がトップチームで活躍すれば、クラブとしても実績ができて岡山という地域も盛り上がっていきますよね! ちょうど先日ファジでも出場時間は短かったんですが、山田恭也というアカデミー出身の選手がJリーグデビューしました。クラブとしては2人目なのでまだまだ実績は少ないです。こういう選手たちがチームの中心選手として活躍してくれる日がくるのを楽しみにていますし、クラブ全体で進化していくファジを楽しみに見ていきたいところですね」

―伸びしろがある今後の岡山に期待ですね!ところで、そのプレーオフが昨季に続いて今年も開催されないことになりました。その影響はどう感じていますか?

「正直、ファジのような獲りたくても獲れない選手がいるような予算規模のチームだと、J1への昇格が自動昇格の上位2チームだけだと厳しい現実があると思います。そういう部分があるので6位までにプレーオフの出場権があると、『何とかそこに入っていけばチャンスがある』と思えるし、実績もあります。プレーオフがあるのとないのとでは全然違うと思いますね。最終節まで多くのチームにその可能性があるので、リーグ全体に置いても大きな影響力があると思います」

―その『J1昇格プレーオフ』を勝ち上がったチームがJ1で著しく成績が振るわないために、2018年からはJ1・16位チームとの入替戦を交えた『J1参入プレーオフ』となりました。

「J2クラブには高いハードルになっていると思います。でも、実際にプレーオフ勝者がJ1で結果を残せていなかったのも事実で。そうは言っても、徳島さんがJ1を経験した価値も大きかったと思いますよね。しかもJ2クラブは引き分けは負けなので、勝たないと昇格できないのは厳しいです。ただ、ドキドキ感は違いますよね」

―そう考えると2019年は加戸さんが担当していた岡山、京都がプレーオフの6位争い、岐阜は降格してしまいました。J2はJ1昇格もJ3降格もあるヒリヒリしたリーグです。

「岐阜さんの降格が決まった試合は私が担当していて、当然ながら降格のインタビューの経験はないので・・いい経験になりましたけど・・私も辛かったですね」

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