CL/EL

欧州CL“3連覇”のドイツ人監督。クロップ、フリック、トゥヘル。イングランド人は?

ハンス=ディーター・フリック 写真提供:Gettyimages

21世紀以降に5人のCL優勝監督を輩出したドイツ、ゼロが続くイングランド

欧州CL優勝監督の出身国で集計すると、ドイツとスペインが優勝5回ずつで最多。時点がイタリアの4回、フランスの3回と続くが、これはフランス人のジダン監督とイタリア人のアンチェロッティ監督の3回が大きい。

ちなみに21世紀以降5回のCL優勝を経験しているイングランド勢は、スコットランド人のアレックス・ファーガソン監督を“外国籍”とすれば、1人もCL優勝監督を輩出していない、という皮肉な結果を招いている。

ドイツ人監督による優勝5回は全てが異なる人物で、ドイツは5人のCL優勝監督を輩出している。近年のドイツ人監督による“3連覇”は、3つのクラブで3人の監督が記録しており、うち2ケースはイングランドのクラブで達成した功績である。

近年のイングランドは若手選手を多く輩出し、2017年にはU17とU20のW杯で優勝。スペインとドイツも若手選手の育成から始まり、彼等を育成した指導者たちが成功を収める流れがあっただけに、今後数年でCLを制するイングランド人監督誕生の可能性がある。

「ビッグ6」と言われるプレミアリーグのトップクラブ(リバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、チェルシー、トッテナム)は、スーパーリーグ構想よりも自国人監督の育成に投資することが長い成功をもたらす可能性が高いと言えるのではないだろうか?


ユルゲン・クロップ(左)トーマス・トゥヘル(中)ボ・スヴェンソン(右)写真提供:Gettyimages

クロップ、トゥヘルに続くか?“マインツの系譜”スヴェンソン

イングランドのクラブを率いてCL優勝したドイツ人監督の2ケースがクロップ監督とトゥヘル監督なのだが、彼等が初めてトップチーム監督のキャリアをスタートさせたのは、共にドイツのマインツだった。ステップアップ先が同じくドイツのボルシア・ドルトムントであるのも共通している。ちなみに元日本代表MF香川真司はドルトムントで彼等の指導を直々に受けている。同代表FW岡崎慎司もマインツ時代にトゥヘル監督の下でプレーしていた。

2人のCL優勝監督を輩出したのがマインツであるのが驚きなのだが、次なるクロップやトゥヘルとなる可能性があるのが、マインツの現指揮官であるボ・スヴェンソン監督である。

今年1月の就任直後こそ敗戦が続いていたが、2月以降は8勝5分2敗。2部降格圏内の17位で迎えた就任時から、12位へとジャンプアップ。バイエルンをも撃破する大躍進へとマインツを導いたのだ。

2001年から2008年までマインツの指揮を執り、2004/05シーズンにクラブ創設100年目で初めてブンデスリーガ1部へ昇格させたのがクロップ監督。2009年から2014年までマインツを指揮し、2010/11シーズンにブンデス1部で5位へと大躍進させたのがトゥヘル監督。その間、2007年から2014年までDFとしてプレーしていたのがスヴェンソンである。

現在は監督に就任して半年も経っておらず、リソースも限られるマインツではゲーゲンプレッシングによる守備からの速攻と堅守を武器にして戦い、勝点を積み上げてきている。シンプルなチーム作りではあるが、今後はクロップ監督やトゥヘル監督のようにビッグクラブに招聘されて戦術的にもアップデートされていく監督となるだろう。

スヴェンソン監督はデンマーク人である。しかし“マインツ産監督”として飛躍し、クロップ監督やトゥヘル監督と欧州最高峰の舞台であるCLで対戦する日は意外と近いのかもしれない。

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