2023JリーグYBCルヴァンカップ決勝が11月4日に行われ、アビスパ福岡が浦和レッズに2-1で勝利した。
前半に挙げた2ゴールが物を言い、クラブ史上初のタイトルを手にした福岡。アジア最強クラブを決めるAFCチャンピオンズリーグを今年5月に制し、2023明治安田生命J1リーグでも3位につける浦和を相手に、試合を掌握してみせた。
ここでは国立競技場(東京都新宿区)にて繰り広げられた今回の激闘を振り返るとともに、福岡の勝因や浦和の敗因を論評する。
福岡vs浦和:試合展開
キックオフ直後から互いにロングボールを蹴り合うなか、福岡が持ち前の堅守速攻で試合の主導権を握る。
前半5分、浦和GK西川周作のゴールキックを福岡が自陣で跳ね返し、速攻を仕掛ける。福岡のMF紺野和也が敵陣ペナルティエリア右隅へ侵入し、そこからグラウンダーパスを送ると、これにMF前寛之が反応して先制ゴールを挙げた。
リードを手にした福岡は、最前線からの守備と自陣への撤退守備を巧みに使い分け、浦和の攻撃を封じる。浦和は敵陣へ攻め上がったDF酒井宏樹や、ホセ・カンテ(最前線)と髙橋利樹(右サイドハーフ)の両FWへのロングパスで局面打開を図ったものの、福岡の練度の高い守備を崩すには攻撃が単調すぎた。
前半29分には浦和MF岩尾憲のロングパスに、福岡の最終ラインの背後を狙った酒井が反応したが、同選手がこのボールをコントロールしきれず。この攻撃も不発に終わったことで、福岡が落ち着きを取り戻した。
浦和の調子が上がらないまま迎えた前半アディショナルタイム。福岡が自軍のコーナーキックのこぼれ球から2次攻撃を仕掛け、紺野が敵陣左サイドからゴール前へグラウンダーパスを送る。このボールにDF宮大樹が左足で合わせ、福岡に追加点をもたらした。
福岡の守備強度は落ちず
後半開始直後も福岡の堅守速攻が冴え渡り、敵陣へ攻め上がったDFドウグラス・グローリが、同10分にペナルティエリア内で浦和のDFマリウス・ホイブラーテンに倒される。これにより福岡はPKを獲得したが、FW山岸祐也のシュートが浦和GK西川に防がれ、リードを3点に広げることはできなかった。
土俵際で踏ん張った浦和は、途中出場のMF明本考浩が後半22分に酒井のロングパスに反応し、追撃のゴールをゲット。同16分までに4人の選手交代を行ったマチェイ・スコルジャ監督の起用に応えた。
1点差になってからも福岡は攻め込まれたが、長谷部茂利監督が疲労の色が濃い選手をタイミング良く交代させたことで、守備の強度が落ちず。試合終盤にもカウンターを繰り出せたことで、防戦一方とはならなかった。8分間の後半アディショナルタイムも乗り切り、歓喜の瞬間を迎えている。
美しかった[5-2-3]の守備
福岡の長谷部監督は、この大一番に向け[5-2-3]の隊形からのプレスと、[5-4-1]の布陣による撤退守備を自軍に落とし込み。この守備に浦和は苦しめられた。
福岡の基本布陣は[3-4-2-1]だったが、浦和がGK西川や最終ラインからパスを繫ごうとするやいなや、前と紺野の両MF、及びFW山岸で3トップを形成。基本布陣[4-2-3-1]の浦和の2ボランチの一角、岩尾を山岸が捕捉したほか、前と紺野が浦和の2センターバック(ホイブラーテンとDFアレクサンダー・ショルツ)に睨みをきかせた。
3トップを起点とする守備でボールを回収しきれない場面では、前と紺野の2シャドーがサイドのレーンへ移動。これにより[5-4-1]の堅固な守備ブロックが築かれ、浦和に付け入る隙を与えなかった。
自身の背後を狙う浦和MF伊藤敦樹と早川隼平(後半開始前にMF安居海渡と交代)の立ち位置を気にかけながら、ホイブラーテンとショルツのボール運搬を妨害した前と紺野の守備は、秀逸のひと言。この2人がサイドのスペースもマメに埋めたことで、DF森山公弥とMF井手口陽介(2ボランチ)の負担が軽減された。後半開始からは途中出場のMF金森健志と紺野の2シャドー、前と井手口の2ボランチに。その後も選手配置が変わったが、大きな破綻なく試合を終えている。
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