
2025明治安田J1リーグを16位で終えた名古屋グランパス。今シーズンはクラブワースト記録に並ぶ開幕6試合勝ちなしと最悪のスタートを切った。最終的には辛うじてJ1残留を決めたものの、リーグ戦を通して苦戦を強いられた印象は否めない。加えて、天皇杯(JFA全日本サッカー選手権大会)やYBCルヴァンカップなどの主要カップ戦でもタイトルを逃しており、不本意なシーズンとなってしまった。
11月12日には4シーズンにわたってチームを率いてきた長谷川健太監督との契約満了を発表。さらに12月18日には、かつてサンフレッチェ広島(2006-2011)や浦和レッズ(2012-2017)、北海道コンサドーレ札幌(2018-2024)などで指揮を執ってきたミハイロ・ペトロヴィッチ氏が新監督に就任することが決定したと発表された。名古屋はここから、新たな変革期に突入しようとしている。
同氏は、就任初年度の補強で前所属クラブの選手を積極的に迎え入れる傾向があることでも知られている。過去には、広島から浦和に移籍した槙野智章氏や森脇良太氏、浦和から札幌に移籍したMF駒井善成などがおり、彼らはサッカーファンから“ミシャ・チルドレン”と称されてきた。
ここでは、名古屋に新たに迎え入れられる可能性のある“ミシャ・チルドレン”(※1)候補4選手を紹介していく。
※1:「ミシャ」はミハイロ・ペトロヴィッチ氏の愛称
※選手の所属クラブ名は2025年12月23日の情報に基づく。

田中駿汰(セレッソ大阪)
1人目は、セレッソ大阪(以下、C大阪)の背番号「10」を背負うMF田中駿汰。大阪体育大学から2020シーズンに北海道コンサドーレ札幌に加入。札幌時代は主に3バックの中央や右で起用され、足元の技術の高さと優れたパスセンスを武器に、攻撃のスイッチ役として存在感を発揮してきた。ビルドアップ能力に優れるそのプレースタイルは、ペトロヴィッチ氏が志向する理想のセンターバック像にも合致しており、同氏のチルドレン候補の一人と言える。
また、札幌加入初年度にはボランチとしてのプレー経験もあり、中盤からの正確なパス一本でチャンスを演出。守備面でも対人の強さやインターセプト能力を示し、攻守において貢献していた。2023シーズンからはC大阪へ完全移籍。2024シーズンは主にボランチで出場しており、J1リーグで37試合に出場し、3ゴール4アシストをマーク。出場時間3,287分はキャリアハイとなり、チームの中心選手として活躍した。
今シーズンも同様の活躍を期待されていたが、4月25日に行われたJ1第12節東京ヴェルディ戦の接触プレーで左膝前十字靭帯部分損傷および左大腿骨内外挫傷を負った影響もあり、今シーズンは29試合3ゴール、出場時間は2,281分にとどまった。それでも、ペトロヴィッチ氏が補強をリクエストする場合、真っ先に名前が挙がる存在であることは間違いない。

中村桐耶(北海道コンサドーレ札幌)
2人目は元FWで、アカデミー時代は“札幌のイブラヒモビッチ”とも称されたDF中村桐耶。186cmの長身を活かした空中戦の強さに加え、スピードと足元の技術も兼ね備える攻撃特化型のDF。これまではセンターバック(CB)や左サイドを主戦場に活躍してきた。
2019シーズンに札幌のアカデミーからトップチーム昇格を果たし、初年度はリーグ戦出場こそなかったものの、シーズン途中で日本フットボールリーグ(JFL)のHonda FCに期限付き移籍し、2020シーズンまでプレーした。
期限付き移籍から復帰した2021シーズンも出場機会はカップ戦に限られ、厳しい状況に置かれていた。しかし、2022シーズンにリーグ戦12試合に出場すると、翌2023シーズンには31試合1ゴール3アシストを記録し、徐々に頭角を現し始める。チームがJ2降格となった昨シーズンも、自身はJ1で35試合2アシストをマーク。出場試合数はキャリアハイとなった。
出場した試合では、左サイドから右サイドへ針の穴を通すような対角のロングパスや、高速ドリブルによる単独突破など、一人で局面を打開するシーンも多く見られた。対戦相手のサポーターからも称賛の声が上がるなど、印象的な活躍を見せている。
来季で26歳を迎える中村は、サッカー選手として決して若手とは言えない年齢に差し掛かっている。ペトロヴィッチ氏が好む攻撃的で希少性の高い左利きCBという点を踏まえれば、条件次第では名古屋へ環境を変える可能性も十分に考えられるだろう。

駒井善成(横浜FC)
3人目は、ペトロヴィッチ氏と9シーズンにわたって共闘し、最も同氏のサッカーを熟知しているであろう横浜FCのMF駒井善成。
京都サンガのアカデミー出身である駒井は、2011シーズンにトップチームへ昇格。5シーズンプレーしたのち、2016シーズンに浦和レッズに完全移籍し、ペトロヴィッチ氏の下で2シーズンを過ごした。さらに2018シーズンには、同氏が札幌の新監督に就任したタイミングで同クラブへ移籍。以降、7シーズンにわたって共にプレーしてきた。
ルーキー時代は切れ味鋭いドリブルを武器に右サイドを主戦場としていたが、ペトロヴィッチ体制が成熟した2021シーズン以降は、豊富な運動量と的確なポジショニングを評価され、ボランチで起用される機会が増加。ボランチに転向して以降も、局面で見せる鋭いドリブルによる持ち上がりは健在で、試合の流れを変える存在感を放っている。
名古屋のボランチにはMF稲垣祥を中心にMF森島司やMF椎橋慧也といった実力者が揃っている。ただし、ペトロヴィッチ氏の戦術を熟知する駒井が加われば、戦術浸透のスピードが加速することは間違いない。さらに、シャドーやウィングバック(WB)など複数ポジションをこなせる汎用性を踏まえれば、チーム全体の完成度を一段階引き上げる存在となり得るだろう。

スパチョーク(北海道コンサドーレ札幌)
4人目は“タイの至宝”とも称される札幌のMFスパチョーク。
シャドーを主戦場とするスパチョークは、ブリーラム・ユナイテッドやスリン・シティなどタイ国内クラブでの活躍を経て、2022シーズンから札幌でプレーしている。相手の重心を巧みに外すドリブルや、ゴールに直結するラストパス、さらに味方とのパスワークで中央を突破できるアタッカーだ。
2022シーズン夏に札幌に加入すると、瞬く間にペトロヴィッチ氏のサッカーに順応。同年はJ1リーグで7試合3アシスト、翌2023シーズンは24試合7ゴール1アシスト、2024シーズンは19試合2ゴール5アシストと数字以上に多くのチャンスに関与し、同氏の戦術との高い親和性を示してきた。
一方で、ペトロヴィッチ氏が退任した今シーズンの札幌では、J2リーグで31試合2ゴール3アシストと持ち前のポテンシャルを考えれば物足りなさの残る成績にとどまっている。それだけに、ペトロヴィッチ氏がシャドーの補強をリクエストする場合、真っ先に名前が挙がる存在がスパチョークであっても不思議ではないだろう。
コメントランキング