Jリーグ 横浜F・マリノス

祝福されるべき横浜F・マリノスの発展途上な「ティキ・タカ」

マリノス

中澤佑二 写真提供:Getty Images

 3-0で鹿島アントラーズを破った先週末の試合は、マリノスにとってターニングポイントになるかもしれない。結果も内容も申し分ない、今シーズン最高の試合だった。早いペースのふたつの攻撃的なチームが激突したこの試合のクオリティは、Jリーグのレベルをはるかに超えるものだった。最近のパフォーマンスで鹿島を判断してはいけない。最終的なスコアが3-0だったことにかかわらず、彼らは恐怖心を抱かせる相手だ。今シーズン初めて、マリノスは“たったの”51.6%しかボールを保持できなかった。それまでの彼らの最低ボール保持率は、1-0で勝利を収めた第5節の清水エスパルス戦で記録した56.4%だった。

『Wyscout』のデータによると、マリノスはこの試合で枠内シュートを3本しか放っていない。そしてその3本すべてがゴールになった。一方の鹿島は18本シュートを放ち、そのうちの7本が枠内に飛んでいる。7本すべてが飯倉大樹に止められた。彼はキックで危険なシーンを生み出すことこそあったものの、シュートストップにおいては素晴らしいパフォーマンスを披露した。鹿島に2、3度ビッグチャンスを与えた、ビルドアップでのミスは問題として残っている。

 最も印象的だったディフェンダーは、この試合でJリーグデビューを飾った山田康太だ。右サイドバックを務め、鈴木優磨に仕事をさせず、果敢な攻撃参加でチャンスを作った。もうひとりの若手有望株である遠藤渓太も右サイドで輝きを放った。先制点を記録し、シーズン最高のパフォーマンスを見せた。天野純は中村俊輔の正当な後継者のように見えた。彼が決めたフリーキックは、身体の動きまで彼の師匠にそっくりだった。議論の余地なくこの試合のマン・オブ・ザ・マッチであり、第11節全体のベストプレーヤーだったと言っていい。

 伊藤翔は興味深い。今シーズン2度目の先発で、ウーゴ・ビエイラの後ろでセカンドフォワードの役割を務め、彼はマリノスの選手たちの中では極めて少ないボールタッチ数(13)だった。攻撃面での彼の貢献度はゼロに近かったが、守備になれば3人目の中盤の選手として相手をマークし、プレスをかけて信じられない程の守備の改善を助けた。

 もしもマリノスがこの「グアルディオラのような」スタイルを進化させ、守備のエラーを最小化できれば、シーズンはマリノスファンにとってだけでなく、一般のサッカーファンにとっても、よりエキサイティングなものになっていくだろう。美しいサッカーは祝福されるべきであり、感謝されるべきなのだ。

著者:チアゴ・ボンテンポ

1985年生まれのブラジル人ジャーナリスト。サンパウロ在住。幼少期よりスポーツとりわけサッカーを愛する。大学時代にジャーナリズムを専攻し2011年よりブラジル『Globo Esporte』で日本サッカーを担当している。ブラジルのボタフォゴ、アーセナル、そして日本代表の熱烈なサポーターである。将来の夢は日本語を流暢に扱うこと、富士山登頂、Jリーグスタジアムを巡ること。

Twitter: @GunnerTNB

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