
日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)所属の三菱重工浦和レッズレディースは6月28日、埼玉県さいたま市のレッズランドにて2025/26シーズン初のチームトレーニングを行った。
ここでは現地取材で得た浦和RLのGK池田咲紀子と工藤輝央スポーツダイレクター(SD)のコメントを紹介。2024/25シーズン終盤に起きた同クラブの動乱を解説するとともに、クラブが抱える問題を考察していく。

不可解な監督交代で失速
2024/25シーズンのWEリーグを3位で終えた浦和RL。最終節を含む終盤3試合で2分け1敗と失速したことで、WEリーグ3連覇や2025/26シーズンのAFC女子チャンピオンズリーグ出場権を逃している。
今年1月に皇后杯を制し、3月の時点ではリーグ優勝も狙える順位につけていたものの、3月23日のAFC女子チャンピオンズリーグ準々決勝で武漢江大(中国)に敗れ、アジア制覇の夢が断たれる。この結果を受け、同クラブは3月25日付けで楠瀬直木監督との契約を解除した。
2022/23シーズン以降のWEリーグ連覇や、2023/24シーズンのAFC女子クラブチャンピオンシップ2023(Invitational Tournament)優勝など、浦和RLに複数のタイトルをもたらした楠瀬監督のシーズン途中の解任にサポーターたちが猛反発。浦和RLは4月10日、クラブ公式サイトを通じて同監督の解任理由を説明したが、「レッズレディース本部の本部長とスポーツダイレクター(SD)への責任に言及したご意見をいただいておりますが、チームの成績に関わる範囲で、最も責任を負うのは監督です」という一文が物議を醸す。AFC女子チャンピオンズリーグ準々決勝敗退の全責任を、楠瀬前監督に負わせているようにも読み取れるこの文言が、浦和サポーターの更なる怒りを買った。
この混乱のなかで堀孝史氏が後任監督に据えられたが、[4-1-4-1]の布陣を基調とする戦術の浸透に時間がかかり、これが2024/25シーズン終盤の失速原因に。5月17日のWEリーグ最終節(ちふれASエルフェン埼玉戦)でも浦和サポーターの怒りは収まらず、「笑顔あふれる浦和レッズレディースを返せ!!!」「『チームの成績に関わる範囲で最も責任を負うのは監督です』誰の言葉?」「3連覇とアジアへの挑戦権のための『一切の疑念なき監督更迭』…結果は?責任は?」と、不可解な監督交代に踏み切ったクラブ首脳への不満が横断幕に綴られた。

焼け石に水だったクラブの釈明
浦和RLは6月20日、クラブ公式サイトを通じて4月10日のリリース内容を謝罪。「浦和レッズが多くのファン・サポーターのみなさまに支えられているのは、応援する側・される側という関係を越え、共に戦う姿勢を大切にしているからだと私たちは考えています。しかしながら、そのような一体感を損ねるような表現となってしまい、結果として、多くの方にご不快な思いをさせてしまったことを、深くお詫び申し上げます」「監督交代という判断については、契約上の制約や様々な事情もある中で、スポーツダイレクターを中心に、経営陣も含めた複数の関係者が協議を重ねたうえで決定したものです。ただし、その説明の中で、監督だけに責任を負わせたかのような印象を与える表現となってしまい、多くのみなさまに不快な思いをさせてしまいました」。同クラブはこの謝罪文で事態の収束を図ったものの、WEリーグ最終節から1か月以上経った時点での釈明は遅きに失した感が否めず、まさに焼け石に水だった。
WEリーグ3連覇の夢、2025/26シーズンのアジアコンペティション挑戦権、選手たちの自信や笑顔、いかなるときもクラブを支えたサポーターとの一体感。クラブ首脳の数々の失策により、これらが瞬く間に失われた。

主力選手が相次いで退団
2024/25シーズン終了後に楠瀬氏が日テレ・東京ヴェルディベレーザの監督に就任したのみならず、ジュニアユース時代を含む15年間浦和RLに在籍したMF塩越柚歩も今夏にベレーザへ移籍。塩越と同じくジュニアユース時代から浦和一筋だったDF遠藤優とMF栗島朱里の移籍を前提とする退団が6月27日に発表されたほか、日本女子代表(なでしこジャパン)の一員として2023FIFA女子ワールドカップに出場したDF石川璃音とMF猶本光も同じ理由で退団。これに加え、昨年浦和RLユースからトップチームに昇格した19歳のMF竹内愛未の同じ理由による退団も発表されている。長きにわたり浦和RLを支えた主力選手や、有望な若手が相次いで退団するという激震が同クラブに走った。
なかでも竹内は、6月28日に自身のInstagramアカウントを更新。「昨日(6月27日)、リリースにもありましたようにチームを離れることになってしまいました。私の力不足でチームの力になれなかったこと申し訳なく思っています。私の育んできた過去の努力を否定され、成長率が足りないという話を半年前からチームとしてきました。その上で今回このような決断をしました」と綴っている。クラブスタッフや首脳陣との確執を想起させるこの投稿文に、既に多くの浦和サポーターが反応。所属選手へのリスペクトの無さを問題視する声が、同クラブへ多く寄せられた。
サポーターからの信頼を回復し、彼らの理解や共感を得ながら一体感を醸成する。クラブ首脳がここに心血を注がなければ来季の復権は成し得ないが、2025/26シーズン開幕前にして多くの問題を抱えているようだ。
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