プレミアリーグ

プレミアリーグに潜む“構造的罠”とは?ビッグ6の壁を越えた先に待つ地獄

アーセナル 写真:アフロスポーツ

イングランド1部のプレミアリーグで、リバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル、トッテナム・ホットスパーを総称する「ビッグ6」という呼び名には、少なからず異論が存在する。しかし、2016年から2022年までの6年間で、彼らが4度も上位6位を独占した事実は、その圧倒的な支配力の強さを物語っている。

この強豪6クラブの存在は、他の中堅クラブにとって見えない“ガラスの天井”として立ちはだかる。時にその壁を打ち破るクラブが現れても、多くは長続きせず、やがて本来のポジションへと押し戻されてしまうのが現状だ。

実はこの構造の裏側には「圧倒的な資金力の差」以外にも、簡単には覆せない“戦術的な罠”が潜んでいる。なぜプレミアリーグの覇権を崩すことがこれほどまで難しいのか。ここでは、その理由を戦術的視点から紐解いていく。


弱者の兵法:カウンターという最適解

中堅クラブが「ビッグ6」の牙城を脅かすレベルまで順位を上げるための常套手段、それが「カウンター攻撃の完成」だ。守備を固め、速攻で相手の隙を突くというバランス(スイートスポット)を見つけることで、強豪から大金星を奪い、7位前後まで一気に駆け上がることができる。

過去10年を振り返ると、レスター・シティ、バーンリー、ウルバーハンプトン・ワンダラーズ、ウェストハム・ユナイテッド、アストン・ビラ、ノッティンガム・フォレストといったクラブはいずれも、ボール保持を前提としない「受動的(リアクティブ)」なサッカーで上位進出を果たしてきた。今シーズンで言えば、「ビッグ6」を脅かしているブレントフォードがまさにその典型だろう。彼らの平均ポゼッション率はおよそ46%にとどまり、リーグ全体では下から数えた方が早い。

この戦略を成功させるには、守備構築に優れた監督、例えばクラウディオ・ラニエリやヌーノ・エスピリト・サント、ショーン・ダイチのような存在が不可欠だ。さらに、FWジェイミー・ヴァーディやMFジャロッド・ボーウェンのように、圧倒的なスピードを持つアタッカー、そして欧州大会に出場しないことによる“日程面での余裕”も大きな武器となる。だが、本当の地獄は「成功を収めた後」に待っている。


上位進出後に待ち受ける「戦術的カルチャーショック」

プレミアリーグで旋風を巻き起こし、上位争いに加わるようになると、当然ながら対戦相手の警戒は一段と強まる。そして、彼らは新たな“リスペクト”の形として「あえてボールを持たせる(ポゼッションを譲る)」という戦術的選択を取るようになる。

しかし、ボールを持たないことを前提に設計されてきたチームにとって、これは致命的な状況である。オープンスペースに走り込んでいたアタッカーは、極端に狭いスペースでのプレーを強いられ、ミッドフィルダーは引いて守る相手に対して自らボールを動かし、崩しのアイデアを提示しなければならない。これは選手たちにとって単なる戦術変更ではなく、チーム全体にとっての“カルチャーショック”である。

さらに追い打ちをかけるのが、欧州大会への出場である。上位フィニッシュを果たせば、翌シーズンはUEFAチャンピオンズリーグ、UEFAヨーロッパリーグ、UEFAカンファレンスリーグといった舞台が待っている。年間の公式戦は最低でも6試合、多ければ15試合程度増加する可能性がある。実力以上の結果を残したクラブは、主力14~15人に依存する傾向が強く、過密日程による肉体的消耗に耐えきれない。

この「欧州大会によるスケジュールの過密化」と、対戦相手から強要される「受動的から主体的への戦術転換」という二重の圧力は、クラブを内部から蝕む致命的なカクテルになり得る。事実、2015/16シーズンに奇跡の優勝を果たしたレスターは翌年12位に沈み、ウェストハムもUEFAカンファレンスリーグ制覇の翌シーズン、リーグ戦では勝ち点40で残留争いに巻き込まれた。

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名前:秕タクオ

国籍:日本
趣味:サッカー、UNO、100均巡り

サッカー観戦が日課のしがないサラリーマンです。かれこれ人生の半分以上はサッカー観戦に明け暮れ、週末にはキルケニー片手にプレミアリーグやJリーグにかじりついています。

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