Jリーグ

ルヴァン杯決勝、川崎とコンサドーレ札幌の激闘。延長戦で続いた物語

写真提供: Gettyimages

著者:クリシュナ・サドハナ(フットボール・トライブ・アジア)

10月26日(土)に埼玉スタジアム2002で行われたJリーグYBCルヴァンカップ決勝戦。川崎フロンターレが北海道コンサドーレ札幌を5-4で破り、2019年のタイトルを獲得した。試合自体は延長戦後に3-3で終了しており、双方のファンが前のめりになり続けた刺激的な互角の試合となった。

川崎も札幌も、ルヴァン杯初タイトル獲得をかけて決勝に挑んだ。川崎は過去5回決勝での敗北を経験しており、札幌にとっては史上初進出の舞台だ。両チーム共にこの試合に向けて著しく強化されていた。札幌はタイ代表MFチャナティップ・ソングラシンが怪我から復帰して先発に。川崎の先発には7月以来となるMFトリオ、脇坂泰斗、大島僚太、田中碧が揃い踏み。双方のファンから生み出される雰囲気は非常に感動的なもので、札幌のファンも川崎のファンも声を限りにそれぞれのチームに声援を送った。

先制点を奪った札幌

この感動的な雰囲気の中で、先制点を奪ったのは札幌だ。10分にMF白井康介が送ったクロスがFW菅大輝の進路に届くと、菅は左サイドから強烈なシュートを決めた。1-0の札幌は攻撃力を強め、18分には日本代表FW鈴木武蔵のシュートもネットサイドに当たる。川崎も抵抗していないわけではない。FWレアンドロ・ダミアンの果敢なシュートが放たれるも得点にならず。脇坂がMF家長昭博からの完璧なクロスを受けて放ったシュートもポストに直撃した。

前半アディショナルタイム47分に川崎が札幌に追いついた。コーナーからのボールをダミアンがヘディングで受けると、MF阿部浩之に渡って同点ゴールが叩き込まれた。

後半アディショナルタイムで続いた物語

後半73分、川崎の鬼木達監督はフレッシュな選手の投入を決めた。ただフレッシュな選手というだけではない、川崎のキャプテン小林悠だ。影響力のある小林の存在はチームを奮い立たせ、88分に大島のアシストで小林が決めた。これが決勝ゴールとなるかと思われた。しかしミハイロ・ペトロヴィッチ監督率いる札幌は、そのような終わらせ方を拒み、ここから物語が続くのだ。後半アディショナルタイムに入って5分、DF福森晃斗のフリーキックにMF深井一希がぴったり合わせ、川崎のGK新井章太の守りを超えてゴール。延長戦に突入した。

2-2のまま延長戦へ

川崎は96分にDF谷口彰悟がレッドカードを受けて退場し、10人でのプレーを強いられることとなった。谷口はタイのエースであるチャナティップの得点チャンスを妨げようとペナルティーボックス際でファウルし、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)での審議によって退場。このチャンスを受けた福森が強烈なフリーキックを決めると、99分再び札幌のリードとなった。

しかし、小林にもまだ示したいことがあり、川崎を逆境から救うべく導いていく。109分、札幌にコーナーが与えられた。鈴木が最初にボールを受けたものの、川崎のMF山村和也がこぼれ球を小林に向け、再び小林が同点ゴールを決める。

激闘を経て3-3の互角、PK戦

120分もの激闘を経て3-3のエキサイティングな互角試合も、ペナルティーキックで決着がつけられなければならない。PK戦、最初は札幌のMFルーカス・フェルナンデスが決め、川崎のDF車屋紳太郎がクロスバーに弾かれると、札幌が有利かと思われた。しかし川崎は冷静さを失わなかった。GK新井は英雄的なパフォーマンスでDF石川直樹と進藤亮佑のペナルティーを防いだ。PK戦の末5-4で決着がつくと、川崎が輝かしいルヴァン杯初タイトルを獲得した。

史上初のメジャータイトル獲得を目指していた札幌にとっては、本当に悔しい結果となった。PK戦に出てくることが期待されていたチャナティップは、ユース時代に重要なペナルティを逃していたため受けるのを躊躇い、9番目にリストされていたと試合後のインタビューで答えている。

なお、通常ルヴァン杯とコパ・スダメリカーナの優勝チームは翌年のルヴァン杯/コパ・スダメリカーナ王者決定戦への出場権が与えられるのだが、2020年は東京オリンピック開催のため例外となり開催は行われないこととなっている。