Jリーグ

「五輪&W杯男」41歳MF稲本潤一、J2相模原と共に上げる復活ののろし!

稲本潤一(2006 FIFAワールドカップ)写真提供:Gettyimages

明治安田生命J2リーグは7月17、18日に第23節を終え、東京五輪による中断期間に入った。次は8月9日(月曜)に第24節の全カード(11試合)の開催が予定されている。

現在のJ2は、首位の京都サンガから8位のV・ファーレン長崎までが勝点8差にひしめく大混戦。一方でJ3降格枠を回避するための残留争いも熾烈を極めている。コロナ禍によって降格制度がなかった2020シーズンの分も含めて、例年2つだった降格枠が4つに倍増しているのだ。第23節終了時点(全42節)で、危険水域にあるのは以下の7チームとなる。

  • 16位:松本山雅FC:勝点22(得点18失点37得失点-19)
  • 17位:栃木SC:勝点21(得点21失点30得失点-9)
  • 18位:ザスパクサツ群馬:勝点21(得点20失点35得失点-15)
  • 19位:ギラヴァンツ北九州:勝点19(得点17失点35得失点-18)
  • 20位:愛媛FC:勝点19(得点22失点41得失点-19)
  • 21位:大宮アルディージャ:勝点18(得点21失点30得失点-9)
  • 22位:SC相模原:勝点16(得点12失点30得失点-18)

このうち5チームでは、すでに成績不振による監督交代も行われた。また、13位のファジアーノ岡山、14位のツエーゲン金沢、15位のレノファ山口FC(3チームとも勝点26)もまだまだ油断を許さない状況。現状では、勝点29を積み上げている12位のブラウブリッツ秋田以上が安全圏内と言えるだろう。

ここでは、現在J2最下位に位置する相模原に着目し、ここから浮上する鍵を紐解きたい。五輪期間もあっての活発な移籍活動の動き、監督交代によるプレースタイルの変化、そして同チームの改革と共に復活の狼煙(のろし)を上げるかつての五輪とW杯のレジェンド、41歳の元日本代表MF稲本潤一の現在地について詳しく見ていこう。


SC相模原FW澤上竜二(セレッソ大阪時代)写真提供:Gettyimages

夏の移籍市場で大量6人獲得の相模原

Jリーグは7月16日から8月13日までが第2登録期間(夏の移籍市場)となる。今年は東京五輪による中断期間が重なったことで、J1からJ3の全カテゴリーで例年よりも活発な移籍活動が行われている。

J2の残留を争う下位勢では、栃木がサガン鳥栖から元日本代表FW豊田陽平を完全移籍で獲得する大型契約を成立させた。北九州も横浜F・マリノスからMF椿直起(今季前半は豪州メルボルン・シティへ期限付き移籍)を昨季に続いてレンタル移籍で復帰させている。

そのなか相模原は、ここまで時系列順に、FW兒玉澪王斗(サガン鳥栖)DF藤原優大(浦和レッズ)MF高山薫(大分トリニータ)FW澤上竜二(セレッソ大阪)MF成岡輝瑠(清水エルパルス)DF木村誠二(FC東京)と大量6選手をいずれもJ1からのレンタル移籍で獲得。夏の移籍市場前に「育成型期限付き移籍」で加入した兒玉と藤原に関しては、加入後すぐに先発起用され、最下位からチームが浮上するための鍵を握る存在となっている。


SC相模原「スタッツに見えるプレースタイルの変化」作成:筆者

高木新監督による改革で着実に変化

相模原は2014〜2020シーズンまではJ3に所属。昨季J3では、第16節から最終節まで19戦無敗(10勝9分)の大逆転で2位へ浮上し、クラブ史上初のJ2昇格を掴み取った。初めてのJ2で前代未聞のJ3降格枠4チームという厳しいレギュレーションに苦しめられるのは当然である。

そして初のJ2における今シーズン、6試合連続未勝利となった第16節終了後(2勝5分9敗の勝点11の最下位)にチームをJ2昇格に導いた三浦文丈前監督は解任となった。後任には、かつて横浜FCや長崎をJ1昇格へ導いた高木琢也監督が招聘されたが、監督交代後もチームは3連敗。その後の2試合連続の引き分けも含めて前体制から11試合未勝利が続いた。

12試合ぶりの勝利を挙げたのは第22節、敵地で3位につけるFC琉球戦(1-0)だ。この勝利の伏線は高木監督の就任時から少しずつ見えていた。これまでリーグ戦で高木監督が指揮を執ったのは7試合で、1勝2分5敗の勝点5と依然として残留には厳しい成績ではある。しかし、守備に関しては7試合で7失点、直近4試合に限れば2失点で2完封と、守備の立て直しに定評がある高木監督の確かな手腕が現れている。

上記にまとめた相模原のスタッツ。昨季J3での相模原は、優勝したブラウブリッツ秋田に次いで「ボール支配率やパス本数の数値が低く、クリアの数が多い」という「J3で勝つための戦い方」を貫いてJ2昇格を勝ち取っている。秋田は昨季J3での戦いを踏襲してJ2でも躍進中だ。相模原は昨季チーム最多13ゴールを挙げたFWホムロが今季途中に家庭の事情で退団した影響もあり、リアリスティックに結果を求めるだけのスタイルでは、J2の舞台では通用していないのである。

SC相模原「監督交代前後のスタッツ」作成:筆者

高木監督はこの辺りの修正を行ったようで、それは上記のスタッツにもはっきりと現れている。クリアの数が2割以上減り、パス本数が50本上がったことで、ボール支配率は5%も上昇しているのだ。

守備が整備され、ボールポゼッションの安定をチームとして体現できてきた相模原。退団したFWホムロが個で解決していた得点力の部分も組織的な攻撃で解消していきたいところだ。清水から育成型レンタル移籍で獲得した若手MF成岡は技術が高く、世代別代表経験が豊富な選手である。この“高木改革”を後押しする存在となるだろう。

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