Jリーグ 湘南ベルマーレ

設計が甘すぎる湘南ベルマーレのビルドアップ。敗北のG大阪戦を検証

大野和成(左)鈴木雄斗(右)写真:Getty Images

2024明治安田J1リーグ第17節の全10試合が、5月31日から6月2日に各地で行われた。湘南ベルマーレは6月1日、本拠地レモンガススタジアム平塚でガンバ大阪と対戦。最終スコア1-2で敗れている。

第16節ジュビロ磐田戦からの連敗により、未だにJ2リーグ降格圏の18位に沈んでいる湘南。G大阪戦で浮き彫りになった課題とは何か。ここでは今節の試合を振り返るとともに、この点について論評していく。


湘南ベルマーレvsガンバ大阪、先発メンバー

湘南の攻撃配置が整わず

両チームの基本布陣は、湘南が[3-1-4-2]でG大阪が[4-2-3-1](後半から[4-1-2-3])。キックオフ直後は互いにロングボールを蹴り合い、相手チームの前線からの守備を掻い潜ろうとする意図が窺えた。

湘南は時間の経過とともに攻撃パターンを切り替える。DF大野和成、及び鈴木淳之介と鈴木雄斗の両MFによる3バックを起点にパスを回したが、攻撃配置が整っていないゆえにこれが効果的でなかった。

この試合における湘南のビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)の問題点は、3センターバックの左右を務めた大野と鈴木雄斗がタッチライン際へ開きすぎてしまい、パスコースが減る場面があったこと。湘南が自陣でボールを奪われ、G大阪のFW宇佐美貴史に先制ゴールを奪われた前半29分のシーンがこの典型例だ。

湘南のGKソン・ボムグンがペナルティエリアでボールを保持したこの場面では、右センターバックの鈴木雄斗が自陣後方タッチライン際に立ったため、G大阪のFWウェルトン(左サイドハーフ)に捕捉されている。ここに立つ鈴木雄斗へパスが繋がったとしても、すぐさまウェルトンのプレスに晒されるため、その後パスが繋がる可能性は低かっただろう。3センターバックが極力ペナルティエリアの横幅から出ない立ち位置をとり、外側と内側(左右)どちらにもパスを出せる状況を作るのが望ましい。

また、この場面では同じくセンターバックの鈴木淳之介と大野の距離も開きすぎていたため、ボールを失った直後の守備がしにくい状態に。GKソンの縦パスを相手MF鈴木徳真にカットされたうえ、同クラブFW山下諒也にラストパスを繰り出されると、これを受けた宇佐美への鈴木淳之介の寄せが案の定間に合わなかった。

これらに加え、相手FW宇佐美の後ろに立っていた湘南MF田中聡のポジショニングも曖昧に。宇佐美の斜め後ろでボールを受けようとする意図は窺えたが、左斜めか右斜めのどちらで受けたいのかが曖昧なアクションだったため、GKソンが縦パスを送りやすい状況を作れなかった。

チーム全体としての粗雑な攻撃配置がこの失点の原因であることは明らかであり、特定の選手が槍玉にあげられるべき場面ではないだろう。


大野和成 写真:Getty Images

改善されていない湘南の悪癖

筆者にとって気がかりだったのは、2023シーズンにも浮き彫りになったビルドアップ時の選手配置の悪さを、湘南が改善できていないことだ。

先日のG大阪戦と同じく、湘南の攻撃配置の悪さが顕著だったのが昨季のJ1リーグ第19節(横浜F・マリノス戦)。この試合の2失点目で、当時左ウイングバックを務めていたMF中野嘉大(現横浜FC)が自陣後方タッチライン際でボールを保持したことで、横浜FMのDF松原健のプレスをもろに浴びてしまっている。縦へのパスコースを塞がれた中野は味方GKソンへのバックパスを選んだものの、この時点で横浜FM陣営にパスコースを消されており、湘南のビルドアップは窮屈に。GKソンは味方DF杉岡大暉にボールを渡そうとしたが、この横パスを相手FWヤン・マテウスに奪われ、FWアンデルソン・ロペスのゴールに繋げられてしまった。

この日センターバックを務めた杉岡とウイングバックの中野が、ビルドアップ時にタッチライン際で共存してしまったことも、横浜FMのハイプレスの餌食となった原因と言える。攻撃配置の悪さが昨季の低迷の原因となったにも関わらず、先日のG大阪戦ではこの点に関する改善がほぼ見られず。昨季の横浜FM戦と同じようなミスで失点してしまった。この点を厳粛に受け止め、設計が甘すぎるビルドアップの改善に乗り出さなければ、J2リーグへの降格が現実味を帯びてしまうだろう。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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