プレミアリーグ マンチェスター・シティ

逆転優勝へ!“別物”マンチェスター・シティを支える3つの特徴【プレミアリーグ】

ジョゼップ・グアルディオラ 写真:アフロスポーツ

ウインガー不在を逆手にとった「4-2-2-2」戦術

この猛追をピッチ上で支えている最大の要因は、指揮官による見事な戦術的適応にほかならない。ペップ監督が率いる今シーズンのシティは、FWジェレミー・ドクやFWサビーニョの負傷により、本職のウインガーがFWアントワーヌ・セメニョのみになる危機的状況に直面した。

通常であれば攻撃の幅を失い、チームバランスが崩れても不思議ではない局面だが、希代の戦術家は「手元にいる選手の質にシステムを適応させる」と語り、発想を逆転。FWアーリング・ハーランド、FWオマル・マーモウシュ、FWセメニョのうち2人が前線でコンビを組み、そのすぐ背後に2人の攻撃的MFを配置する「4-2-2-2」へと見事にシフトチェンジさせたのだ。これにより、ウイングという“幅を取って仕掛ける”ポジションが不在でも、強烈な攻撃力を維持できている。その理由は、次の3つの緻密な戦術メカニズムにある。

1:中盤の数的優位とディフェンダーの「ピン留め」

基本コンセプトは、中央の狭いエリアでテンポ良くパスを交換し、相手の守備ブロックを崩すことだ。例えば、MFベルナルド・シウバのような中盤の選手が1列前に進出し、ライン間にポジションを取る。すると相手MFは対応を迫られ、マークを引き出される。その瞬間、局所的な数的優位が中央に生まれる。この時、前線の2人(マーモウシュとセメニョなど)は、相手のウイングバックと外側のセンターバックの間に絶妙に位置取る。これにより相手ディフェンダーをその場に「ピン留め」させ、彼らが中盤の守備サポートに向かうのを物理的に阻止するのだ。結果として相手の守備陣形にギャップが生まれ、背後の攻撃的MF(ライアン・シェルキなど)がフリーでボールを受けられるようになる。

2:フォワードを「おとり」に使ったスペースの創出

もうひとつの大きな武器が、攻撃的MFとCF(センターフォワード)による縦のパスコンビネーションである。マーモウシュのようなFWがあえて中盤に下がってパスの受け手となる。するとマーカーである相手CB(センターバック)は前方へ引き出され、最終ラインにわずかな歪みが生まれる。強固な5バックであっても、その背後には一瞬のスペースが生じる。そこへ、もう1人のFW(セメニョ)や、2列目の攻撃的MF(タイアニ・ラインデルス)が一気に走り込み、決定機を作り出すのだ。さらに、FWが相手サイドバックを高い位置まで引っ張り出すことで、本来ウイングが使うはずのサイド奥のスペースを意図的に空け、そこに攻撃的MFを走り込ませることで、疑似的に“幅”を再生する。

3:ハーランドの「引力」と2列目からの遅れた飛び出し

ストライカーの圧倒的な存在感を“囮”として活用し、2列目の選手にゴールを決めさせる仕組みもこの戦術の大きな特徴だ。サイドから攻撃を仕掛ける際、FWハーランドがファーポストに向かって走り込むと、相手DFたちは彼へのクロスを極度に警戒し、ディフェンスライン全体がゴール方向へと深く押し下げられる。これにより、ペナルティエリアの手前(マイナスの位置)にぽっかりとスペースが空く。そこに攻撃的MFのシェルキが賢くポジションを取って待ち構える。あるいは、DFオライリーのように後方からあえてタイミングを遅らせてペナルティエリア内へ侵入し、守備の視野外からフィニッシュに持ち込む。事実、ニューカッスル戦の劇的な決勝点も、このオライリーのレイトランから生まれたのだ。


いざ、逆転での王座戴冠へ

確かに、指揮官が指摘するように、今のシティは後半戦のボール保持に課題を残しており、かつてのように毎試合を完璧にコントロールして“安全に相手を窒息させる”姿ではないかもしれない。それでもなお、起用可能な選手のプロフィールに合わせて瞬時にシステムを最適化し、攻撃の脅威を同水準で維持し続ける柔軟性こそが、新生シティの真価だ。支配の形は変わっても、勝利へ至る構造は失われていない。

苦しみながらもぎ取ったニューカッスル戦での泥臭い勝ち点3は、彼らがひとつのチームとして完全にまとまり、タイトルに向けて牙を剥いていることを証明している。すでに多くのサッカーファンは「シティがこのまま連勝街道を走り、タイトルをかっさらう」というお決まりの逆転シナリオを確信し始めている。大規模な血の入れ替えを断行した「新生シティ」が、新たな戦術を武器にプレミアリーグの頂点へ駆け上がる、そのカウントダウンはもう始まっている。この若きチームが新たな伝説を作る瞬間から、目が離せない。

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名前:秕タクオ

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