
決勝トーナメント序盤から続いたVAR論争
大会序盤から中盤にも、テクノロジーとルール変更が絡む問題が発生した。決勝トーナメント1回戦のブラジル対日本(6月30日/2-1)では、日本が1-0でリードした後半11分、ボールがブラジル選手に当たりゴールラインを割ったように見えたシーンで、主審が見落とし、ゴールキックとした。今大会で一部導入された「誤って与えられたCKの修正」というVAR規定が適用されなかった点が批判を呼んだ。
決勝トーナメント2回戦のアルゼンチン対エジプト(7月8日/3-2)では、エジプトのゴールがはるか手前のファウルで取り消され、遡り基準を巡る異議申し立てが起きた。また、ポルトガル対クロアチア(7月3日/2-1)では、クロアチアの同点ゴールが、映像でも判別しにくいほどの微妙なオフサイドと判定され、VARの末に取り消しになった。ボール内蔵センサーが検知した接触によるもので、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は「サッカーの喜びを殺す」と痛烈に批判した。

アメリカFWバログンのレッドカード撤回と政治的波紋
決勝トーナメント1回戦のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(7月2日/2-0)では、アメリカ代表FWフォラリン・バログンが相手の足を踏んだとしてVARでレッドカードを受けた。
しかし次戦の出場停止が撤回され、ベルギー戦(7月7日/1-4)に先発出場。トランプ米大統領のFIFAへの介入が疑われ、世界中から「前代未聞の政治介入」と批判を浴び、FIFAジャンニ・インファンティーノ会長の政治的中立原則違反としてIOC調査の可能性も浮上した。違反が認定されれば、罰金や最長2年間の活動禁止処分が科される可能性がある。
人間の審判はもういらないのか。将来への警鐘
今大会ではコーナーキック判定の一部VAR介入や5秒ルール、交代10秒制限、給水と体温調整のためのハイドレーションブレークなども導入され、試合の迅速化を図った。これらは誤審減少とスピードアップを狙う一方で、ミリ単位の判定や遡りチェックが「サッカーの情熱を損なう」との声も多い。
元国際審判員の家本政明氏は、朝日新聞取材(6月30日)で当初「判定に一貫性あり高レベル」と評価したが、大会が進んだ7月9日のテレビ東京系『FOOT×BRAIN』にビデオ出演した際には「このままでは副審や第4審判員がいなくなるかもしれない」と警鐘を鳴らした。
テクノロジーは公平性を高める一方で、人間審判の裁量余地を狭めている。センサー搭載球や半自動オフサイドは正確性を提供するが、ファンからは「完璧主義がドラマ性を奪う」との指摘が出ている。将来的にAI審判導入や人間審判削減の議論が高まる可能性はあるが、完全な排除はサッカーの不確実性や人間ドラマという本質を損なうとの見方も根強い。
これらの事例は、テクノロジーと人間のバランスを再考させるものとなった。FIFAは判定のさらなる自動化を進めるのか、一度立ち止まって透明性向上に取り組むのか。北中米W杯は、未来のサッカーに大きな問いを投げかけた。
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