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サポーター文化に新風を吹き込んだJFLクリアソン新宿の挑戦

浦和レッズのサポーター 写真:Getty Images

世界一安全なスタジアムの実現

丸山社長が応援ルールの試みを発表したのは2023年夏のこと。同年8月2日、天皇杯ラウンド16の名古屋グランパス対浦和レッズ戦(CSアセット港サッカー場)後、0-3で惨敗した浦和のサポーター約100人が暴徒化。ピッチのみならず相手側サポーター席にまで“殴り込み”を掛け、警備員への暴行やスタジアム設備を破壊し、愛知県警が出動する事態に発展するという出来事があった。

浦和は翌年の天皇杯出場権を剥奪されたが、当の暴徒らには無制限入場禁止という大甘裁定を下しただけではなく、浦和フロントは当初暴行の事実を否定。証拠となる映像が世に出ると、今度は「名古屋サポーターから挑発されたのが原因」と相手に責任をなすりつけ、結果的に恥の上塗りとなった。

この事件が、クリアソン新宿が決めた応援ルールの直接的な要因とは断言できない。しかし、大の大人が感情むき出しで相手チームを汚い言葉で罵ることが、“自称サポーター”の暴徒が事あるごとに持ち出す「フットボールカルチャー」なのだとすれば、クリアソン新宿はこの風潮を全否定し、180度違う角度から新たなサポーター文化の醸成に挑戦していることになる。

当初は“官製応援”と揶揄されることもあったこの決断。実際に現場で確認してみると、子どもも、その母親と思われる女性も、実に楽しそうに応援する姿が見られる。Jリーグが旗印としている「世界一安全なスタジアム」が、そこには確実に存在していた。

こうした応援スタイル、どこか既視感があるとふと考えてみると、高校野球や大学野球の学生席に似ている。ブラスバンドを交えた応援には、取っ付きやすさもある。加えて「一見さん大歓迎」のムードがあるのが、何よりのメリットとなっている。そして、Jリーグの“常識”が日本スポーツ界の“非常識”となっていたことに気付かされるのだ。


JFLの舞台では苦戦が続いているクリアソン新宿だが、いつの日かJリーグ入りのチャンスが巡ってくるだろう。その時、サポーターの数が2倍3倍となっていく過程で、この異色ともいえる応援スタイルを維持していくことが、チーム強化とともに至上命題となるのではないか。

そのことがJリーグの理念を体現することにつながり、ひいては“特例中の特例”としてJリーグライセンスを認められたことへの恩返しとなるからだ。そしてJリーグ入りを果たした暁には、そのホームスタジアムが国立競技場であることが、クリアソン新宿にとっての理想的な未来像なのだと思われる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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