
Jリーグは1993年、10クラブで発足し、2024年にはJ1、J2、J3がそれぞれ20クラブ、合計60クラブという規模にまで拡大した。現在は42都道府県にJクラブが存在する。しかし、クラブ数の拡大は「60」という数字に到達した時点で終わるのだろうか。それとも、70、80、100クラブへさらに拡大するのだろうか。
ここでは、Jリーグ60クラブ体制が持つ意味を踏まえ、今後のクラブ数の上限を考えるとともに、経営上の課題を挙げていきたい。人口減少、スポンサー確保、スタジアム活用、選手の受け皿、放映権収入といった要素が、60クラブ体制の持続にどう影響するかを中心に説明する。クラブ数を増やすだけでリーグ全体が成長するとは限らない中、さらなる拡大の可能性と、既存クラブの経営力を高める必要性の両面から、次の30年を展望したい。
10クラブから60クラブへ、Jリーグ拡大がもたらしたもの
2026/27シーズンのJリーグは、J1、J2、J3の各カテゴリーで20クラブがホームアンドアウェー方式による38節を戦う。一度はJに昇格したが、JFLに降格した“元Jクラブ”も含めれば、およそ33年でクラブ数は6倍以上になった。これは日本サッカーにとって大きな成功と言える。
ただし、「6倍になったから、さらに6倍にできる」と考えることはできない。クラブ数が増えるほど、新たな地域にプロクラブを成立させる難易度は高くなるからだ。60クラブ体制に到達した今、問われているのはここから先の経営環境をどう整えるかだ。2023シーズンからJFLとの入れ替え制度が導入され、2024シーズンには初めて入れ替えが実現した。さらに2026年7月の実行委員会では、事実上の“J4”にあたる「Jチャレンジリーグ(仮称)」の設立が議題に上がったと報じられている。
クラブ数の増加には明確なメリットがある。まず、プロサッカーを地域に根付かせること。Jリーグ発足当時、プロサッカーを日常的に観戦できる地域は限られていたが、現在は全国の大半の地域にJクラブが存在する状況まで広がった。
さらにクラブが増えれば、選手の受け皿も増える。J1だけでなくJ2、J3にもプロ選手が存在するため、若手選手が競技を続ける環境が広がった。地域の子どもたちにとっても、「地元からプロになる」という具体的な目標を持ちやすくなった。クラブ数の拡大は、競技人口の維持と地域スポーツ文化の定着に寄与してきた。
Jリーグ60クラブ体制を揺るがす人口減少
最大の問題は、日本の人口構造だ。クラブを維持するには観客、スポンサー、選手、スタッフが必要になる。地域人口が減れば、当然ながらスポーツ市場の規模も縮小する可能性がある。特に地方都市では、人口減少と高齢化が同時に進んでいる。
クラブのホームタウン人口が減少すれば、観客動員だけでなく、スポンサー企業の数にも影響する。Jリーグは地域密着を理念としてきた。しかし「地域密着」は人口減少を止めるための政策ではない。そのため、今後のJリーグにとっては、人口が減少する地域でもクラブを維持できるビジネスモデルが重要になる。観客数や企業数の減少を前提に、収益源を多様化する必要がある。
大都市と地方で広がるクラブ間の経営格差
60クラブになると、クラブ間の経営規模の差も広がる。大都市圏をホームタウンとするクラブは人口、企業数、交通アクセスなどの面で一定の好条件が担保される。地方都市のクラブは、地元企業や自治体との関係が重要になる。
もちろん、大都市だから経営が成功するとは限らない。東京や大阪でも経営に苦しむクラブはあり、地方都市でも地域に強く支持されるクラブは存在する。重要なのは人口だけでなく、地域企業との関係、スタジアム、サポーターカルチャー、クラブブランドなど複数の要素だ。こうした経営格差を無視すれば、リーグ全体の競技レベルや魅力にも影響が及ぶ可能性がある。
クラブライセンスが示す「量」と「質」の両立
クラブ数の拡大を考える際には、クラブライセンス制度も重要になる。Jリーグによると、2026/27シーズンのJ1クラブライセンスは49クラブ、AFCクラブライセンスは13クラブに交付された。つまり、Jリーグには60クラブが存在する一方、上位カテゴリーへ進むためにはスタジアム、財務、組織、育成などの条件を満たす必要がある。
これはクラブ数の拡大を無制限に認める制度ではなく、量的拡大と質的維持を両立させるための枠組みとして存在している。
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