プレミアリーグ アーセナル

エメリが大幅にアップグレードさせた、アーセナル5つのこと

アーセン・ベンゲルの後を継ぎ、2018年5月23日からアーセナルで指揮を取っているウナイ・エメリ。昨シーズン、チャンピオンズリーグ(CL)出場圏内を確保できなかったクラブを立て直し、しっかりと上位争いを行えるクラブへと導いている。今回は、そんなエメリが自身の就任から大きく成長させた、アーセナルの5つの部分をご紹介する。


伝統的なアーセナルのスタイル

ベンゲルは流動的にボールと人をシンプルに動かしながら華麗にゴールを奪うことを好んだ。その哲学は、かつてのアーセナルで存分に見ることができただろう。アタッキングサードに1つの美しさを見出していた。エメリはそのスタイルを崩すことなくプレーの優先順位を明確にし、効率を上げることでさらに洗練されたものへとアップグレードさせた。その結果、アーセナルは中堅、下位クラブからの取りこぼしが減り、ビッグクラブとも善戦できるチームへと変貌を遂げている。

2017年にベンゲルの下でリバプールと対戦した試合と2018年にエメリの下でリバプールと対戦した試合では、スタッツにそれが大きく表れた。支配率は約10%上がり、パスの成功率も10%上がっている。それだけでなく、空中戦でも56%の勝率を誇った。


GKからのビルドアップ

アーセナルのようなスタイルを目指すには、最終ラインからのレベルの高い組み立てが必須となってくる。GK、CBがビルドアップに大きくかかわることで相手を押し込み、スペースと時間を前線の選手に提供することができる。ベンゲル政権下では、そのビルドアップに不安を抱えていた。かつて世界最高峰のGKだったチェフも、ビルドアップへの参加には非常に苦労した。彼がつなぐこと諦めて、クリアを選択する回数は日に日に増えていった。このことは、相手に主導権を渡すだけではなく、守備のために帰陣しなければいけないチームメイトへの体力的な負担にもなっていた。

しかし、今シーズンはベルント・レノがいる。前ページと同じく去年と今年のリバプール戦で比較すると、チェフが50%にも満たないパス成功率だったのに対して、レノは85.2%を記録。ロングパスを選択した回数もチェフが22回なのに対してレノは7回と大幅に改善している。それでいてセーブ率も10%近く上回っているのだ。レノの存在は大きいが、エメリはビルドアップに関しても大幅に改善させている。


ポジショニング

2017/2018シーズンのアーセナルは38試合で51失点を記録した。これはバーンリーの39失点やニューカッスル・ユナイテッドの47失点よりも多く、問題は明らかだった。エメリがアーセナルの守備面での脆さの原因をポジショニングと気付くまでにそう時間はかからなかっただろう。ベンゲルの流動的なサッカーは、美しい攻撃を実現させるとともに選手が自身がカバーすべきエリアから離れてしまうという問題も生み出していた。

エメリはアーセナルにポジショニングの規律を植え付けている。リバプール戦での平均ポジションを見ると、ほとんどの選手が自身の立ち位置を厳守していることがわかる。その成果に大きく貢献しているのが新戦力のルーカス・トレイラだ。彼とグラニト・ジャカの中盤構成は安定感をもたらしている。リバプール戦でも、彼ら2人のおかげでリバプールの中盤3枚を低い位置でくぎ付けにすることができた。

彼らがしっかりと与えられた役割をこなすことで、メスと・エジルに自由な時間とポジション取りを提供することができた。エジルはリバプール戦で4つのキーパスを記録している。昨シーズンのリバプール戦ではたった1度のキーパスが4に増えたのだ。


フィニッシュ

美しいサッカーを展開してきたベンゲルだが、フィニッシュの面に関しては批判されることが多かった。しかし、エメリはその点に関しても大幅に修正している。昨シーズンのリバプール戦と比較するとサイドからの攻撃が79%となり、約10%増えている。ミドルレンジからのシュートは75%完結。ボックス内でも75%完結させている。これはベンゲル政権下の数字と比べ大幅に増加している。ベンゲル政権下では前者が55%、後者が45%だ。


メンタリティ

強いチームは試合の勝利を手にし、精神的に強いチームはタイトルを勝ち取る。エメリはここ5年間で3度のヨーロッパリーグ(EL)タイトルを獲得してきた。パリ・サンジェルマンでは2年間で7つの主要タイトルを獲得している。彼がアーセナルの監督に就任したということは、勝利への執着心やタイトルへの欲望を選手に植え付けているということだ。

事実を見ても、アーセナルはここ16試合の公式戦で負けがない。試合の後半における得点数は20とプレミアリーグトップの数字だ。アーセナルの得点の約77%が後半に記録されている。アーセナルは敗北という結果に対して抗うことのできるチームへと生まれ変わった。

昨シーズンのアーセナルはアビッグ6以外のクラブから21のポイントを取りこぼしている。ボーンマス、レスター・シティ、ニューカッスル、ワトフォードなど、いわゆる格下のチームに敗北することも珍しくなかった。

CL出場権を確保するには、そういった格下のクラブから取りこぼさないことが重要だ。エメリのアーセナルは今のところ、ビッグ6と呼ばれるチーム以外には負けていない。これは非常にポジティブな現実と言えるだろう。

一般的な監督は自分のスタイルをチームに植え付けるために2~3人の新戦力を必要とする。エメリが就任から数ヵ月しか経っていないという事実を見ると、彼のこれまでの働きぶりは称賛に値するだろう。

エメリがアーセナルの伝統的なスタイルを維持向上させたことは明白だ。彼の22年間の監督としてのキャリアに中で取り入れてきた様々なテクニックが、アーセナルを再び大舞台で戦うことのできるチームへと変えていると言っていいだろう。


名前:菊池大将
趣味:サッカー観戦、映画鑑賞、読書
好きなチーム:ACミラン
幼少期に父親の影響でミランが好きになりました。アイドルはシェフチェンコ。パッション、データ、経済、カルチャー、サッカーの持つ様々な表情を見るのが好きです。よろしくお願い致します!

筆者記事一覧