プレミアリーグ

プレミアリーグ全20クラブの補強診断。今夏強化すべきポイントは?

プレミアリーグは8月11日に開幕を迎える。そこで今回は各クラブが見せた今夏の移籍市場の動きをまとめ、残された期間で補強すべきポイントをご紹介しよう。(英紙『Four Four Two』)


アーセナル

補強ポイント:フォワード

主な補強選手:
ベルント・レノ
ステファン・リヒトシュタイナー
ソクラティス・パパスタソプーロス
ルーカス・トレイラ など

他の強豪クラブに比べ、例年静かな夏を過ごしてきたアーセナル。しかし、今年は新指揮官ウナイ・エメリ氏を迎えて積極補強を敢行。レノやリヒトシュタイナーなど守備陣の大幅強化に成功した。

しかし、もうワンランク上を目指すためにはフォワードを補強したい。オーバメヤン、ラカゼット、ムヒタリアンは素晴らしいレベルの選手だが、ウェルベック、イウォビ、ルーカス・ペレスはクオリティが不足している。


ボーンマス

補強ポイント:センターバック(CB)、守備的ミッドフィールダー(HMF)

主な補強選手:
ディエゴ・リコ
デイビッド・ブルックス など

左サイドバックのディエゴ・リコをレガネスから獲得し、シェフィールド・ユナイテッドから恵まれた才能を持つAMFデイビッド・ブルックスを獲得した。チームを劇的に変化させられる選手ではないだろうが、(上手くいけば)2つの欠点を補うことが出来るだろう。

特にブルックスは興味深い補強であり、エディ・ハウの負担を減らすことが出来るかもしれない。どの程度プレー出来るかは計りかねるが、ボールを保持した時の動きはブルックスの方が優れているかもしれない。

昨季に引き続き、課題となるのは守備陣だ。中盤でボールを奪取するタイプのHMFとCBを獲得したい。


ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン

補強ポイント:なし

主な補強選手:
ジェイソン・スティール
デビッド・バトン
レオン・バログン
ベルナルド
イブ・ビスマ
フロリン・アンドネ
アリレザ・ジャハンバフシュ
パーシー・タウ など

昨季リーグ15位に食い込み残留を果たしたブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン。残留に向けて8名以上の新戦力を獲得している。

リールから獲得したイブ・ビスマは、ボックス・トゥ・ボックスタイプのMFで補強ポイントであった中盤の強化に繋がるだろう。現在21歳と将来性にも優れ、移籍金1500万ポンド(約22億2000万円)で獲得出来たことは賢い補強であった。シーズンが始まれば重要な契約であったと証明されるはずだ。

得点力不足に陥った昨季の反省からFW陣を大幅強化。グレン・マレー、ユルゲン・ロカディアに加えて、オランダリーグ得点王のアリレザ・ジャハンバフシュ、スペインで結果を残したフロリン・アンドネ、南アフリカからパーシー・タウを獲得。ただ、新加入選手がプレミアで実力を発揮できるかは未知数と言える。

得点力不足が解消されたとは言えないが、彼らの限られた予算で最大限の努力はしたと評価できるだろう。


バーンリー

補強ポイント:バリエーション

主な補強選手:
なし

昨季はショーン・ダイク監督のもと、リーグ7位に躍進し、ELプレーオフ出場権を獲得。素晴らしいシーズンを送った。

補強ポジションを明確にするのは非常に難しい。クラブはこのまま誰も獲得しない可能性もあるだろう。ダイク監督も補強に緊急性を感じていないはずだ。

しかし、「何か」が起きるを見るのは励みになるはずだ。バーンリーにとって十分とは言えないバリエーションを持つことが出来るからだ。「革命」は必要ないが、「進化」し続けることは必要だ。


カーディフ

補強ポイント:フォワード(FW)

主な補強選手:
グレッグ・カニンガム
ジョシュ・マーフィー など

主にプレミアリーグの経験がない選手を事前に判断することは出来ないだろう。カーディフはチャンピオンシップ(2部)で最高の守備を誇っていたが、昨季2部上位6クラブのうちミドルスブラに次ぐ得点数の少なさであった。課題は攻撃陣と言える。

昨季、ボビー・リードとケネト・ゾホレで合計27ゴールを記録。昇格の原動力となった。ただ、ニール・エザリッジが残留に導くためにはゴールスコアラーが不足しているはずだ。


チェルシー

補強ポイント:フォワード(FW)

主な補強選手:
ロバート・グリーン
ジョルジーニョ など

ジョルジーニョの獲得に成功した。それは素晴らしいことだ。ただ、補強の方向性は「誰が去るか」で決まりそうだ。エデン・アザール、ティボ・クルトゥワのどちらかを売却した場合、スター選手の獲得が必要不可欠となる。

スターの放出という不確定要素を取り除いた場合、補強ポイントは明確となる。「アルバロ・モラタは本当に信頼に値するストライカーなのか?」「ミシー・バチュアイの復帰は補強と言えるのか?」。答えはNOだ。昨シーズンを見れば明白。FWの補強しない方が驚くべき事態だろう。


クリスタル・パレス

補強ポイント:攻撃的ミッドフィールダー(AMF)、サイドバック(SB)

主な補強選手:
ビセンテ・グアイタ など

補強しなければいけないポイント、売却しなければいけないポイント。全てウィルフレド・ザハの去就次第で決定することになるだろう。パレスにとって不可欠な存在であるザハを失えば、チームをほぼゼロから再構築しなければいけないはずだ。

ロイ・ホジソン監督はサイドバックに改善を求めている(特に右サイドバック)。さらに、ヨアン・カバイェがUAEへ移籍し、ルベン・ロフタス=チークがチェルシーに復帰したため、中盤中央の創造性も昨季と比べれば格段に落ちる。

ただ、パレスはザハの去就が決定してから移籍市場で動き出すことになるだろう。


エバートン

補強ポイント:センターバック(CB)

主な補強選手:
リシャルリソン など

2017/2018シーズンは大惨事であった。サム・アラダイス氏は昨年11月に13位と低迷したチームに就任すると、8位まで順位を上げる手腕を発揮。しかし、シーズン終了後に解任されている。

ただ、幸運なことに多くの問題は修正された。前ワトフォード監督のマルコ・シルバ氏が指揮官に就任。教え子のリシャルリソンを獲得し、アデモラ・ルックマンがローン移籍から復帰した。

ただ、攻撃面とは対照的に守備面では不安が残る。アシュリー・ウィリアムズとフィル・ジャギエルカのコンビは良いプレーを続けているが、マイケル・キーンは先発としては使えないレベルに留まっている。21歳のメイソン・ホルゲートはまだ発展途上の選手であり、望まれているレベルまで到達出来るか判断しかねる。

最後の砦ジョーダン・ピックフォード頼みにしないためにも、守備陣を強化が必要だ。スウォンジーのアルフィー・モーソンのような選手が必要かもしれない。


フラム

補強ポイント:フォワード(FW)

主な補強選手:
ジャン・セリ
アンドレ・シュールレ など

スラヴィシャ・ヨカノビッチ監督は静かだが、素晴らしいオフシーズンを送っている。契約満了のライアン・フレデリックスはウェストハムへ移籍したため、サイドバックの補強は必要だ。恐らくヤングボーイズに所属するケビン・ムバブがトップターゲットになるだろう。ジャン・セリは中盤の補強に最適な人材で非常に重要な契約と評価できる。

課題は得点力だ。ニューカッスルから期限付き移籍で獲得していたアレクサンダル・ミトロビッチは期限満了で退団した。アンドレ・シュールレを期限付き獲得したものの、昨季重要な役割を担っていた同選手との再契約は必要不可欠だ。


ハダースフィールド・タウン

補強ポイント:なし

主な補強選手:
ヨナス・レッスル
テレンス・コンゴロ
フローラン・ハデルジョナイ
ジュニーニョ・バクナ
ラマダン・ソブヒ
アダマ・ディアカビ
エリック・ドゥルム など

すでに新シーズンに向けた準備は完了しているだろう。レッスル、コンゴロ、ハデルジョナイを完全移籍で獲得。降格したストークからラマダン・ソブヒを補強した。デビッド・ワグナー監督は昨季と同様にあまり有名出ない選手をスカッドに追加している。

バクナは中盤に技術力を注入出来るだろう。ディアカビは将来性豊かなプレイヤーで1000万ポンド(約14億5000万円)は魅力的な価格だ。

ハダースフィールドは賢明なクラブだ。昨季は選手の「個」では生き残れないレベルにいたが、「チーム」としてまとまり残留を果たした。ワグナー監督はチームの和を乱す選手を望んでいないはずだ。スター選手よりも選手層や戦術的オプションとなる選手の方が重要視されるだろう。


レスター・シティ

補強ポイント:フォワード(FW)

主な補強選手:
リカルド・ペレイラ
ジョニー・エバンス
ジェームス・マディソン など

時間が経過するにつれて輝きを放つ移籍市場になるかもしれない。ダニー・シンプソンに代わってペレイラ、退団したロベルト・フートに代わりエバンスを獲得した。賢く迅速にマディソンの獲得に成功した点も評価できる。

しかし、問題はリヤド・マフレズが抜けた穴をどう塞ぐかだ。デマレイ・グレイは一つの選択肢だが、マンチェスター・シティから受け取った移籍金6000万ポンド(約87億円)をどう運用するかが鍵となる。

マディソンは創造的なプレーでチームを助けるだろうが、マフレズと同じようなプレーできない。おそらくクロード・ピュエル監督は一人の選手の輝きに依存しないようなチームを再建しようとしているのだろう。


リバプール

補強ポイント:センターバック(CB)

主な補強選手:
アリソン・ベッカー
ファビーニョ
ナビ・ケイタ
ジェルダン・シャチリ など

デヤン・ロブレンには申し訳ないが…リバプールはまだCBが必要だ。(今年1月に加入した)フィルジル・ファン・ダイクに加え、GKアリソンの補強で守備陣は大きくレベルアップした。

しかし、プレシーズンでジョエル・マティプが負傷し、ジョー・ゴメスが頼りなさを露呈させたCB陣はいまだ不安が残る状態だ。他ポジションでは的確な補強で戦力アップしているものの、CBの獲得は必要不可欠だろう。


マンチェスター・シティ

補強ポイント:セントラルミッドフィルダー(CMF)

主な補強選手:
リヤド・マフレズ など

プレミアの昨季王者は補強の必要性をあまり感じていないだろう。マフレズの獲得に成功したことで欧州屈指の攻撃陣がさらに厚みを増している。昨季は怪我で離脱していたベンジャミン・メンディが復活すれば、各ポジションに穴がない完全無欠のスカッドが完成する。

それでも指揮官ジョゼップ・グアルディオラは、今夏チェルシーに移籍したジョルジーニョの獲得を狙っていた。ファビアン・デルフはフェルナンジーニョの控えとして十分に機能するだろうが、盤石の体制を築くためにはもう一人CMFを獲得したいところだろう。


マンチェスター・ユナイテッド

補強ポイント:センターバック(CB)

主な補強選手:
リー・グラント
ディオゴ・ダロット
フレッジ など

これまで大金を使って多くの選手を補強してきたジョゼ・モウリーニョ監督だが、さらに移籍市場で選手補強が必要だと訴えている。今夏に獲得成功したディオゴ・ダロットとフレッジはすでに負傷。守備陣の選手層には不安が残る状態だ。

トッテナムからトビー・アルデルベイレルトの獲得を目指しているものの、ダニエル・レビー会長との交渉は難航中。獲得に失敗したとしても、アルデルベイレルトと同レベルのCBの補強は必要不可欠だ。


トッテナム・ホットスパー

補強ポイント:フォワード(FW)、攻撃的ミッドフィールダー(AMF)

主な補強選手:
なし

誰も出ていかないが、誰もやってこない。昨季から何も変わっていない状態だ。放出の噂があるトビー・アルデルベイレルト、ダニー・ローズ、ムサ・デンベレは現時点で取引完了していない。さらに、獲得候補に挙げられていたウィルフレッド・ザハやアントニー・マルシャルは高額すぎるとしてリスト外となったようだ。

トッテナムに必要な補強ポイントはFWかAMFのバックアッパーだ。他の強豪クラブと争うのであれば、ハリー・ケインかクリスティアン・エリクセンに代わる、信頼に値する控え選手が必要不可欠だ。ただ、予算の都合上、どちらか一方の獲得になる可能性が高いだろう。

マウリシオ・ポチェッティーノ監督は記者会見で「補強がある」と約束したが、果たして限られた資金で望み通りの補強は叶うのだろうか。


ニューカッスル・ユナイテッド

補強ポイント:ミッドフィルダー(MF)、フォワード(FW)

主な補強選手:
ファビアン・シェア
キ・ソンヨン など

ラファエル・ベニテス監督は今季も必死にゴールを奪う戦略を立てなければならないだろう。サロモン・ロンドンへ提供できるチャンスの数が絶対的に少ない状況だ。

新しいストッパーが必要なのはもちろんだが、キ・ソンヨンが加入することを加味しても、ミッドフィルダーの補強は必要だろう。誰かが1シーズンを通して最低10ゴールを決めなければならない。

28日の報道によれば、ブンデスリーガのマインツから武藤嘉紀を獲得したようだ。ただ、彼はブンデスリーガで1シーズン8ゴール以上を奪ったことがない選手だ。


サウサンプトン

補強ポイント:フォワード(FW)

主な補強選手:
アンガス・ガン
ヤニク・べステルゴーア
スチュアート・アームストロング
モハメド・エルユヌシ など

サウサンプトンは良い夏の移籍市場を過ごしている。層の薄かったCBにヤニク・べステルゴーアを獲得し、GKには有望株のアンガス・ガンを補強。ただ、昨季降格圏ギリギリの17位で残留を果たしたチームにとって全てのポジションで強化が必要だ。

昨シーズンの主な問題は得点力不足。昨季6得点を記録したドゥサン・タディッチはアヤックスへ売却され、チャーリー・オースティンとマノロ・ガッビアディーニには期待できないだろう。夏の移籍市場が閉まる前に何としてもセンターフォワードを獲得したい。


ワトフォード

補強ポイント:フォワード(FW)

主な補強選手:
ベン・フォスター
マルク・ナバーロ
アダム・マジーナ
ケン・セマ など

例年に比べると控えめな夏の移籍市場を過ごしているといえる。ベン・フォスターを再獲得し、ジェラール・デウロフェウは完全移籍で獲得。エスパニョールからマルク・ナバーロ、ボローニャからアダム・マジーナを補強し、いつものようにローンから数人の選手が帰ってきた。そのうちの一人アイザック・サクセスも戦力として起用されるかもしれない。

しかし、大きな問題はハビ・グラシア監督がアンドレ・グレーをどのようにプレーさせるかだ。昨季は信頼を与えて31試合に出場させたが、わずか5得点。トップスコアラーはMFのアブドゥライェ・ドゥクレであった。フォワードの補強が必要な証明になるだろう。


ウェストハム・ユナイテッド

補強ポイント:なし

主な補強選手:
ウーカシュ・ファビアンスキ
ライアン・フレデリックス
イサ・ディオプ
ファビアン・バルブエナ
ジャック・ウィルシャー
フェリペ・アンデルソン
アンドリー・ヤルモレンコ など

補強は完了した。ウェストハムは大金を費やして注目のスター選手を獲得した。今季の主役にならなければいけないほどの大型補強だ。

ただ疑問残る。ヤルモレンコとアンデルソンはどちらも右サイドハーフを主戦場とする。マイケル・アントニオももちろん同じポジションである。さらに、ウィルシャーのポジションにはマーク・ノーブルがいる。ポジションが被る選手が多いのだ。

たしかに全ての懸念に対処する補強は敢行した。右サイドバックのフレデリックスも素晴らしい補強だろう。だが、マヌエル・ペレグリーニ監督は最適なバランスを見つけるのに最低数ヶ月は要するだろう。ともかく、全てはプレシーズンに見えてくるだろう。


ウルバーハンプトン・ワンダラーズ

補強ポイント:センターバック(CB)

主な補強選手:
ルイ・パトリシオ
ウィリー・ボリー
ジョニー
ジョアン・モウティーニョ
ラウール・ヒメネス など

昇格組であるが、すでにプレミアリーグで戦う準備は整っているように見える。ポルトガル代表のルイ・パトリシオとジョアン・モウティーニョを獲得するなど、大型補強を敢行。ポルトガル人選手をさらに増やしている。

しかし、新シーズンを迎えるにあたってさらに選手層が必要だろう。ヌーノ・エスピーリト・サント監督は3バックを採用している。つまり最低でも3人のCBが必要となる。ウィリー・ボリー、コナー・コーディ、ライアン・ベネットのトリオを上回るCBを獲得できれば理想だ。