プレミアリーグ エバートン

エバートン新スタジアム建設の裏側を知る!歴史に手を加えることはNG?

建設中のエバートンスタジアム 写真:Getty Images

イングランド北西部アイリッシュ海に面しているリバプール地域は、プレミアリーグのリバプールとエバートンのホーム地域だ。現在ここでは、2024/25シーズンにオープン予定のエバートンの新スタジアムの建設が進められている。

この記事では、エバートンの新スタジアム建設の裏側について深掘りをしよう。ところで皆さんは、伝統的な歴史的建造物は修繕をしつつも、展示品の様な扱いで保存するべきと考えるだろうか?それとも、近代的な方法で良さを活かし、何かに再利用をした方が良いと考えるだろうか?


グディソン・パーク 写真:Getty Images

現グディソン・パークの波瀾万丈な歴史

現在(2022年9月)のエバートンのホームスタジアムといえば、リバプールのホームスタジアム「アンフィールド」に程近い場所にある「グディソン・パーク」だ。収容人数は39,414人と決して大規模ではないが、1892年に完成して以来多くの決勝戦や重要な試合が行われ、名プレイヤー達の熱い闘いの痕跡や想いが染み込んでいる。

プレミアリーグの中でも非常に歴史深いスタジアムの1つで、その長い歴史には1940年の第二次世界大戦を乗り越えた経験も含まれる。当時スタジアムのスタンドの一部が爆撃され、その痕跡は現在も生々しく残されたまま史実を物語っている。

そんなグディソン・パークには、いくつかの懸念事項が存在した。例えば、老朽化による安全性や耐久性の欠如や、それに対する高額な修復費用などだ。エバートンのクラブ関係者は、それらを考慮し新たなスタジアム建設を決断。2024/25シーズンまでの新スタジアム完成を目指し、昨年(2021年8月)様々な苦難を乗り越え、着工に至った。


ブラムリー・ムーア・ドックの再活用へ

リバプールは英国の中でも大きな都市の1つで、アイリッシュ海に面している港町であり、またマージー川という大きな河川の河口地域だ。いくつもの「ドック(船を建造・修理などをする場所)」があり、その中でも「プリンセス・ドック」「セントラル・ドック」「クラランス・ドック」「ノーザン・ドック」「キング・エドワード・トライアングル」など主要ドック地域の存在が非常に大きい。ドックが醸し出す風情のある雰囲気は、リバプール地域らしい景色をつくり出している。

エバートンの新スタジアムの建設は、その中の1つノーザン・ドック地帯にて現在ハイスピードで進められている。中心市街地にも近く、もしスタジアムが完成すれば約140万人以上の観光客がこの都市を訪れることになり、そうなれば、小売、観光、ホテルそれぞれの産業で、莫大な利益がリバプール地域にもたらされるのではないかと期待されている。

実はこのノーザン・ドック地帯には、1848年に建てたれた「ブラムリー・ムーア・ドック」という稼働していないドックがあり、長い間立ち入り禁止のエリアとして放置されていた。そこに目をつけたエバートン関係者が、この歴史あるドックを遺産として残しつつ、より多くの市民や観光客などにドックの歴史や物語を知ってもらう目的で、クラブの新スタジアムとして再活用をすることを決めたのだ。

その権利を得るために、なんとエバートンは5500万ポンド(約88億円)以上を投資。そこには、徹底的に「ブラムリー・ムーア・ドック」を護り抜くという覚悟の意志表示が含まれていると感じる。加えて驚いたのが、もしも仮に数十年先の未来にクラブが移転することがあった場合を考慮し、また元の状態のドックに戻すことが出来るような仕掛けにしているそうだ。

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名前:Molly Chiba
趣味:自然散策、英国のあれやこれやをひたすら考えること
好きなチーム:トッテナム・ホットスパーFC

東北地方の田園に囲まれ育ちました。英国のフットボール文化や歴史、そして羊飼いやウールなどのファッション産業などに取り憑き、没入している日本人女性です。仕事のモットーは、伝統文化を次世代に繋ぐこと。

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