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複雑な感情を抱かせた本田圭佑の印象的なデビュー戦

著者:ライアン・スティール

 アームバンドを巻いて出場した本田圭佑にとってのメルボルン・ビクトリーのデビュー戦であり、初めてのメルボルン・ダービーは、2018/19シーズンのAリーグ開幕戦で同じ街のライバルである、メルボルン・シティ相手に1-2で敗れる、複雑な感情を抱かせるものだった。

 ケビン・マスカット監督の下でボランチを任せられた元日本代表は、28分にストーム・ルーが右サイドからあげたクロスボールに、相手ディフェンダーと競り合いながらヘディングで合わせ、チームに先制点をもたらした。

 カンボジアのゼネラルマネージャーも務める男は、最初の15分間はピッチの中央でプレーしていたものの、40.504人の観客の前で少しずつ試合に入って行った。クラブ初のリーグ連覇を目指すチームにおいて、本田は前後半を通して攻守両面でチームに貢献していた。

 本田にとってキャリア初のVARが、レフェリーの疑問の残る判断によって、メルボルン・シティFWのブルーノ・フォルナローリに与えられた。PK自体は、一度はセーブされたものの、リッチー・デ・ラエトがこぼれ球を押し込んで試合は同点になった.

 前半残りの10分間はインテンシティの高い展開になり、本田はチームを前進させたが、両チームともにゴールを奪えず、試合は同点のまま折り返す。

 ファンとローカルメディアの注目を一身も集めた本田。若いチームであり、未だに連携面を改善する必要ある中で見せた彼の冷静さと予測に、多くの人は驚かされた。多くの時間右サイドに流れてチームメイトにチャンスを与えた本田は、65分にはジェームズ・トロイージがポスト直撃のシュートを放ったシーンでも、存在感を発揮した。

 途中出場のライリー・マッグリーがメルボルン・シティに勝ち越し点をもたらした後、本田は76分に惜しいシュートを放つ。エリア外から放たれたボールは、ユージン・ガレコビッチの手をわずかに弾き、クロスバーの上へと外れた。同点弾は最後まで生まれることはなかったが、このシュートはチームに活気と勢いをもたらした。

 スピードこそないものの、ポジショニングや予測は敗戦の中できらりと光るものだった。疑問視されていたフィットネスの問題も、90分を通して極めてミスが少なかったことで、すぐに忘れ去られた。

著者:ライアン・スティール

オーストラリア出身。アジアに住んでいるサッカーコーチ(東南、東、南)であり、浦和レッズサポーター。

Twitter:@Steelinho