澤らの厳しい指摘は誰に向けたものなのか?
話を戻すが、澤氏を筆頭とする女子サッカー界の先輩たちの厳しい指摘は誰に向かって飛んでいるのか。本当に高倉監督に向かっているのだろうか。特に澤氏が「声」について何度も言及していることが気になっている。「声は出ていたのか」「周りも声をかけていれば」失点は防げたとの指摘がある。
イギリス戦の決勝点の場面は、GK山下杏也加がゴールマウスを飛び出しながらMF中島依美と交錯してボールに触れない一瞬の隙を相手のエースに突かれた。あの場面でボールに触れないGKのミスは致命的だが、あれだけゴールマウスを空けたのに誰もゴールをカバーしていなかったのもまた致命的だった。その全てが選手間の連携が出来ていない証明だからこそ、先輩たちは厳しい声を上げているはずだ。
2011年のドイツW杯優勝、2012年のロンドン五輪銀メダル、2015年のカナダW杯準優勝と3大会連続の決勝進出という快挙を遂げて来たレジェンドたちは、自分よりもむしろ周囲の選手達のために走り、身体を投げ出し、ピッチ外でも自分達で毎晩のようにミーティングを繰り返してチームの一体感を高めてきた。後輩たちには伝わっていないのだろうか?
連携がない。声が出ていない。あるいは声が届いていない。指示が一方通行。自分のプレーさえ良ければいい。味方のカバーが出来ない。試合後は感情的になって頭の部分で整理が出来ていない。
これに該当する選手が1人だけいる。戦犯にする必要もないので名前は挙げない。しかし選手個人としてのプレー水準は誰よりも高いしミスも少ないが、彼女がいることによって周囲が機能していない。誰よりも個の能力が高いのに、誰のカバーもしていない。「人を使う」役割を与えられているはずだが、どう考えても「人に使われる」タイプに見える。レジェンドたちの多くが代表を外れて以降、ずっと気になっていることである。
必勝のチリ戦予想先発メンバー
グループステージ最終節の対戦相手であるチリは、FIFAランキングでは37位の格下だが、日本が引き分けたカナダ相手に2-1の接戦を演じている。しかも、相手のゴールマウスには世界最高のGKクリスティアナ・エンドラーが待ち受けている。勝てると高を括ってはいけない相手だ。
チリは自陣で引いてくることは間違いない。よって負傷の具合が思ったより深刻そうな日本のエース岩渕は、強行出場できるのならば守備は免除の先発出場で行けるところまで踏ん張ってもらいたい。そして、MF杉田にはより中央でゲームメイクと攻撃の最終局面に関与してもらいたい。この2人を軸にチリ戦の先発メンバーを組むことが望まれる。
杉田は左利きだが右寄りのプレーを好み、下部年代での戦い時からMF長谷川との連携が良い。また、突破力にかけては現チームでナンバーワンの遠藤純を先発で起用。ボランチはイギリス戦で追加登録ながら積極的な守備や3本のミドルシュートを放つなど存在感が際立ったMF林穂之香に期待したい。引いた相手を引き出すためには林の中長距離砲は捨てがたく、そのボール奪取力は全盛期の元日本代表MF稲本潤一のような攻撃力と形容できるものだ。
そしてDF陣には「パスの受け手に良い条件で配給できる選手」を起用したい。技術があっても相手がプレスに来たら直ぐにボールを離すようなら何も意味がない。相手のマークやプレスを1m、いや50cmでも引き付けてから味方にパスができる能力が必要だ。右SBは今大会唯一安定している清水梨紗、左SBはオールラウンダーで闘える宮川麻都、センターバックにはワンステップでサイドチェンジのロングフィードが蹴れて、カウンター対応ができる速さや高さを備える宝田沙織をDFリーダーの南萌華と組ませたい。GKはなぜか「危険だ」と批判を浴びることが多いが、相手FWのプレスをしっかりと吸収してくれるのは山下しかいない。
とにかく得点が欲しい場面に岩渕が出場できないのであれば、一昨年までは点取り屋としてプレーしていた170cmの宝田を前線に上げる策を優先したい。追い込まれたなでしこジャパンには「決断の時」が迫っている。
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