ワールドカップ ブラジル代表

セルビアとの戦術合戦に勝利。ブラジルの攻撃を支える陰のキーマンは【W杯試合分析】

ブラジル代表は[5-3-2]の守備隊形も織り交ぜた

洗練されたブラジル代表のビルドアップ

ブラジル代表はセルビア代表のビルドアップを抑え込んだだけでなく、攻撃面においても相手の守備を凌駕した。

この試合でカナリア軍団のビルドアップを支えたキーマンは、右サイドバックのダニーロ。セルビア代表はミトロビッチとタディッチでチアゴ・シウバとマルキーニョスを捕捉し、S・ミリンコビッチ・サビッチがカゼミーロに密着することでブラジル代表のビルドアップを封じようとしたが、ダニーロが適宜2センターバック間に降り、パスコースを確保。ハイプレスからのボール奪取を狙うセルビア代表のアタッカー陣を迷わせた。

ブラジル代表 DFダニーロ 写真:Getty Images

象徴的だったのが、ブラジル代表がセンターサークル付近でパスを回した前半6分20秒以降の場面。ここでもダニーロが2センターバック間に降りており、ボール保持者であるシウバに複数のパスの選択肢をもたらしている。このダニーロの巧みなポジショニングにより、シウバは余裕を持って敵陣でフリーになっていたルーカス・パケタにパスを供給した。その後のパスは繋がらなかったものの、ブラジル代表のビルドアップの多彩さが窺えた場面だった。

今大会のブラジル代表はビルドアップのみならず、敵陣ペナルティエリア手前でのパスワークも洗練されており、前半8分50秒以降の場面ではビニシウスがハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)からサイドに流れ、相手DFニコラ・ミレンコビッチを誘い出し。これにより開いたミレンコビッチとミロシュ・ベリコビッチの間にネイマールが侵入し、パスを受けたことでチャンスが生まれている。今後もビニシウスが囮になる攻撃が相手の脅威となりそうだ。

ネイマールの負傷交代が唯一の懸念材料だが、8年前のブラジル大会とは異なり、カナリア軍団の攻撃は今や同選手頼みではない。名将チッチのもとで、攻守両面のバリエーションが豊富になったセレソンが、今大会の主役となるかもしれない。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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