
地域別に見る構想と課題
南関東
南関東では8件前後の構想が挙がる。J1から数えて5部に相当する関東リーグ1部の南葛SCには、葛飾区が主導してJR新小岩駅近くに1万5,000人規模の専用スタジアムを整備する構想がある。江戸川区では、江戸川区陸上競技場を球技(ラグビーとサッカー)専用とする計画が進行中だ。このほか、築地や代々木への建設が噂されては消える東京23区サッカースタジアム構想や、埼玉県の大野元裕知事とさいたま市の清水勇人市長が公表した大宮スーパー・ボールパーク構想(NACK5スタジアム大宮・県営大宮球場・大宮競輪場の一体整備)などもある。ただ、これらのうち具体的に動き出しているのは新小岩と江戸川くらいだ。
SC相模原や湘南ベルマーレが用地選定で行き詰まっている一方、J2横浜FCの本拠地、ニッパツ三ツ沢球技場の建て替え計画は横浜市から正式に示された。隣接する陸上競技場を市内の深谷通信所跡地公園に移設し、その跡地に約2万人収容の新球技場を建設する計画で、2032年度の竣工を予定している。
新球技場や中央広場などのPFIの整備費は約460億円(うち新球技場は約380億円)と想定されている。整備費にはtoto助成や国費、ふるさと納税による寄付を活用し、管理運営費はネーミングライツ収入などで賄うことで、市の負担をできるだけ抑えるという。現在の球技場は取り壊さず、市民利用を中心とする施設に転換する予定だ。
市が再整備の「基本的な考え方(案)」を公表したのは2022年6月。その後、民間事業者による新球技場の建設・寄附提案の取り下げ(2023年6月)や施設配置の見直しを経て、基本計画案がまとまるまで4年余り、予定通り竣工しても10年を要することになる。新スタジアム建設がそれほど簡単ではないという現実を示していると言えないだろうか。
1993年5月15日と16日に行われたJリーグ開幕戦では、5つのスタジアム(旧国立競技場/東京五輪・パラのため2019年に建て替え、三ツ沢公園球技場、カシマサッカースタジアム/W杯開催のため2001年に改修、広島スタジアム、万博記念競技場)が使われた。そのうち、観客席に屋根がなくJリーグのスタジアム基準を満たさないまま使われ続けてきた三ツ沢も、ようやくJリーグの舞台としての役目を終えようとしている。
かつて、築地再開発の多目的屋根付きスタジアム計画では5万人収容と報じられ、Jリーグファンは一瞬色めき立った。しかし事業主体に読売新聞が加わったことで、いつの間にか読売ジャイアンツの新本拠地となるドーム球場の建設計画が有力という話になってしまった(それでも“サッカー兼用”の可能性は残されているという)。
関西
大阪府に2施設、京都府と兵庫県に1施設ずつサッカー専用スタジアムを持つ“サカスタ先進地区”の関西に目を移しても、J3のFC大阪の本拠地となる予定の花園ラグビー場第2グラウンドの改修計画(2028年完成予定)は完全にデッドロック(行き詰まり)の状態だ。そもそも近年、ホームゲームを京都、鳥取、北九州、山口などで開催しなければならない事態に陥っているクラブに「専用スタジアムを」などという話は望むべくもないだろう。
その他の構想
水戸ホーリーホック、松本山雅、カターレ富山、レノファ山口、愛媛FC、鹿児島ユナイテッド、FC琉球、JFLの福山シティも新スタジアム構想を掲げている。ただ、いずれも最終的には自治体頼みと読み取れるもので、「計画」と言うよりも「陳情」の段階。実現までの道のりは遠いと言わざるを得ない。

Jの理想形となる?「FC今治モデル」
J2のFC今治が本拠地のアシックス里山スタジアムで進めていた拡張工事が完了した。ゴール裏席を約3,500席増席したほか、カウンター席やボックス席なども新設し、収容人数は従来の約1.7倍となる8,848席となった。同スタジアムは2023年1月、5,316席のサッカー専用スタジアムとして完成。「成長するスタジアム」を謳い、2025年に大型映像装置を設置するなど、少しずつ設備を更新してきた。
当初の建設費約40億円は、第三者割当増資や企業版ふるさと納税制度を活用した寄付金、伊予銀行・愛媛銀行・愛媛信用金庫・日本政策金融公庫からの融資で賄った。土地こそ今治市から無償で貸与されているが、建設費に関しては自治体の一般財源を1銭たりとも使わずに建てられた画期的なスタジアムだ。
拡張工事は、2025年の平均来場者が前年比約1,000人増の約4,800人となり、満員が続いたことを受けて2025年12月に着工され、総工費約8億5,000万円をかけて2026年7月末に完了した。「まずは小さく造って、クラブの成長とともに大きく育てる」理想的な形と言えるのではないだろうか。クラブ運営会社「株式会社今治.夢スポーツ」の会長で筆頭株主の岡田武史氏(元日本代表監督)の慧眼には、恐れ入ったと言う他ない。
なぜ構想は多いのに実現が進まないのか
資金調達、行政との連携、用地確保、建設費の高騰が、各計画に共通するハードルとなっている。加えて、Jリーグのスタジアム基準の高度化・厳格化や、秋春制移行に伴う寒冷地対策も計画を複雑にしている。冒頭で触れた通り、構想・計画段階の案件が大半を占めており、完成までにはなお時間を要する案件が多い。
構想の多くは「スタジアム+公園」「多機能複合型」など、試合日以外の稼働や地域経済効果を重視する内容だ。クラブの環境向上や集客強化だけでなく、地域のにぎわい創出や防災機能、交流人口の拡大を目的とするものが多い。公費を投入する以上、当然と言えば当然なのだが、建設費に見合う“リターン”を提示できなければ、単なるハコモノで終わる可能性が高い。設計・建設に進んだ数件の進捗と、構想段階にある案件の具体化が今後の焦点となる。
コメントランキング