ワールドカップ 日本代表

日本代表VS中国代表レビュー&採点。危なげなく勝利するも…

写真提供:Gettyimages

サッカー日本代表が2022FIFAワールドカップ・カタール出場を果たすために非常に重要な、アジア最終予選のホーム2連戦(1月27日&2月1日)。その1戦目、中国代表との試合は想像以上に危なげのない試合となった。

監督交代を経た中国代表がチーム作りの真っ最中のような出来だったことも日本に味方し、2-0で勝利。首位を走るサウジアラビア戦(2月1日)はこんな簡単な試合になるはずはなく、より強い日本代表が観られることを期待したい。

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スターティングメンバー、試合内容

システムは4-3-3。

GKは権田修一(清水エスパルス)。DFは右から酒井宏樹(浦和レッズ)、板倉滉(シャルケ04)、谷口彰悟(川崎フロンターレ)、長友佑都(FC東京)。吉田麻也と冨安健洋が欠場し不安視されたCBには、板倉と谷口という最終予選初出場コンビが名を連ねている。MFはアンカーの位置に遠藤航(シュツットガルト)、少し前の位置に守田英正(サンタクララ)と田中碧(デュッセルドルフ)。3トップは右に伊東純也(ゲンク)、左に南野拓実(リバプール)、中央に大迫勇也(ヴィッセル神戸)が入った。

開始直後は中国が積極的に圧力をかけてきたが、日本が冷静にいなすと徐々に日本ペースに。中盤が積極的に縦パスを引き出しリズムを作ると前半11分、伊東が抜け出しクロスを送るとこれが相手の手に当たり、PKを獲得。大迫のキックにGKは反応していたもののネットを揺らし、日本が早い時間帯での先制に成功した。

中国はここから、より守備の意識が強くなったかのようなプレーに終始。引かれた守備を崩す必要があったとはいえ、ここでダメ押しすることができないのが今の日本代表。20分にデザインされたCKから南野がシュート、28分には大迫がエリア内で受けフェイントを入れてからシュート。39分には大迫と南野の連携で崩したが、いずれもゴールには繋がらず。

前半はこのまま1-0で終了。先制点を奪うことはできたうえにボールを圧倒的に持つことはできたが、だからこそ流れの中での得点が欲しかった。

後半に入っても日本ペースは続き、12分には左から右へ展開し伊東のクロスに大迫が合わせたが、惜しくもゴールの上へ。それでも途中出場の選手が結果を残す。16分、投入されたばかりの中山のクロスに伊東が合わせ2-0に。中山は対応したDFが軽率な対応をしたところを見逃さず、非常に精度の高いボールを供給してみせた。

24分にFKでこの試合初のシュートを許したが、メンバーとシステムを替えながらほぼピンチを招くことなく試合を進めていく。これ以上の得点を奪うことはできなかったが、最後までボールを握り2-0で勝利。

しっかりと、ワールドカップ出場圏内の2位をキープしてみせた。


改善すべき点

危なげなく試合を進め、2-0で勝利。結果を見れば悪くない。けれどどこか物足りなさを感じてしまう。リーグ戦で強豪クラブが余裕を持って勝った試合、という印象だったからだろうか。

選手達が試合後に語った「試合に勝つことが大事」という言葉はその通りで、最も大事なのは2022FIFAワールドカップの切符を掴むことだ。だがその他にも、代表はクラブとは異なるものを示すことが求められている。「クラブとは異なるもの」を生み出すものこそ競争であり、常に競争にさらされることで国の代表としてプレーする意義や重みを感じられることに繋がる。

そして競争を生み出すのは選手ではない。指揮官の仕事の1つなのだ。それがないからこそ閉塞感を感じ、アジアというリーグにおける強豪チームの1つ、といった試合を繰り返しているのではないだろうか。


中山雄太 写真提供:Gettyimages

採点(及第点5.5)寸評

GK:12:権田修一:5.5

良い悪いではなく、仕事が少なくこの評価に。ボールが来なくとも、集中を切らすことはなかった。

DF:19:酒井宏樹:5.5

前半は球際の強さを示す。だが、後半になるとプレーの正確性を欠く場面が見られた。

DF:4:板倉滉:6.0

最終予選初出場とは思えないほどに安定したプレーを披露。日本のCB陣がはっきりとレベルアップしていることを示す内容だった。

DF:3:谷口彰悟:6.5

中国の攻撃に連動性がなかったとはいえ、板倉と非常に安定したCBコンビを形成。縦パスの質も高かった。

DF:5:長友佑都(57分OUT):5.5

元々プレーの幅が広いタイプではないが、以前はそれを積極的にやりきることが出来ていた。だがこの試合を含め、最近は安全第一のようなプレーが目立つ。

MF: 6:遠藤航:6.5 

球際の強さ、守備の読み、前への意識。どれを取っても素晴らしかった。フル代表においてもキャプテンマークが似合う選手だ。

MF:17:田中碧:6.0

誰よりも首を振り、パスを引き出し続けた。ボールを受けようとする動きも秀逸。課題を強いて言えば守備の強度か。

MF:13:守田英正:6.5

攻守のバランスの取り方が絶妙。攻撃にも守備にも針を振れさせすぎず、中盤のリンクマンとなっていた。この試合で特に良かった選手を3人挙げるなら伊東、遠藤、そして守田だろう。

MF:14:伊東純也:7.0 MAN OF THE MATCH

前半からスピードを活かして相手の脅威に。ラストパスの精度を欠く場面もあったが、ハンドを誘発し追加点を決めたとなるとこの評価はごく自然なもの。

MF:10:南野拓実(85分OUT):6.0

目立つプレーというよりも効果的なプレーでチャンスに関与し、様々な場所に顔を出した。あとはチャンスを決めきる力が欲しい。

FW:15:大迫勇也(57分OUT):6.0

PKを落ち着いて端に蹴りこみ、先制点を奪った。流れの中でも多くのチャンスに絡んだが、こちらは決めきれず。

途中出場

DF:20:中山雄太(57分IN):6.5

出場後すぐにアシストを記録。対応した相手選手の緩慢なプレーを見逃さず、伊東に正確なクロスを送った。

FW: 9:前田大然(57分IN):5.5

スピードを活かし最前線から追い回したが、連動を欠き相手の攻撃をスピードアップさせてしまうことも。より重要なサウジアラビア戦で結果を残せるか。

MF:11:久保建英(72分IN):5.5

トップ下に入り追加点を目指したが、やや連携不足か狭い局面を崩し切れず。それでもキックの質はさすがだった。

MF:21:堂安律(85分IN):採点なし 

シュートを放つなど積極性は見せた。もう少し時間が欲しかったか。

MF:8:原口元気(85分IN):採点なし 

経験がなすものかしっかりと試合に入ったが、何かを示すには時間が足りなかった。

監督:森保一:6.0

中国代表の完成度が低かったとはいえ危なげなく勝利し、この試合だけの結果、内容を見ると十分なものを見せた。だが、再三再四言っているが競争を生み出すという、日本代表がこれ以上強くなるための仕事は行えていない。

名前椎葉 洋平
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好きなチーム:アビスパ福岡、Jリーグ全般、日本のサッカークラブ全般

福岡の地から日本サッカー界を少しでも盛り上げられるよう、真摯に精一杯頑張ります。

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