10月13日に開催された明治安田J3リーグ第32節で、首位の大宮アルディージャはホームのNACK5スタジアム大宮に福島ユナイテッドを迎え、3-2で勝利。2位以上を確定させ、6試合を残して来季2025シーズンのJ2復帰を決めた。19日、ホームの第33節FC今治戦(現2位)引き分け以上で、J3初優勝が決まる。
前半32分、コーナーキックの折り返しをDF浦上仁騎が押し込み先制するが、直後、福島FW森晃太に同点弾を浴びた。前半アディショナルタイムにMF泉柊椰の勝ち越しゴールが決まり、折り返すと、後半12分にはMF石川俊輝のゴールで引き離す。終了間際、後半26分から途中出場した福島FW澤上竜二にゴールを許したものの逃げ切り、昇格を決めた。
圧倒的な強さで2024シーズンのJ3を戦い、6試合を残しての昇格決定もJ3最速で、第32節を終えての勝ち点は「76」。2015シーズンのツエーゲン金沢が記録したJ3記録の「78」を上回ることは確実だ。
そんな大宮の今夏からの運営体制の変化と、それに伴う期待と不安について深掘りしたい。
今夏“レッドブル入り”した大宮
大宮といえば8月、オーストリアの大手飲料メーカー「レッドブル」が、NTT東日本子会社の「エヌ・ティ・ティ・スポーツコミュニティ株式会社」から、大宮とその女子チームである「大宮アルディージャVENTUS」の全株式譲渡契約を結び、Jリーグ史上初である外資系企業への身売りが実現したことで話題となった。
ちなみに、NTT東日本はトップスポンサーとしてのバックアップは続け、来季以降もNTT東日本からの出向組である佐野秀彦社長と、元日本代表FWの原博実氏のフットボール本部長の続投も併せて発表されている。しかしながら、実質的には、レッドブルのサッカーテクニカルダイレクター(TD)で、元ドイツ代表のレジェンドでもあるFWマリオ・ゴメス氏主導で運営されていくことになるだろう。
佐野社長と原氏をクラブ首脳として名前を残したのは、“Jクラブ経営1年生”であるレッドブル側が、日本でのクラブ運営のノウハウを、両氏から引き継ぐ側面もあるだろうが、いきなり経営陣をレッドブル一色で固めることによる“乗っ取り感”を避けたい思惑も見え隠れする。
電電関東サッカー部を前身とし、1969年に創立された半世紀以上の歴史ある同クラブを、世界を席巻するマルチクラブオーナーシップの最先端を行くレッドブルが買収したニュースは驚きとともに伝えられた。大宮サポーターは長年、社長が交代する度に、NTT東日本からの“天下り人事”に辟易していたこともあってか、喜びと期待に包まれた。
世界で8クラブ目、レッドブル運営への期待
レッドブルは、2005年にオーストリアのザルツブルクを買収したことを皮切りに、ドイツ1部ブンデスリーガのRBライプツィヒ、米メジャーリーグサッカーのニューヨーク・レッドブルズ、オーストリア2部に在籍するザルツブルクのセカンドチーム、FCリーフェリング、ブラジル1部のレッドブル・ブラガンチーノとそのセカンドチームのレッドブル・ブラジル、2008年に創立されたが2014年に解散したガーナ1部のレッドブル・ガーナを所有。大宮は世界で8クラブ目のレッドブル所有クラブとなる。
2020年のJリーグ規約改正で、外資系企業が日本法人を設立せずに買収できることになって以降、この規定が適用された例は初めてだ。J3を圧倒的な強さで駆け抜けつつあるとあって、サポーターは当然ながら、“レッドブルマネー”とクラブ運営の手腕に期待しているだろう。中には2年連続昇格で、一気にJ1入りを夢見ているサポーターもいるのではないだろうか。
そんな期待を感じ取ったのか、10月12日の記者会見で、ゴメスTDは「2025年は新体制への移行期間」「3~4年でJ1昇格」「2030年を目途にタイトル争い、並びにACLエリート出場」を目標とし、同時に「大宮アルディージャが築いてきたものをリスペストする」と語り、大風呂敷を広げることはなかった。
ゴメスTDはシュツットガルト在籍時、日本代表MF遠藤航(リバプール)とFW浅野拓磨(マジョルカ)とプレーした経験がある。日本人のメンタリティーに感銘を受け、それがレッドブルのフィロソフィーにマッチしたと語ったが、同時にJリーグにはいわゆる“ビッグクラブ”が存在せず、群雄割拠であることも良く研究したことも窺い知れる。我々日本人よりも“Jリーグは甘くない”ことを知っているかのようだ。
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