全員で勝ち抜いた大舞台
10月8日の天皇杯準決勝(川崎フロンターレ戦、2-4)以降、8日間で3試合を戦った福岡。長谷部茂利監督は川崎戦から中2日で迎えたルヴァン杯準決勝第1戦では10人、さらに中3日で開催された第2戦では5人の選手を入れ替えた。チームと選手のコンディションを重視したマネジメントでは、名古屋との第1戦で結果を出したウェリントン、安定した守備をみせたDF三國ケネディエブスらを継続して起用し、これが的中。
試合開始早々5分でコーナーキックを得た福岡は、MF紺野和也がゴール前に上げたボールを三國と名古屋のGKランゲラックが競り合い、最後はウェリントンがゴール奥へと蹴り込んで先制に成功。その後、21分には名古屋のFW永井謙佑もネットを揺らしたが、これがわずかにオフサイドとなり得点ならず。53分にもFWキャスパーユンカーがペナルティエリア内で倒れPKとなるが、VARの介入でノーファウルの判定となり名古屋からチャンスが遠ざかる。終盤、福岡は名古屋に攻め込まれる時間帯が増えたものの、身体を張った持ち前の守備とGK永石拓海のビッグセーブで相手の得点を許さなかった。
試合後、福岡の選手たちが自身のユニフォームを脱ぎ、ベンチ入りしていない選手のユニフォームを着用するシーンがあった。怪我で離脱しているFW佐藤凌我、FWルキアン、DF井上聖也らのほか、ベンチ入りできない選手は何人もいる。彼らのユニフォームを着用することで、この大舞台を全員で戦っていることを改めて示したのだ。
総力戦でクラブ初タイトルへ
福岡が名古屋を下したこの日、もう一方の準決勝第2戦では浦和が横浜FMに2-0で勝利。このカードの第1戦では横浜FMが1-0で浦和を下したが、2試合の合計によって勝敗がジャッジされるため2-1で浦和が決勝進出を決めた。
2022シーズンのチャンピオンズリーグ(ACL)でアジア王者となった浦和は、J1リーグはもちろん、天皇杯やルヴァン杯でも優勝経験があり、3大タイトル常連の強豪だ。2023シーズンのJ1では1試合平均約29,000人を集める人気クラブでもあり、1試合の平均集客が約9,000人の福岡とは大きな差がある。そもそもの集客差に加え本拠地からの距離を考えると、国立競技場で行われる決勝戦において、福岡サポーターが浦和サポーターに人数や声援の大きさで対抗するのは容易ではないだろう。
しかし、同じ九州勢として過去に環境面の厳しさを乗り越えたクラブがある。2008年のルヴァン杯(当時はナビスコ杯)決勝で、クラブ初のタイトルを目指した大分トリニータだ。東京までのアクセスは福岡以上に難しい大分だが、約10,000人ものサポーターがさまざまな手段で国立霞ヶ丘競技場陸上競技場(旧国立競技場)まで応援に駆け付けた。大歓声の後押しを得た大分は2-0で清水エスパルスに勝利し、3大タイトルをひとつも獲得したことのなかった九州勢の中で、初めてビッグタイトルを手にした。
現在はJ2所属の大分だが、ユニフォームの胸にあるエンブレムの上には星がひとつ輝いている。これがまさにビッグタイトルを獲得した証であり、名誉あるチームの歴史を示している。大分のルヴァン杯優勝から15年。福岡の決勝進出で、優勝カップが久し振りに関門海峡を越えるチャンスが到来している。それを実現するためにも、当時の大分と同じかそれ以上の歓声が必要不可欠だ。勝てば1996年のJリーグ参入以降初のタイトル獲得となり、クラブにとって1つの集大成となるだけに、サポーターも含めた総力戦で国立競技場に乗り込む福岡。憧れの星を手に入れることができるのか、11月4日の決勝戦に注目だ。
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