Jリーグ 鹿島アントラーズ

鹿島アントラーズのクラブハウス移転問題、鹿嶋市との亀裂はなぜ生まれたか

鹿島アントラーズ 写真:アフロスポーツ

鹿島アントラーズのクラブハウス移転をめぐる議論が、ホームタウンである茨城県鹿嶋市と隣接する潮来市との間で表面化している。この問題は、単なる施設移転の是非を超え、クラブと地元自治体との長年の関係性や地域経済への影響、クラブ運営の将来像を問うものとなっている。

ここでは、持ち上がった移転問題の背景、両市の主張の違い、そしてこの件で浮き彫りになったクラブとホームタウンである鹿嶋市の溝の深さについて整理したい。


移転問題の発端と施設老朽化の実態

鹿島アントラーズは1993年に完成した鹿嶋市のクラブハウスを拠点として長年活動してきたが、施設の老朽化や育成環境の拡充に向けたスペース不足が課題となっていた。これに対し、潮来市が新施設整備を提案し、2026年4月22日、クラブと潮来市が移転に向けた検討開始を公表した。

一方、鹿嶋市はこれに強く反発した。田口伸一鹿嶋市長は同日、「クラブ創設以来、地域を挙げて支えてきた関係があり、強い憤りを覚える。撤回を求める」との見解を表明し、さらに「新候補地は浸水想定区域だ」と言い放った。この発言は「津波が来たら海に沈むぞ」という脅し文句にも聞こえる。

田口市長は鹿野中学校から千葉県立佐原高等学校、専修大学経営学部へと進み、1992年に山一証券に入社。入社6年目の1997年11月、同社の自主廃業を機に地元へ戻り、大正時代創業の家業・田口商事に入社後、インターネット関連会社(ソピアインターネット)を自ら設立した。

2014年の茨城県議初当選から3期を経て、2022年4月の鹿嶋市長選に無投票で初当選。2026年4月も無投票で再選し、現在2期目を務める。「一度も選挙戦をしたことがない市長」だが、それは地元の名士として市民から厚い信頼を寄せられている証でもある。「鹿島アントラーズの本拠地となる新サッカースタジアム周辺の整備」を2期目の公約に掲げる田口市長にとって、クラブハウスの”流出”は到底受け入れられないものだったのだろう。ただ、あの発言にはもっと”モノの言いよう”があったのではないかとも感じてしまう。

鹿島アントラーズのクラブハウスは鹿嶋市粟生東山に建設され、隣接する練習場と一体となった施設として、公開練習日にはファンサービスの拠点にもなってきた。しかし、完成から30年以上が経過し、維持・改善のための資金調達にクラウドファンディングなども活用されてきたものの、施設維持の限界が指摘されていた。

潮来市は東関東自動車道・潮来IC周辺を候補地とし、2027年2月を目標に検討を進める方針だ。調査費用として約2,542万7,000円を2026年6月議会補正予算案に計上した。原浩道潮来市長は「鹿島アントラーズを活用した地域連携拠点施設の整備」として位置付けている。

クラブ側は「移転を最終決定するものではない」と強調し、基本計画の策定と諸条件の精査を両者で進めると説明している。


メルカリスタジアム 写真:アフロスポーツ

鹿嶋市の強反発と崩れゆく信頼

田口市長は、クラブからの正式な説明が不足していると不満を漏らしている。2022年10月の会議で移転調査の話が出た際は「調査ならやむを得ない」としていたが、2026年2月の取締役会で検討開始の報告を受けた時点においても、市長への直接的な事前説明がなかったと主張している。

鹿嶋市はホームタウン5市(鹿嶋市、潮来市、神栖市、行方市、鉾田市)の中で筆頭の出資自治体だ。クラブ創設時から最大の出資額を拠出し、増資のたびに追加出資を重ねてきた。現在の筆頭株主であるメルカリの71.2%には遠く及ばないが、「カネを出している以上、経営に口出しする権限がある」といった考えが田口市長の根底にあるのだろう。

ホームスタジアムのメルカリスタジアム(茨城県立カシマサッカースタジアム)は鹿嶋市にあるが、その所有者はあくまでも茨城県だ。田口市長は「鹿嶋市民の思いを踏まえ、クラブに対し誠実かつ責任ある対応を強く求める」としているが、メルカリは2019年に旧株主の日本製鉄から株式の61.6%を取得(現在は71.2%)し、新オーナーとなる際に「クラブの哲学を変えない」「地域密着の維持」「チーム名・エンブレム・カラーの変更なし」「日本製鉄も株主として残る」といった諸条件をすべて受け入れ、それを順守した上で、2025シーズンには9年ぶりのリーグ優勝ももたらした。

もっとも、株式譲渡の際、日本製鉄とメルカリの間で「買い戻し条項」が結ばれているのではないかとサポーターや地元財界で噂されていた。わずか11%の株式しか持たない旧オーナーが依然として影響力を持ちたいという意向に加え、栄枯盛衰が激しいIT企業という性格や、メルカリ事業自体の持続可能性への疑義が拭えなかったことが、この噂を後押しした。それでもメルカリは、理不尽にも思える重い約束を守り抜き、チーム強化にも成功した。この実績をもってしても、クラブハウスの移転によって「契約時の約束を破った」ことになるのだろうか。

鹿嶋市は経済面への影響も懸念材料に挙げている。公開練習の日には多くのサポーターが訪れ、鹿嶋市内や鹿島神宮周辺の飲食店など地域経済に寄与していると主張している。鹿嶋市議会では「試合日以外もお客さんが減る可能性がある」との声が上がったという。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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