
応援する側にもデメリット
ドイツではサッカーは国民的スポーツであり、ブンデスリーガの各クラブはJリーグと比べてはるかに資金力がある。スタジアムにヒーティングシステムがあるのも当たり前だ。しかし、Jの雪国クラブのホームスタジアムすべてにヒーティングシステムを備えることは資金的に不可能だろう。「ドイツで可能なのだから日本でもできる」というのは暴論であることが分かる。
それでも日本で秋春制を強行するというのなら、雪国クラブはJリーグ側に損失補填や練習場の整備費、除雪費などを求めてもいいだろう。雪国クラブにとって秋春制のメリットは皆無で、デメリットしかないのは、先の新潟の姿勢からも明らかだ。
2月10日、福島市土湯温泉町で2度の雪崩が発生。旅館の宿泊客や従業員ら40人が孤立状態となり、ヘリコプターで救助された。その現場は、福島ユナイテッドのホームスタジアム「とうほう・みんなのスタジアム」から約8キロしか離れていない。
仮に同時期に試合の日程が組まれ、アウェイサポーターが宿泊していたとしたらと想像するだけでもゾッとする。また、クルマで移動するサポーターが立ち往生に巻き込まれる危険性もある。ここまでくると“応援するのも命懸け”だ。
雪中での試合として記憶されるのは、1987年12月13日に国立競技場で行われたトヨタカップのポルト(ポルトガル)対ペニャロール(ウルグアイ)や、1998年1月8日に同じく国立競技場で行われた第76回全国高校サッカー決勝の東福岡(福岡県代表)対帝京(東京都A代表)が有名だ。
雪の中で試合などしたことがないであろう両チームの選手には賛辞を贈るしかないが、試合内容に触れれば、いずれもパスが通らずボールの蹴り合いに終始し、お世辞にも「名勝負」とは呼べないものだった。秋春制移行を推し進めた理由の1つに「試合内容の向上」というものがあったが、額面通りには受け取れないのだ。

究極の二択に迫られたJリーグ
「春夏秋冬」の四季ではなく、夏と冬しかない“二季”に例えられるほど、昨今の日本の気候は変化しつつある。
そんな中Jリーグは、夏場の酷暑下での試合を強いて選手や観客を熱中症の危険に晒すか、冬場に試合を行い雪国クラブやサポーターに金銭的負担や移動の際に生じる危険を強いるのか、究極の二択を迫られ、後者を選択した。
とりあえず、決まってしまったものは仕方ない。各地の雪害のニュースに触れ、秋春制移行を断行した野々村チェアマン以下Jリーグ上層部は、来冬が記録的な暖冬になることを祈っているのではないだろうか。仮に今冬のような豪雪となれば、秋春制が抱える数多くの問題点が可視化され、批判に晒された上で「やはり春秋制に戻そう」という声が上がることは必至だからだ。
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